表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説の人  作者: 櫻塚森
6/20

生徒会

アルフォンスが呼び出されたのは二限目の終わりチャイムが鳴った時だった。

呼び出しに訪れたのはカインの兄ノイン。

「来い、両殿下がお呼びだ。」

伯爵家の嫡男が公爵家の嫡男に掛ける言葉では到底なかったが、カチンときているのは交流を深めているカインくらいで、当の本人はいつも通り従っていた。ならばと、共に行こうとするカインをノインは手で制した。

「お前は呼ばれていない。」

それでもと思ったカインをアルフォンスが止める。

「いってきます。」


ノインは、後に続く公爵の子息をチラリと見た。

本当に似ていないなと思った。

ノインが公爵夫妻を初めて見たのはまだ10歳にも満たない頃だ。

突然発生した食人植物(魔草花)に国中がパニックになった。国の研究機関である研究所から風に飛ばされた種が発芽してしまったのだ。王立騎士団も総出で植物の刈り取りが行われたが、被害は広がる一方で種はノインの家の庭にも飛んできて発芽した。屋敷はパニックだった。余りに屋敷近くで発芽したために火を使えずにょきにょきと伸びてきた茎葉は窓を破り中まで入ってきた。

好奇心が刺激され伸びた茎葉を見ようと近付いたノインはあっさりと捕まえられた。

あの時の恐怖は今だに忘れられない。そんな彼を燃やすことなく、植物だけを燃やす炎でノインを助けたのがレジェンドシーン公爵だった。

まさにヒーローだった。

「これも親種じゃなかったわ、リューキ。」

荷物のように抱えられたノインの前に現れたのは金髪美女だった。

「あら、その子は?」

自分のことだと思った瞬間、ノインは恥ずかしくなった。食人植物を舐めて、好奇心に負けて見にきた考えなし。

そんな風に思われる。両親に恥をかかせる。

ギュっと目を瞑ったノインの頭が乱暴に撫でられる。

「屋敷を守ろうとした勇者かな?」

その言葉にハッと目を見開き男を見た。

キラキラした宝石のような青い瞳が目に入った。見とれていると泣きながら飛んできた母親に抱き締められた。

珍しく父親も軍服を着て屋敷におり、助けてくれた男女に頭を下げていた。父親が何を話していたのかは覚えていない。だが、その二人が有名な公爵夫妻なのだと知った。

命の恩人の息子が一学年下にいると知った時は嬉しかった。交流を深め、また公爵に会いたい、お礼を言いたいと思ったが母親の話す公爵家嫡男の評価は低かった。実際に目にした嫡男は公爵夫妻にまるで似ていなかった。そして公爵夫妻が拾ってきた子供を養子にしたのだとの噂を耳にし、彼の相手はカインがすることになった。


「誕生会ですか、」

のんびりとした言葉にイラッとしたのは生徒会メンバー全員だった。

「ライルお兄様の誕生会よ、忘れてたとか言わないわよね、私、貴方から、ドレスも宝石も送られてないのだけど!」

イライラした口調で言う王女。

「忘れてました、招待状が届いたと両親からは聞いておりませんから。」

伝説級の二人は皇后陛下が絡む夜会以外は欠席して良いことになっている。

つまり、ライル王子の誕生会は公爵家にとってスルーしてよいものと認識されていたのだ。ライル王子は双子殿下とは違う正妃の子で王太子ではないが兄である太子を支えるため先日まで隣国に特使として滞在し誕生日を機会に帰国してきていた。

公爵夫妻を慕っている者の一人であり、兄共々アルフォンスを気に入っており、実は個人的に招待を受けているが、双子との関係が悪いことも知っているため無理に来ることはないと言われていた。

「公爵夫妻が、外交にて不在の今、お前は公爵家の代表だ!王家との繋がりをなんと考えているんだ、」

呆れたとばかりに言うミカエル王子。

「全く、こんな男が公爵夫妻の子息とは嘆かわしい。」

「実際のところ、噂通りなのでしょう。」

次々に言葉を繋ぐ生徒会メンバー。

「噂?」

「お前が公爵家の裏山で拾われた孤児だと言うものだ。」

ミカエル王子の吐き捨てた言葉は誰もが聞きたくて聞けないことだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ