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伝説の人  作者: 櫻塚森
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アルフォンス

アルフォンス・レジェンドシーン公爵令息。

国内外で伝説級と言われた両親を持つサラブレッド。しかし、学園では地味でぱっとしない、存在感の薄い生徒である。

14歳になる年の秋に入学した時には誰もが伝説の公爵夫妻の子供と言うことで大いなる期待をしたものだが、現れたのが濃いグレーの髪と大きな眼鏡を掛けた地味っ子だったため、自己紹介がされるまで誰にも気付かれることはなかった。

彼を現す言葉として、よく知られているのは、五大公爵家筆頭嫡男でありながら、生徒会にも入れなかった落ちこぼれ、と言うもの。しかも、彼自身は全く気にしていない様子なのも嘲笑の原因の一つであった。

成績自体は悪くない。こと魔法に関しての座学の成績はトップクラスだ。しかし、実践が伴わないため頭でっかちとも言われ、影でからかわれている生徒でもある。

本来なら王族や上位貴族の嫡子との交流が必要な立場だが、如何せん、向こうの方が相手にしない。挨拶以上の交流はなく、親とのコネを期待する大人達の思惑で名家の次男、三男などはアルフォンスに積極的だ。しかし、基本アルフォンスは一人静かに本を読んでいる。

本来なら交流を持ちたいと思われる各貴族令嬢もアルフォンスには近付かない。

幼い頃からの婚約者がいるからだ。しかも相手はこの国の王女である。家が一流でも出世をしなさそうなアルフォンスに粉を掛けてくる者はいなかった。

「また、本を読んでいるの?」

久しぶりに掛けられた声に顔を上げた。

金髪に青い、意志の強そうな瞳。アルフォンスの婚約者、ミカエラ第二王女だ。学園では彼女の双子の兄である第二王子と共に生徒会役員で華やかな一団の一角を担っている。アルフォンスには礼儀的に声をかけ交流を心掛けている王女だが、その表情に喜楽の色はない。

「相変わらず辛気くさい奴だな、」

声を掛けてきたのは双子の片割れミカエル。此方はアルフォンスに対して侮蔑の表情を隠しもしない。

「おはようございます、王女殿下、王子殿下。」

起立して礼儀に則った挨拶をする。結婚するまで名前を呼ばないで欲しいと彼等から言われた。以降、と言うか初対面の時から名前は呼んでいない。そして、頭を上げた時には彼等は既に教室にいないのが常だった。

「お姫様、相変わらずだな。」

声を掛けてきたのは同じクラスの伯爵令息だ。

気ままな次男坊である。初対面の時、親の言い付けでアルフォンスに声をかけたと素直に告白。アルフォンスとは違い実践には定評があるが、座学がダメな男である。

「まぁ、いつものことだよね、」

前髪と不必要に大きな眼鏡で隠れた表情を伺い知れることはない。

アルフォンスは、毎日飽きもせず声をかけ続けたカインは、存外気に入っていた。基本怠惰な性格だと自覚しているカインは、煩く言ってくる家族や周囲と違い、側で寝ていても何も言わないアルフォンスの側が楽だった。そして、彼はカインが本当にヤバいと思えるタイミングで声をかけてくれるのだ。

「明日辺り、座学で当てられると思うよ。教科書の25ページだけでも読んでみたら?」

こんな風に。

初回は適当に返事をして誤魔化した。二回目も返事だけしてスルーした。けれど、全てアルフォンスの言う通り当てられて、分からなくて、クラスの連中に笑われた。

三回目は少し言うことを聞いて言われたページをサラッと読んでみた。当てられて答えられた答えは中途半端なもので余計に周囲に飽きられた。

四回目になって初めてアルフォンスに教えを乞うた。

「学習能力はあるんだね、」

笑顔で言われてカチンときたが素直に学んだ。頭でっかちと言われるだけあってアルフォンスの教え方はカインにもすんなり受け入れることが出来た。そうして、何回も教えてもらう内にカインは、アルフォンスがかなり優秀な頭脳を持っているのではないかと疑い始めた。

「なぁ、アル?」

六回目の小テストの成績がアルフォンスより良かったカインは素直に聞いてみた。

「お前さぁ、わざと点取ってないだろう?」

その頃には勝手にアルと呼び、公爵子息相手に何の躊躇もなく軽々しい物言いのカイン。そんなカインの問いにアルフォンスはまた笑った。



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