表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説の人  作者: 櫻塚森
2/20

序章ニ

『ミレニアが死んだ。我等は傷心の旅に出る。この世界に次に戻るのは何時だなどと聞かないでほしい。其ほどに彼女のいない世界は我等にとって味気ないものなのだ。子供達は、それなりにこの世界に馴染んでいる。だから、置いていく。しかし、彼等の未来を閉じるのはやめてくれ。では、さらばだ。次にこの世界に戻ってくる時に君はいないだろう。』

記された手紙に大きなため息を吐いた。 

公爵家に臣下を向かわせたが、いたのは彼等に雇われた使用人と子供達だった。

「父母は、出掛けました。国王陛下に宜しく伝えてくれと申してました。」

出迎えた今年14歳になる嫡男は、本当にあの2人の子供か?と言う容色をしており、平凡に見えた。前情報として掴んだことによると学園での評判も平凡なもので魔力も普通だと言う。ある日突然屋敷に現れた子供で、公爵夫妻が拾ってきたのではと、まことしやかに囁かれている。

「兄上、」

「兄様………。」

拙い声。

使者はエントランスの中央にある階段を見上げた。

使者は、驚いた。

「天使が2人いる…。」

思わず呟いた言葉は嫡男に届いていた。

くすりと笑われ、使者は頬を染めた。

「どうしたんだい?」

軽やかに階段を駆け上がる。

「ジュリアスが泣き止まないの、」

大きな瞳から今にも落ちそうな涙。

同じ顔をした少年は泣くまいと我慢顔だ。

嫡男は、しゃがむと双子の頭に手を置いた。

「ミーシャも困ってるのかな?」

大きく頷く双子達。

嫡男の少年は階段下で呆然とする使者に声をかけた。

「一番下のが泣いているようなので、詳しい話は家令から聞いて下さい。」

あっさり言って奥へと消えていく。

残された使者は執事の案内で応接室へ通された。

そこに白髭を生やした恰幅の良い男が入ってきた。

「ホ、ホーク団長!」

使者の後ろに控えていた騎士が思わず口にした。

「ホーク?……貴殿は、アーノルド・ホーク騎士団長か?!」

使者の言葉が部屋に響く。

数年前に現役を引退した王立騎士団の隊長だった男は、元平民の成り上がりで引退後の行方が分からなくなっていた。

「引退を機に公爵家に雇われたのです、と言うか、私は、総隊長のファンでしたから、家族で押し掛けたのです。家令などやったこともなかったのですが、主となった総隊長一家が恙無く暮らせるよう努めておりましたら、今の地位を頂きました。」

ホーク家令は、主夫妻が別の世界に旅立ったことは事実だと言った。

「お2人が、この世界に居られた理由は、ミレニア皇后陛下でした。御自身の御子様が4人居られても、この世界に留まる理由にはなりませなんだ。お2人が御子様方を愛していない訳ではありませんが、ミレニア皇后陛下以上の存在にはなれなかったのです。御嫡男のアルフォンス様は御両親の旅立ちを見送られましたが、幼い下の御子様方は、まだまだ御理解できておりません。」

使者は先程の兄弟を思い浮かべた。美しい天使のような双子と地味な容姿の少年を。

「双子の御子様は、実に公爵夫妻に似て居られた、魔力も相当なものなのでは?」

「ヴィンセント様とヴィヴィアン様ですね、家庭教師からは、勉強も魔法能力についても、とても優秀だと聞いております。まさに、主の御子様として申し分ない!」

家令ではなく、途中で言葉を発したのは執事だった。

「こら、ヨハン!」

アーノルドの叱責に、我に返ったようだが、あまり堪えてはないらしい。

「申し分ありません、つい。しかしながら、ヴィンセント様とヴィヴィアン様、そして、その下のジュリアス様も公爵夫妻によく似た美し、」

「止さぬか!ヨハン!下がれ!」

強い口調の家令に驚き、ヨハンは再び口を閉ざし後ろに下がった。

「公爵夫妻は、御嫡男のアルフォンス様に全て任せると仰られていたが、アルフォンス様は、まだ14歳。保護する後見人が必要です。」

使者は頷き、後見人のことは国の方でも考えておくと言葉を掛けて公爵家を後にすることにした。

馬車に乗り込む際、ヨハンと言う執事が内密にと手紙を使者に渡してきたが、その内容に使者は頭を悩ませるのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ