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ANIMA  作者: パンナコッタ
穢れなき楽園へと誘う者
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天使

「ヘラクレス……!」


 エースの眼前には巨大な《地球の魂》があった。

 エースは翼を広げ、地球の魂目掛けて羽ばたこうとしたが、ヘラクレスに追撃される。


(お願い……私を助けて)


 エースは魂の終着点にいた。

 目の前にいる少女は掠れた声で話しかけてくる。その少女の声は、以前ミカエルの声に似ていた何者かの声だった。

 しかし、見た目はミカエルとは違く、イブに似たものだった。


「君は……ミカエルなのか?」


 エースは砂浜の奥に立つ少女に問う。


 その問いに少女は答えることなく、こちらに近づいてくる。少女はエースの手を握り、ただ助けを懇願するだけだった。


 その悲痛な声は、メアリーの声に聞こえたり、ミカエルの声に聞こえたり……

 今まで出会ったきた人達の声に聞こえた。


「君は一体……」


「……私はイブの半身。ただ今はあなたの記憶を媒体として魂を形成している」


 少女はそう呟くように答えた。


「君が助けを求める理由は……イブにあるのか?」


 少女はその問いに小さく頷いた。

 少女が言うに、イブの記憶が常に頭の中流れてきており、イブは苦痛を感じていると言う。


「生きることへの苦痛……?」


 イブは死を望んでいた。

 ずっと誰か自分を殺してくれる人を待っているらしい。

 しかしそれは本心であれど、実際は支配の  呪いの効果によって支配欲求が高まり、支配するために行動している。


「イブは死を望むほどに呪いで苦しんでいるのか……」


「分かった……」


 エースは少女を抱きしめる。

 少女の眼には涙が浮かぶ。


「俺がお前を救う」

 

 エースは少女にそう告げ、力を貸してほしいと言った。

 魂の終着点は閉ざされ、いしきがげんじつにもどった。

 ヘラクレスが思い切り斧を振りかぶっており、斬撃が迫っている。


「……」


 エースは大きく目を見開く。

 体は光を放ち、翼は萎れて新たに《光の翼》が生える。


「あの少女こそが道の本体だ……だから接触した俺はあの時のように光の翼を生やせる!」


 引き抜かれた2本の剣は、巨大な黒いオーラを纏う。それはまるで世界を飲み込む闇のようだった。


「エース……! お前を止める!」


 ヘラクレスが斧を思い切り振る。

 斧による攻撃を光の翼で防ぐが、すぐに追撃が来る。咄嗟に《ユグドラシルの聖剣》で防ぐと、剣の刀身を吹き飛ばされた。


 しかし、エースが神に近づいている証である《力の共有》によって、ユグドラシルの聖剣に《ルクスの柱》が共有され、折られた刀身が再生する。


「これで終わりだ! ヘラクレス!!」


《アマテラスの剣》が、ヘラクレスの胸を貫いた。剣は確かに魂を貫き、背中を貫通した。


 直後、ヘラクレスの背中から黒いオーラが漏れ出す。黒いオーラはイブの形を形成しだし、ヘラクレスの体を乗っ取る。


 エースは咄嗟にアマテラスの剣を抜き、距離を取る。ヘラクレスは身体中を黒いオーラに纏われ、《黒い翼》を生やす。

 ヘラクレスの周りに蒼い水晶体が現れ、エースに蒼い雷撃を放つ。


 エースの光の翼はそれを全て受け止め、体に雷撃のエネルギーを吸収する。


「ヘラクレス……」


 エースは目をゆっくりと瞑る。


「終わりだ」


 エースの頭の上に、天使の輪が11個連なって浮かぶ、全ての力の覚醒。

 ヘラクレスもそれに合わせて斧を大きく振りかぶる。斧は神器ではないのに黒いオーラを纏い、魂の終着点と繋がる。


 2本の剣は黒いオーラを強める。


(皆……守れなかった……! エース……せめてお前だけでも……!)


 ヘラクレスにも正義が存在した。

 仲間の死、故郷を失い、全てを失った。

 残されたのは闘う意思だけ。


「エース……お前をこれ以上悪魔にさせない!」


 ヘラクレスは黒い翼を羽ばたき、エースに急接近する。エースもそれに合わせて羽ばたき、2本の剣を構える。


 ヘラクレスの斧はエースの下半身を吹き飛ばし、エースの剣はヘラクレスとイブの魂、両方を貫いた。

 エースは思い切り剣を抜き取り、2人の魂を吸収した。

 その瞬間、エースは道の力を発動させる。


「ここは……?」


 ヘラクレスは十字架にかけられた状態だった。以前にかけられた呪いがまだ残っているようだ。

 エースはヘラクレスに手を向け、イブから手に入れた《概念破壊の力》を使い、呪いを解いた。


「エース……」


 ヘラクレスは砂浜に落ち、遠くにいるエースを見つめる。エースはどこか悲しそうな顔をしている。

 エースはイブの方に歩み寄り、イブの呪いを解いた。呪いが解けたイブは涙を浮かべ、泣き崩れた。


「イブ……これで自由だ」


 エースはイブから離れる。


「ヘラクレス……」


「全てを話したい」


 エースはそう言い、ヘラクレスに近づく。


「俺の真の目的は、メアリーを救う事だ。その過程にワールドエンドオーダーが起こった」


「俺は道の力を解放し、イブの呪いをも超越した存在……」


「神になった」


「道の力の真の能力は、この世界が円環している《時の軸》の上を行き来することができるという事だ。俺は力を解放後、過去に自分の化身を送った」


「それが《道の声》だ。それにある程度の記憶を与え、望む未来にするために助言をさせた」


「俺はその力によって過去を訪れ、過去に多くの干渉をした」



「それと、お前が地球の魂からコピーし、体に書き出した魂はアダムのものだ。それによってお前はアダムの魂を媒介とする存在であるイブにとっての器……即ち、神の器となった」


「イブをこの世界に呼び出す必要があった……しかし方法はわからず、唯一できるのが未来からの干渉……分かるだろ?なぜお前が無限にも等しい数存在する魂の中からアダムの魂をコピーできたのか、全ては俺の干渉による結果だ」


 その言葉にヘラクレスは驚愕する。

 道の力の真の力……

 時をも越え、過去に干渉する。


「この力を過去のイブに作らせたのも俺だ」


「また、イブの呪いの効力は、本来力の覚醒すらも抑えていた。しかし俺が過去に干渉し、力を覚醒させることによって窮地を脱したことが何度もあった、それは俺だけじゃない。全ての力の継承者の力の覚醒は全て俺が干渉したものだ」


 ヘラクレスはエースに問う。


「何故そこまでする?」


 エースは少し沈黙し、答える。


「それは俺がメアリーを救いたいからだ。あの日、あの時、俺の背中を押し、メアリーを救うように命じたのも未来の俺だ」


 エースはあの時、物凄い違和感と共にメアリーを救うという意思に駆り立てられた。

 あれすらも未来のエースによる干渉だったという。


「それも全て……メアリーが幸せに暮らせる楽園を築くためだった。だが、あの世界……《地球》には楽園を築けなかった……」


「これから生命の樹によって誕生する新たな世界に俺は楽園を創る」


 エースは振り向き歩き出す。

 砂が形を変え、階段になっていく。

 エースはその階段を登り、途中で立ち止まり、右手を前にかざす。


 すると、空間が歪み、外の世界と繋がる。

 そこにあったのは《生命の樹》であった。


「俺は確かに神となった……しかし俺が《ヒトの器》である以上神の力は発動できない……」


「その為に必要だったのが、神同士の融合だった。互いに不完全な神同士が融合し、互いが互いを神と認知し合うことにより、相互作用により俺たちは神となる」


「それはこの空間上での話であり、この空間を支配する必要があった。だから俺はお前から奪った力を使い、この空間……即ち概念と融合した」


「この空間はイブが創造した時に既に外界と融合されており、即ちこの世界の全てと融合したことになる……」


「これによってこの世界は俺の身体という、魂という物質の一部となった」


「そして俺はこの世の全てに影響を与えられる存在となったこれこそがーー」


「神の力だ」


 エースは空を仰いだ。

 全てを成し遂げたのだ。

 これこそが、真の神の姿。


「ヘラクレス……俺は悪魔になるしかなかった……」


「悪魔になる方法をずっと模索していた……」


「相手の正義を理解した上で、そいつを殺した……その時、これが《悪魔のなり方》なんだって分かったんだ……」


「じゃあな……ヘラクレス」


 エースは目に涙を浮かべていた。

 それはヘラクレスとの別れを惜しむ涙であろうか。それがヘラクレスには分からなかった。


「生命の樹……お前も俺をずっと待っていたんだろ……お前は何を望む……?」


 エースは生命の樹に触れながらそう言う。


「……そうか」


 エースは何かを聞き、そっと頷いた。

 エースと生命の樹が融合していく。


 エースと生命の樹の魂の世界にて、エースは生命の樹と対話した。

 生命の樹は、《アダムの姿》を借り、エースの前に現れた。


「別に話すことはないけどよ、お前名前とかあるのか?」


 エースは生命の樹にそう聞いた。


「アニマ……それが僕の名前」


 生命の樹はそう答えた。

 誰が名付けたのかと聞くエースにアニマは、「神」と答えた。


 神とは創造神のことだろうか。

 アニマをこの世に産み落とした別の神がいるのだろうか。

しかしエースはある答えに行き着く。


「それってのは……時の軸の上にある別次元の俺か?」


 その問いにアニマはそっと頷いた。

 やはりこの世界は全てがエースと融合しており、エースの意思によって動いているようだ。


「そうか……そろそろメアリーの元に行こう」


 エースはそう言い、空間を捻じ曲げ、2つのゲートが生まれた。

 一つはメアリーの前、もう一つは地球の魂に繋がっていた。

 エースは地球の魂に触れ、全ての魂を吸収した。


「タナトス……ニーナと会えたか……?」


 エースはメアリーの方へと向かう。

 メアリーの頬にそっと触れ、呪いを解いた。

 メアリーの背中にあった十字架は消え、メアリーはエースの胸に落ちる。


「メアリー……ごめん、ごめん……俺何もかも壊しちゃった……」


 メアリーは意識が朦朧とする中、エースの涙を拭う。


「……エース」


 エースはメアリーに抱きつき、最期に役目があると言い、メアリーを話す。

 メアリーに付加の呪いをかけ、メアリーを宇宙空間でも耐えられるように光の箱の中に入れる。


「しばらく……そこで我慢してくれ、呪いは時期に解ける……」


 メアリーはその箱の中で眠りについた。

 安らかに……


 エースは一度魂の終着点に入り、そこの中央に向かった。

 その時、遠くに幻影が見えた。

 ガブリエルとミカエルだ。

 エースは2人の元に駆け寄った。


「ここにいたのか……お前ら」


 2人はエースのことを包み込むように抱きしめる。


「私たちはここにいましたよ……ここは貴方の心の世界ですもの」


「俺たちはずっとお前の味方だって言っただろ?」


 2人の言葉にエースは涙が止まらなかった。

 エースは2人に別れを告げ、中央へ向かう。

 中央に立ち、外界との扉を開き、そこに入る。魂の終着点と外界を繋ぎっぱなしにし、 エースは地球の魂に向かった。


 地球の魂とエースは接触し、飲み込まれる。


(さようなら……みんな)


 地球の魂は激しく発光し、新たな星を創造しだした。

もう少しで最終話です。

もしかしたら次回が最終話になるかもです。


二部や、新作についても考えてるので機会があればぜひお読みください。


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