忘れもの
目を覚ますと、エースは森の中にいた。
見覚えのない、巨大な木が生い茂るその森を抜け、エースは宮殿を目指す。
記憶を見ていた間に、宮殿の様子は少し変わっており、若干の違和感を覚えながらも門を通ろうとすると護衛の男達に止められる。
「身分証を」
男はそう言った。
以前までは身分証の提示など求められなかったが、ルールが変わったのか。
「俺はエース・レッカだ。そこを通せ」
護衛の男達は、天界政府のバッジではない、黒い薔薇のバッジをつけている。
男達がエースの名を聞き、何かを話し込んでいる 隙に男達の顔面に強烈な蹴りを入れる。
そのままエースは大会議室へと向かう。
勢いよく扉を開けると、巨大な机を数人が取り囲んでいた。見慣れた顔と、見慣れない顔がそこにあった。
「なっ……、エース……」
ヘラクレスが動揺した様子で振り向く。
元々エースの席であった場所には、見知らぬ者が座っている。
「はじめまして、エース・レッカ」
その男は立ち上がり、頭を下げてくる。
エースは、違和感を覚えながらも会釈を返す。
「誰だか知らないけど、話がある。メアリーを救うためにワールドエン--」
そう言いかけた瞬間、護衛の男達に後ろから押さえつけられ、手錠をかけられる。
突然のことに暴れるエースに、男は見下した目で話す。
「やはり……君はそうするか」
「君が眠ってから13年が経過している」
男はエースの顔面を思い切り蹴り、髪を引っ張りあげる。そして手錠が太陽の血で出来ていると言い、護衛達に連れていくように言う。
「クソ……! なんだよお前ら、ヘラクレス説明しろ!」
そう叫び、ヘラクレスの方を見た時、違和感に気づいた。「アクアはどこに行った」その問いにヘラクレスは下を向くだけだった。
「アクア・グラキエースですか。彼は僕らとの戦争の末、和平交渉の条件として自らの命を差し出しました」
その言葉にエースは絶句する。
戦争、命を差し出した……。
「なっ……」
「そうして今、彼の魂は僕の中にあります」
その言葉を聞いた瞬間、エースは激昂し、男に飛びかかる。手錠は壊れ、エースの右手が稲妻を纏う。放たれた雷撃は、男の出した氷の柱で防がれる。
煙がたちこめ、次に男達が目を開けるとそこにエースはいなかった。
「……手錠を用意したのはヘラクレス、あなたですよね」
「これって、どういうことですか?」
男は首だけで後ろを振り向き、ヘラクレスにそう問う。




