最初の悪魔の記憶
ウリエルたちはエースを指さす。
「記憶を見に来たんだろ?」
「あ、あぁ……」
「僕たちの記憶を、君が悪魔と罵った僕たちの記憶を」
エースはその言葉に反論する。
それはおかしい、だってお前らは悪魔じゃないか、と。
「なんで僕らが悪魔なの? 僕らは自分の正義を貫いた、それだけだ」
「君だってそうだろう? 自分の正義を貫いて、僕たちを殺した」
『僕らからすれば君が悪魔だよ』
5人は声を揃えてそう言う。
エースは後ずさりする。
俺が悪魔だって……そんなこと……!
「さぁ、記憶を見るんだろ、早速僕の記憶から見せるよ」
ウリエルは手を差し出してくる。
「僕の手を触れば、僕の記憶と繋がれる」
エースは躊躇いながらも、ウリエルの手をがっしりと握る。
その瞬間、視界が真っ白に染まった。
ゆっくりと目を開けると、そこは小さな部屋だった。
目の前には人形で遊ぶ金髪の子供がいる。
「みんな仲良く〜楽しく〜」
子供は幼稚な歌を歌いながら、1人でおままごとをしているようだ。
「ウリエル! 勉強の時間だ! 下に来なさい!」
いきなり扉の向こうから怒号が響く。
この子供がウリエルか……
ウリエルは慌てた様子で本を1冊持ち、扉を開け階段を下っていく。
エースもその後をつけていく。
下のリビングルームには、ひとつの長机が置かれていた。
そこに置かれた椅子に男と女が座っていた。
その2人の間の席に、ウリエルは座る。
「よし、今日も勉強を始めるぞ」
男が……父親だろう、ウリエルの父がそう言う。
「まずは昨日の復習だ、今の天界の最高神様は?」
「ぜっゼウス様です……」
ウリエルはボソボソとした声でそう言う。
「正解だ、もっとはっきりと喋らんか」
ウリエルはごめんなさいと、何度も謝る。
それから1時間ほど、勉強が続いた。
父親が教科書をたたみ、ようやく終わりかと思ったら、机の引き出しからもう一冊の本を取り出す。
「続けていくぞ、お前は学校の勉強よりこっちを優先だからな」
その分厚い本はとても子供が読むものには見えなかった。
エースは本のタイトルを覗き込む。
そこには、
【アナスタシア様が創り出した新世界】
そう書かれていた。
アナスタシアがって……
「まずは昨日の復習からだ、アナスタシア様は?なぜ、我々をお造りになられた?」
「そっそれは……我々に幸福を与えるためです……」
「次だ、天界禁忌法典とはなぜ故に存在する?」
「この世の秩序を正すため……」
「もうひとつだ、あるだろウリエル」
父親は圧迫感のある顔でウリエルにそう言う。母親は黙って見ているだけだった。
「る、ルイスの血族をこの世から浄化するためです……」
「そうだ、ルイスの血族は悪しきものだ。この世にあってはならない……そうだろう?」
父の言葉にウリエルは必死で頷く。
「次は面接問題だ、質問を始める。ハキハキと答えろよ」
「なぜ、あなたは天界政府に来たのですか?」
「はっはい、僕は天界の秩序と民の幸せを守るためにここに来ました」
「そうだ、しかしお前には本当の理由があるだろう? 答えてみろ」
「えっ……」
ウリエルが固まる。
ウリエルは困惑して母親の方を見るが、母親はウリエルを睨んだ後に、
「言いなさい、ウリエル」
そう言うだけだった。
「早く言わんか! このクソガキ!」
父親は怒り、ウリエルを突き飛ばす。
父親はウリエルに馬乗りになり、何度も顔を殴打する。
「ごめんなさい……ごめんなさい……!」
しばらくして、父親が殴る手を止める。
「……天界の秩序を乱す悪しき民……ルイスの民を1人残らず殺すことが僕が展開政府に入りたい理由です……」
ウリエルは大泣きしながらそう言う。
「そうだ、そのためにお前は天界政府で優秀な成績を残し、九魂神を受け継がなければならない、分かっているな?」
「はい……」
そう言うと、父親はウリエルの体を持ち上げ、「部屋に戻っていろ」と言う。
ウリエルは顔を抑えながら部屋に戻っていく。
エースはウリエルの後を追う。
「こりゃ……」
「ひでぇな……」
エースの目からはウリエルの様に涙がこぼれていた。
何故だろう、ウリエルの感情と呼応するかのように涙が溢れてくる。
ウリエルの記憶が、俺の1部になってきている証拠なのだろうか……
下では、ウリエルの両親が騒いでいた。
「クソ! なんでうちにはルイスの血が流れているんだ!」
「先代が代々受け継いできたアナスタシア様の純血を……あの男が汚しよって!」
そう叫び散らかしていた。
何故そこまで血にこだわるんだろう。
血で何かが変わるのだろうか……
ウリエルはベッドに潜り込み、1人で泣いている。
俺もその横の椅子に座りこむ。
「記憶を見るのは……こんなにも……」
ウリエルの感情に左右されるように涙が溢れてくる。
しばらくして、エースも眠りについた。




