悪魔の嘆き、英雄の叫び
ヘラクレスたちはその場に倒れ込んでいた。
無数に襲いかかってきた白い人間たちを何とか倒したが、もはや力が残っていない。
「エース……どこ行ったんだ……」
ヘラクレスたちは戦闘中に起きていた上空での出来事を誰も見ていなかった。
ヘラクレスが心配して辺りを見回す中、何者かの影が見える。
「さてと、あいつを追いかける前にまずはお前らからだ」
タナトスはそう言い、手から槍を作りだす。
疲れ果てて、倒れ込むアクアの元へと近づく。
「くそ……!」
アクアは血塗れだが立ち上がり、剣を構える。タナトスはヘラクレスの方を見て、
「お前も直ぐに殺してやる」と言った。
その時、遠くで落雷のような音が響いた。
遥か彼方に光の柱が現れた。
「エース……!」
強烈な光の矢が物凄い速度で飛んでくる。
タナトスは避ける間もなく、右脚を吹き飛ばされる。
「くっそぉぉぉぉぉ!」
タナトスは天に向かって叫び声をあげる。
すると、再び白い人間が無数に現れた。
「あいつを殺せぇぇぇ!」
タナトスが叫ぶと、白い人間たちは一斉にエースの方へと飛び出す。
次の瞬間、
無数の白い人間によってできた巨大な壁が、一瞬で砕け散った。
エースが放った巨大な光の槍が白い人間たちをまとめて薙ぎ払ったのだ。
「なっ……」
タナトスは絶句する。
(一撃で……全ての“魂”を……!)
エースが再び弓を構えるポーズをとると、光の弓が現れる。
エースがそっと息を吐き、狙いを定める。
一撃
光の矢はタナトスの体を貫いた。
タナトスはその場に倒れ込む。
エースが羽を広げ、タナトスたちのいる場所へと向かう。
「今度こそ……終わりだな」
エースはユグドラシルの聖剣をタナトスの背中に当てる。
(このまま魂を貫いてやる……)
そう思った時、タナトスが待ったをかける。
タナトスは右手で何かを作りだす。
「これを……」
タナトスが差し出してきたのは不気味な木の実だった。
エースは無視してタナトスの背中に剣を刺そうとする。
その時、横から“道の声”が現れる。
「エース、その実を食べるんだ」
道の声はそう言った。
「食べるだと」と聞くと道の声は、それが未来に繋がると説明する。
「これを食べて……俺の意思を継いで欲しい……」
タナトスは涙声でそういう。
「ニーナに……会いたいんだ……」
俺はその実を受け取ることを躊躇った。
しかし、道の声が俺にその実を食べろと急かす。
「この実を食べると、お前の体の中の血液が変化し、ルイスの血とアナスタシアの血の両方が流れることになる」
男はそう言った。
そんなことが……エースは驚愕する。
「これを食べることで、彼らの記憶の扉を開くことでができる、そしてお前の望む未来へと繋がる」
道の声はそう言う。
彼らの記憶……俺の中にある、アナスタシアの純血の奴らの記憶。
「……それをよこせ」
エースはタナトスから謎の実を受け取る。
俺がその実を手に持つと、魂のように体に吸収されていった。
「これで、食べたことになる……」
タナトスは掠れた声で言う。
「じゃあな、タナトス……」
俺はタナトスの魂を貫き、吸収した。
俺は頭がぼんやりとする。
「お前は、今まで悪だと言ってきた者たちの意思を受け入れなければならない」
道の声は俺の肩をがっしりと掴む。
「それは誰のためでもない……! お前のためだ!」
俺は小さく「あぁ」と返事し、羽を広げ空に飛び出す。
しばらく上昇したところには赤と黒の入り交じった十字架にかけられたメアリーがいた。
「ごめん……俺が……君を必ず救い出してみせる」
俺は……君を救う未来のためなら、あいつらの記憶だって受け入れてみせる……!
俺は十字架に架けられたメアリーに抱きつき、天に叫ぶ。
「メアリー! 俺は、記憶を受け入れる! 君を……! 救うために!」
俺は強く目を瞑った。
体からは力が抜け、意識が遠のいていく。
視界を白い光に包まれる。
これから……あいつらの記憶を……
あいつの、道の声の言う通りに、俺は記憶を受け入れる。
メアリーを救い出すために……
こっからですよ……




