そういうものですよ、残酷ですよねこの世界は。
「ルイス! どこに行くのですか!」
ルイスは私の腕を引っ張って走り続けている。
「とにかくここから離れるんだ! あそこにいたら死んじまう!」
ルイスは川の近くで立ち止まる。
ルイスは川の上方を指差し、「あっちに進めば森を抜けて国に帰れる……」と私に言う。
「あなたは……! あなたはどうするのですか!」
私は嫌な予感がしてルイスにそう聞く。
私の予感は的中して、ルイスは「俺は……戦う、敵陣に特攻する」そう言った。
「何故ですか……! 一緒に帰りましょう……」
私は涙を流してそう言った。
もう、誰にも死んでほしくない……
私はルイスの腕を引っ張って川の上方に走ろうとしたが、ルイスが私の手を引き離した。
「帰るなら、1人で帰れ……」
ルイスは下を向いてそう言う、そうしてルイスは敵陣の方に黙って走り出す。
「ルイス! 待ってください……! ルイス!」
私は必死の思いでルイスを追いかけた。
待って……お願い、行かないで……
その時だった。
先を走るルイスの頭上に大きな岩が……
「ルイス!」
私がそう叫んだ時、手から稲妻が放たれた。
稲妻は岩を砕き、粉々にした。
ルイスは驚き、その場に倒れ込む。
「今の……お前が……」
私は訳が分からなかった。
今のは一体……
「はは……お前すげぇな……」
ルイスは呆気に取られて笑いだす。
私も涙を流して笑いだす。
私たちはその後、木の下に身を隠して互いの話をした。
「改めて聞くが……お前は何で軍に来たんだ?」
ルイスは隣に座る私にそう聞いた。
私は正直に話した。
妹の世話役の男に脅されていたこと。
民と父に嘘を吐いたこと。
「……そうだったのか、どんな理由で脅されたんだ?」
私はルイスの問いに、
「西の大陸の……捕虜の子供の支援に税金を使ったの……」
私の答えに、ルイスは唖然とした。
目を見開いて、何かを悟った。
「お前だったのか……」
「たまに、俺たちの暮らしていた収容区に食料や衣類が届いたんだ……差出人は不明だった」
ルイスは泣き出した。
ごめん、ごめんと連呼して。
私は慌てて、ポケットに入っていたハンカチをルイスの目元に当てる。
「俺は勘違いして……お前が、お前が王室の人間だからって……」
そう言い、涙を流すルイスの肩に手を当てて、「いいのよ」と言う。
その後、ルイスはしばらく泣き続けた。
私も涙が止まらなかった。
「私も聞いていい? どうしてルイスは軍に入ったの?」
私の質問にルイスは「あぁ……」と言い、
「俺は……軍に入って昇進すれば王に近づけるかもしれないと思っていた……」
その言葉の意味が私には分かった。
家族を殺した憎き王に天罰を下そうとしたのだろう。
「まぁ、結果はこうなっちまったがな……」
ルイスはデコに手を当ててそう言う。
それからどれだけの時間そこにいただろう。
辺りでは銃撃音や爆音が響いている。
その時ルイスがゆっくりと立ち上がる。
「ここにも火が回ってきたな……ここから離れよう」
ルイスは私に手を差し出してそう言った。
私はルイスの手を握り返して「えぇ」と返す。
「国に帰るか……?」
ルイスは私にそう聞く。
私は少し躊躇って、「あなたはどうしたいの?」そう聞いた。
ルイスは「俺は、お前の親父に近づきたい。これは俺の意思だ」そう答えた。
「そうですか……なら行きましょう。逃げ帰っては昇進は出来ないでしょう」
私はそう言った。
ルイスは私の言葉に戸惑った。
「お前……帰らなくていいのか? 女王になるんだろ……」
私はその問いに「あなたと同じですよ、逃げ帰ったのでは真の女王にはなれません」と答えた。
たしかに今帰れば女王の座には着けるのかもしれない。
でももう、何かから逃げるのではなく、戦うんだ。
「行きましょう。ルイス」
ルイスは私の笑顔を見て、決意を固めた。
私たちは敵陣の方へ走りだした。
爆音が響き渡る中、少し先に何者かを発見する。
「あれは……敵兵だ!」
ルイスは銃を構える。
一撃、敵兵の頭を撃ち抜いた。
倒れる兵士を見て、他の兵士たちが銃を構える。
私も銃を構え、1人の頭を撃ち抜く。
ルイスが弾を詰める為に木の後ろに隠れようとした時、敵兵の放った弾丸がルイスの足を貫く。
「ルイス!」
ルイスはその場に倒れ込む。
敵兵がこちらに銃口を向ける。
(まずい……)
そう思った時、頭の中に誰かの声が響いた。
その声を聞いた私は、光の柱に打たれた。
体が宙に浮き、力がみなぎってくる。
私は咄嗟に銃を構えるポーズを取った。
すると、光の銃が私の手の中に現れた。
引き金を引くと、光の弾丸が放たれる。
一撃でその場にいた兵士全員を殺した。
私が一息吸うと、柱が消えて地面に着地した。
「お前……やっぱすげぇな……」
アナスタシアはルイスの脚に包帯を巻く。
歩けるかルイスに聞くとルイスは親指を立て、「いける、大丈夫だ」と言った。
私たちは敵陣の方へと歩き続ける。
その時、再び巨大な岩が空から放たれる。
無数にこちら目掛けて飛んでくる岩、
それは私たちの頭上にも迫っていた。
「おい! 岩が来てる走るぞ、イザベル!」
ルイスがそう叫んだ。
「う、うん!」
(初めて名前で呼んでくれた……)
爆音が響き渡る。
私たちは間一髪のところで大岩を避けた。
そう思っていたが、私は脚を大岩に潰されいた。
私は激痛に顔を歪める。
「イザベル……! 大丈夫か! クソ! 今この岩を退ける……」
ルイスは私の脚の上に乗る大岩を退かそうとする。
しかし、ピクリとも動かない。
「あ……岩が来てる……」
私はルイスの後ろの空を指差してそう言う。
ルイスは後ろを見て、顔を真っ青にし、焦って大岩をどかそうとする。
「クソ! 退けよ! 早く……」
やめて……ここにいたらあなたも死んじゃう。
「走って! ルイス、貴方だけでも……」
私は涙を流してそう言った。
「嫌だ! 恩人を…守るんだ……! 意思を貫くんだ!」
ルイスは叫び声を上げて岩を押す。
少しずつ岩が動いている。
上空からも大岩が迫ってきている。
「うおぉぉぉぉ!」
ルイスは岩を退けることに成功した。
ルイスは私を抱えて走り出そうとする。
しかし、銃弾で貫かれた脚に激痛が走り、倒れ込んでしまう。
「クソ! ごめん……ごめんイザベル……」
ルイスは泣いて謝る。
私は地を這いつくばってルイスの隣へと行く。
泣き出すルイスの頬をそっと触る。
「いいのよ……これで、私は貴方に出会えて良かった」
私の言葉を聞いてルイスはさらに泣き出す。
「でも、俺もお前も……何も果たせなかった!」
そう叫ぶ。
その叫び声を掻き消すように辺りで岩が地に着弾している。
「私は……貴方に会えただけで幸せだったよ」
私はそう言い、ルイスの頬に垂れる涙を拭う。
「俺もだ……ごめん、イザベル」
私はその言葉に涙を浮かべる。
「アナスタシア……アナスタシアでいいよ」
その言葉を聞いて、恥ずかしそうにルイスはアナスタシアと私を呼ぶ。
大岩がもうそこまで迫っている。
終わりだ。
2人でここで……
でも、これも悪くないのかもしれない……
王にはなれなくとも、大切な人と出会えた。
(これでいいんだ)
その時、ルイスが僅かに立ち上がり、私の体を押した。
「いけ! アナスタシア!」
ルイスは最期にそう叫び、岩に体を砕かれた。
「そんな……ルイス、だめだよ」
私はその場で泣き崩れた。
「一人で行かないでよ……」
ルイスの体は吹き飛ばされ,近くの木に激突した。
嫌だよ、私も貴方と一緒に居たい……
貴方と一緒に【雲の上の世界】に行きたいよ……
その時、どこからか放たれた銃弾が私の胸を貫いた。
「あっ……」
私はその場に倒れ込み、絶命した。
私の魂はどこに行くのだろうか。
雲の上の世界の住人となり、再びルイスに会えるだろうか。
そう思っている時、私は砂山の世界に居た。
「ここは……?」
暗いその世界は浜辺のような空間だった。
狭い砂の陸地の周りを水が囲っていた。
近くから足音がする。
「誰……」
闇の中から現れたのは一人の男だった。
「貴方は誰……」
私はそう問いかけた。
男はただぽつりと、「エース」と名乗った。
「ここは、無限領域……いや――」
「魂の終着点と言った方が正しいか」
男はそう言った。
魂の終着点……聞いたことがある。
この世の始祖、イブ様が創り出した物。
でもなぜこの男が……
「俺は、未来からお前に語りかけている」
男の言葉に私は「なぜ?」と聞く。
すると,男は、
「ワールドエンドオーダーを引き起こす為だ」
と言った。
ワールドエンドオーダー……?
「お前は、まだ現実世界に魂として取り残されている。もうすぐ、お前の元に二人の人間がやってくる。その二人にお前の力、ルクスの柱を渡すんだ」
男はそう言った。
ルクスの柱……?
一体何を……
「全ては、未来の為だ」
最後にそう言い残し、男は私の前から消えていった。
お読みいただきありがとうございます。
これにて、イザベル王国編は終了となります。
アナスタシアにルイス、この世の始祖とされている2人の名がなぜ2人につけられたのでしょうか……
そして死亡したアナスタシアの前に現れたエースは……
アナスタシアが言ったこの世の始祖イブ様とは……
そしてワールドエンドオーダーとは……
魂の終着点とは……
謎が謎を呼ぶ展開ってやつですね笑笑




