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ANIMA  作者: パンナコッタ
王女の賭けと終わりの始まり
37/71

そういうものですよ、残酷ですよねこの世界は。

 「ルイス! どこに行くのですか!」


 ルイスは私の腕を引っ張って走り続けている。

 

 「とにかくここから離れるんだ! あそこにいたら死んじまう!」


 ルイスは川の近くで立ち止まる。

 ルイスは川の上方を指差し、「あっちに進めば森を抜けて国に帰れる……」と私に言う。


 「あなたは……! あなたはどうするのですか!」


 私は嫌な予感がしてルイスにそう聞く。

 私の予感は的中して、ルイスは「俺は……戦う、敵陣に特攻する」そう言った。


 「何故ですか……! 一緒に帰りましょう……」


 私は涙を流してそう言った。

 もう、誰にも死んでほしくない……

 私はルイスの腕を引っ張って川の上方に走ろうとしたが、ルイスが私の手を引き離した。


 「帰るなら、1人で帰れ……」


 ルイスは下を向いてそう言う、そうしてルイスは敵陣の方に黙って走り出す。


 「ルイス! 待ってください……! ルイス!」


 私は必死の思いでルイスを追いかけた。

 待って……お願い、行かないで……


 その時だった。

 先を走るルイスの頭上に大きな岩が……


 「ルイス!」


 私がそう叫んだ時、手から稲妻が放たれた。

 稲妻は岩を砕き、粉々にした。

 ルイスは驚き、その場に倒れ込む。


 「今の……お前が……」


 私は訳が分からなかった。

 今のは一体……


 「はは……お前すげぇな……」


 ルイスは呆気に取られて笑いだす。

 私も涙を流して笑いだす。


 私たちはその後、木の下に身を隠して互いの話をした。


 「改めて聞くが……お前は何で軍に来たんだ?」


 ルイスは隣に座る私にそう聞いた。

 私は正直に話した。

 妹の世話役の男に脅されていたこと。

 民と父に嘘を吐いたこと。


 「……そうだったのか、どんな理由で脅されたんだ?」


 私はルイスの問いに、


 「西の大陸の……捕虜の子供の支援に税金を使ったの……」


 私の答えに、ルイスは唖然とした。

 目を見開いて、何かを悟った。


 「お前だったのか……」


 「たまに、俺たちの暮らしていた収容区に食料や衣類が届いたんだ……差出人は不明だった」


 ルイスは泣き出した。

 ごめん、ごめんと連呼して。

 私は慌てて、ポケットに入っていたハンカチをルイスの目元に当てる。


 「俺は勘違いして……お前が、お前が王室の人間だからって……」


 そう言い、涙を流すルイスの肩に手を当てて、「いいのよ」と言う。

 その後、ルイスはしばらく泣き続けた。

 私も涙が止まらなかった。


 「私も聞いていい? どうしてルイスは軍に入ったの?」


 私の質問にルイスは「あぁ……」と言い、


 「俺は……軍に入って昇進すれば王に近づけるかもしれないと思っていた……」


 その言葉の意味が私には分かった。

 家族を殺した憎き王に天罰を下そうとしたのだろう。


 「まぁ、結果はこうなっちまったがな……」


 ルイスはデコに手を当ててそう言う。

 

 それからどれだけの時間そこにいただろう。

 辺りでは銃撃音や爆音が響いている。

 その時ルイスがゆっくりと立ち上がる。


 「ここにも火が回ってきたな……ここから離れよう」


 ルイスは私に手を差し出してそう言った。

 私はルイスの手を握り返して「えぇ」と返す。


 「国に帰るか……?」


 ルイスは私にそう聞く。

 私は少し躊躇って、「あなたはどうしたいの?」そう聞いた。

 ルイスは「俺は、お前の親父に近づきたい。これは俺の意思だ」そう答えた。


 「そうですか……なら行きましょう。逃げ帰っては昇進は出来ないでしょう」


 私はそう言った。

 ルイスは私の言葉に戸惑った。

 

 「お前……帰らなくていいのか? 女王になるんだろ……」


 私はその問いに「あなたと同じですよ、逃げ帰ったのでは真の女王にはなれません」と答えた。

 たしかに今帰れば女王の座には着けるのかもしれない。

 でももう、何かから逃げるのではなく、戦うんだ。


 「行きましょう。ルイス」


 ルイスは私の笑顔を見て、決意を固めた。

 私たちは敵陣の方へ走りだした。

 爆音が響き渡る中、少し先に何者かを発見する。


 「あれは……敵兵だ!」


 ルイスは銃を構える。

 一撃、敵兵の頭を撃ち抜いた。

 倒れる兵士を見て、他の兵士たちが銃を構える。

 私も銃を構え、1人の頭を撃ち抜く。

 ルイスが弾を詰める為に木の後ろに隠れようとした時、敵兵の放った弾丸がルイスの足を貫く。


 「ルイス!」


 ルイスはその場に倒れ込む。

 敵兵がこちらに銃口を向ける。


 (まずい……)


 そう思った時、頭の中に誰かの声が響いた。

 その声を聞いた私は、光の柱に打たれた。

 体が宙に浮き、力がみなぎってくる。

 

 私は咄嗟に銃を構えるポーズを取った。

 すると、光の銃が私の手の中に現れた。

 引き金を引くと、光の弾丸が放たれる。

 一撃でその場にいた兵士全員を殺した。

 私が一息吸うと、柱が消えて地面に着地した。


 「お前……やっぱすげぇな……」


 アナスタシアはルイスの脚に包帯を巻く。

 歩けるかルイスに聞くとルイスは親指を立て、「いける、大丈夫だ」と言った。


 私たちは敵陣の方へと歩き続ける。

 その時、再び巨大な岩が空から放たれる。

 無数にこちら目掛けて飛んでくる岩、

それは私たちの頭上にも迫っていた。


 「おい! 岩が来てる走るぞ、イザベル!」

  

 ルイスがそう叫んだ。

 

 「う、うん!」


 (初めて名前で呼んでくれた……)


 爆音が響き渡る。

 私たちは間一髪のところで大岩を避けた。

 そう思っていたが、私は脚を大岩に潰されいた。

 私は激痛に顔を歪める。

 

 「イザベル……! 大丈夫か! クソ! 今この岩を退ける……」


 ルイスは私の脚の上に乗る大岩を退かそうとする。

 しかし、ピクリとも動かない。


 「あ……岩が来てる……」


 私はルイスの後ろの空を指差してそう言う。

 ルイスは後ろを見て、顔を真っ青にし、焦って大岩をどかそうとする。

 

 「クソ! 退けよ! 早く……」


 やめて……ここにいたらあなたも死んじゃう。

 

 「走って! ルイス、貴方だけでも……」


 私は涙を流してそう言った。


 「嫌だ! 恩人を…守るんだ……! 意思を貫くんだ!」


 ルイスは叫び声を上げて岩を押す。

 少しずつ岩が動いている。

 上空からも大岩が迫ってきている。


 「うおぉぉぉぉ!」

 

 ルイスは岩を退けることに成功した。

 ルイスは私を抱えて走り出そうとする。

 しかし、銃弾で貫かれた脚に激痛が走り、倒れ込んでしまう。


 「クソ! ごめん……ごめんイザベル……」


 ルイスは泣いて謝る。

 私は地を這いつくばってルイスの隣へと行く。

 泣き出すルイスの頬をそっと触る。


 「いいのよ……これで、私は貴方に出会えて良かった」


 私の言葉を聞いてルイスはさらに泣き出す。

 

 「でも、俺もお前も……何も果たせなかった!」


 そう叫ぶ。

 その叫び声を掻き消すように辺りで岩が地に着弾している。


 「私は……貴方に会えただけで幸せだったよ」


 私はそう言い、ルイスの頬に垂れる涙を拭う。


 「俺もだ……ごめん、イザベル」


 私はその言葉に涙を浮かべる。


 「アナスタシア……アナスタシアでいいよ」


 その言葉を聞いて、恥ずかしそうにルイスはアナスタシアと私を呼ぶ。

 大岩がもうそこまで迫っている。

 終わりだ。

 2人でここで……

 でも、これも悪くないのかもしれない……

王にはなれなくとも、大切な人と出会えた。

 

 (これでいいんだ)


 その時、ルイスが僅かに立ち上がり、私の体を押した。


 「いけ! アナスタシア!」


 ルイスは最期にそう叫び、岩に体を砕かれた。


 「そんな……ルイス、だめだよ」


 私はその場で泣き崩れた。


 「一人で行かないでよ……」


 ルイスの体は吹き飛ばされ,近くの木に激突した。

 嫌だよ、私も貴方と一緒に居たい……

 貴方と一緒に【雲の上の世界】に行きたいよ……


 その時、どこからか放たれた銃弾が私の胸を貫いた。


 「あっ……」


 私はその場に倒れ込み、絶命した。

 私の魂はどこに行くのだろうか。

 雲の上の世界の住人となり、再びルイスに会えるだろうか。

 そう思っている時、私は砂山の世界に居た。


 「ここは……?」


 暗いその世界は浜辺のような空間だった。

 狭い砂の陸地の周りを水が囲っていた。

 近くから足音がする。


 「誰……」

 

 闇の中から現れたのは一人の男だった。


 「貴方は誰……」


 私はそう問いかけた。

 男はただぽつりと、「エース」と名乗った。


 「ここは、無限領域……いや――」


 「魂の終着点と言った方が正しいか」


 男はそう言った。

 魂の終着点……聞いたことがある。


 この世の始祖、イブ様が創り出した物。

 でもなぜこの男が……


 「俺は、未来からお前に語りかけている」


 男の言葉に私は「なぜ?」と聞く。

 すると,男は、


 「ワールドエンドオーダーを引き起こす為だ」


 と言った。

 ワールドエンドオーダー……?


 「お前は、まだ現実世界に魂として取り残されている。もうすぐ、お前の元に二人の人間がやってくる。その二人にお前の力、ルクスの柱を渡すんだ」


 男はそう言った。

 ルクスの柱……? 

 一体何を……

 

 「全ては、未来の為だ」


 最後にそう言い残し、男は私の前から消えていった。

 お読みいただきありがとうございます。

 これにて、イザベル王国編は終了となります。

 アナスタシアにルイス、この世の始祖とされている2人の名がなぜ2人につけられたのでしょうか……


 そして死亡したアナスタシアの前に現れたエースは……

 アナスタシアが言ったこの世の始祖イブ様とは……

 そしてワールドエンドオーダーとは……

 魂の終着点とは……


 謎が謎を呼ぶ展開ってやつですね笑笑

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