誰が悪魔か
無限にも等しい記憶が流れてくる。
辛いこと
悲しいこと
全てを受け入れた少年は悪魔となった女性の記憶をも受け入れた。
徐々に意識が鮮明になっていく…
「ここは…?」
エースは教会で目を覚ました。
エースは自分の手を見つめる。
「そうか…記憶を見ていたんだ…」
エースはそう呟き眼前に広がる巨大な像を見つめる。
「ルイス…」
エースは額に手を当てる。
(記憶で見たもの…あれはいったいどういうことなんだ…)
エースは立ち上がり,扉の方へと向かう。
扉を開けると外では雪が降っていた。
「雪…? 今は夏じゃないのか…?」
エースは空を見つめてそう言う。
エースが教会に来たのは9月のこと,雪が降る季節じゃない。
(とにかく,宮殿に戻ろう)
エースは雪を掻き分けながら宮殿へと向かう。
宮殿に着くとそこにはヘラクレスが居た。
「エース…!」
ヘラクレスは驚いた顔をして此方に近づいてくる。
「いったいどこにいたんだ…エース」
ヘラクレスはエースにそう聞いてくる。
「思い出の場所さ…そこでルイスの記憶を見ていた…」
エースは掠れた声でそう言う。
「ルイスの記憶を…」
ヘラクレスは唖然とする。
「外で…雪が降っていたんだが…今は何月だ…」
エースがそう問いかける。
エースはすっかり弱り切っていた。
「今は12月だ…」
ヘラクレスはそう言う。
「3ヶ月も…記憶を見ていたのか…」
エースはそう呟く。
しばらくしてヘラクレスが暖かいスープと毛布を持ってくる。
エースは椅子に座り,毛布に包まりながらスープを飲む。
「それで…いったいどんな記憶を見たんだ…」
ヘラクレスはそう問いかける。
「あぁ…長い夢を見たんだ…」
「あの本に書かれていたような…世界を…」
エースはコップを見つめながらそう言う。
「エース,お前がいなくなった後にこんな本が見つかった」
ヘラクレスはそう言い『クロネノホン』を机に置いた。
「クロネ…あいつの本か…」
エースはそう言った。
「記憶について聞かせてくれないか…?」
ヘラクレスはそう言う。
エースが語り出そうとした瞬間,部屋の扉が開けられる。
「ヘラクレスさん! 大変です…! メアリー様が…」
息を切らした兵士がそう言う。
「メアリーが…」
エースは立ち上がりそう言う。
「…え? エース様…」
兵士はエースを見て動揺する。
「メアリーに何があったんだ!」
ヘラクレスはそう言う。
「街で革命軍を名乗る男たちに…人質に取られました…ヘラクレスさんを連れてこいと…」
兵士はそう言った。
「なっ…」
「すぐに行く…!」
ヘラクレスはそう言い,斧を握った。
「俺も…俺も行く」
エースは2本の剣を握る。
2人は空を飛び,街を目指した。
「ヘラクレス…3ヶ月の間にいったい何が起こったんだ…?」
エースはそう問いかける。
「まず,天界禁忌法典が廃止になりアトラス法典が基本法典となった」
「そしてエースの失踪後,メアリーが女王となり,代理で天界を収めていた…」
ヘラクレスはそう言う。
「女王に…」
(メアリー…ごめん,何もかも背負わせちゃって…)
「その…革命軍というのは…?」
エースはそう問いかける。
「分からない…可能性があるとしたら『アナシズム党』のメンバーかもしれない…」
ヘラクレスはそう言う。
「アナシズム党?」
聞いたことのない名前だ。
「この3ヶ月で急速に勢力を拡大した議会の政党だ…」
ヘラクレスはそう答える。
「あそこは危険思想な奴らが多い…なんでも,破壊こそが真の創造である…とか言っているんだ…」
2人が雲を抜けると街が見えてきた。
街の名は『ルネサンス区』
城下町とも言えるものだ。
街に降り立つと1人の男がメアリーの首に刃物を突き立てていた。




