鏡の自分
エースは目を開ける。
「ここは…」
眼前に広がるのは知らない天井だった。
「俺…何してるんだ…」
その時,扉が開く。
「あっ! エース起きたましたね,もうご飯は出来てますよ」
その声の主はミカエルだった。
「ミカエル…!」
エースは唖然とする。
(なぜ…ミカエルが…)
「先に下に行っていますよ,エース」
ミカエルはそう言い,階段を降りていった。
「これはいったい…」
その時,寝床の横に置かれていた板が音を鳴らす。
その発光する板には,
ガブリエル
今日は遅刻するなよ
そう書かれていた。
「…え? ガブリエル…」
エースは走るように下の階に降りる。
(どうなってる…これはどういうことだ…!)
下では椅子にメアリーとミカエルが座っていた。
「エース,おはよう」
メアリーはそう言った。
「なっ…」
2人は食パンを食べている。
「…ミカエル,やっぱり…生きてたのか…」
エースは涙を流してミカエルに抱きつく。
「ちょっ…エース,どうしたのですか?」
エースはミカエルを離さない。
「エース…?何かあったの…?」
メアリーがそう言う。
「私は死んだりしませんよ,ここにいます」
ミカエルはそう言い,エースの涙を拭う。
「ほら,せっかくのトーストが冷めてしまいますよ」
ミカエルはそう言った。
「あぁ…」
そうだ,ミカエルは…2人は生きてたんだ…
さっきのもガブリエルからの連絡だろう…
俺はあんな辛い世界じゃない,
この世界の住人だ。
2人との他愛もない話をするのがとても楽しい。
こんなにも笑ったのは初めてだ。
ずっとここにいたい…
エースはパンを食べきる。
「エース,今日は部活でしたよね? 片付けはしときますから歯を磨いて準備をしなさい」
ミカエルは優しくそう言う。
その優しさに涙が溢れた。
こんな…こんな世界があったんだな…
もう辛くない…
この平和そうな世界で…
生きていくんだ。
エースは何故か場所が分かる洗面所のある一階へと向かう。
歯ブラシに歯磨き粉をつけて,鏡を見る。
そこに映し出されたのは自分ではなかった。
「うわっ!」
エースは驚き,歯ブラシを地面に落とした。
鏡の中に映し出されていたのは不気味な顔をした男だった。
『こんなところで何をしている…?』
鏡の中の男はそう言った。
『メアリーのために…死んだ2人のために戦うんじゃないのか?』
男はこちらを睨みつけてそう言う。
「2人は死んでない!」
エースは声を張り上げてそう言う。
『いいや2人は死んだ,お前は自分に甘過ぎる』
男はそう言う。
その時,3面鏡の左側の鏡にその男がもう1人写った。
『自身の罪を捨て,メアリーを見捨てるのか?』
男はそう言った。
「違う! メアリーは俺が守る…俺が守るんだ!」
エースはそう言う。
『なら何故こんな場所にいる? お前はメアリーを守るために戦わなければいけない』
男はそう言う。
「ここに…ここに居たいからだ…! ここは平和で…幸せなんだ!」
エースがそう言うと3面鏡の右側の鏡に男がもう1人写る。
『だめだ,お前は巨悪と戦わなければならない,そのためにはルイスの記憶を受け入れるのだ』
男はそう言った。
「嫌だ…! もう知らない記憶なんて“思い出したくない“!」
エースは頭を抱えてそう言った。
『なら傍観者としてメアリーが死ぬところを見るのか?』
男の問いにエースは困惑する。
「それは…」
『なら戦え』
男がそう言う。
どこか聞き慣れた声で…
「まさか…お前があの声の主か…?」
エースは後退りしてそう言う。
あの声とは,聞くと何故か戦闘意思に駆られるあの声のことだ。
『あぁそうだ,俺は道の力を使いお前に命令を出していた』
男はそう言う。
「お前は…いったい何者だ…?」
エースのその問いに男は躊躇いを見せる。
『俺は…』
『俺は道の中のお前だ』
男がそう言った瞬間,鏡が青い雷に撃たれて粉々に割れる。
「うわっ!」
エースは尻餅をついてしまう。
「だっ大丈夫ですか?」
ドアからミカエルの声がする。
エースは決心する。
そうだ,メアリーは俺にしか守れない…
俺が…俺にしか2人の意思は継げない!
「ミカエル…お前とガブリエルの意思は…俺が継ぐ!」
エースは立ち上がり,扉に向かってそう言った。
「俺が…メアリーを守るために戦う!」
そう言いエースは扉を開けた。
そこに広がるのは無限の闇だった。
エースは闇の中で目を瞑る。
ルイスの記憶を受け入れるために…




