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ANIMA  作者: パンナコッタ
統べる者と王の資格
21/71

誰かの記憶

 アナスタシアは真っ暗な世界に居た。


 正確に言えば身に触手を纏い,


体を再生さているのだ。


 そして今は目がまだ再生されていない。


 「くそ…自爆にはあいつらを巻き込めたのか…」


 「とにかく…まずは体を修復しないと…」


 その時,アナスタシアの腹に大きな衝撃が走る。


 「ぐわぁぁぁぁぁ!」


 アナスタシアは口から血を吐く。


 「なんだ…くそ…」


 アナスタシアは必死にもがくが腕も足もない彼には何もできないだろう。


 「俺だよ…アナスタシア」


 その声はエースのものだった。


 「…お前か,生きていやがったか…」


 アナスタシアは舌打ちをし,そう言った。


 「お前は…俺の夢を,望みを踏み躙った」


 アナスタシアは暗闇に居るであろうエースにそう言う。


 「何が夢だ,何が望みだ,お前は俺の仲間を殺した」


 エースはそう言い,アナスタシアの再生途中の腕と脚を斬り落とす。


 アナスタシアは悲鳴をあげる。


 「お前は…俺がこの手で殺す,これで終わりだ」


 エースは「ユグドラシルの聖剣」を構える。


 「お前は…いずれ道の力に目覚める…そうすれば俺の言うことだって分かるさ…俺が正しいと…」


 アナスタシアはそう言った。


 「黙れ,お前は悪魔だ,俺は悪魔にはならない」


 エースは冷たくそう言う。


 「俺からすれば…お前は悪魔だよ」


 アナスタシアはそう言った。


 エースはアナスタシアの頭を跳ね飛ばす。


 そして2本の剣をアナスタシアの首に突き刺す。


 その剣は胸にある魂を貫いた。


 「終わりだ,アナスタシア」


 (2人とも…これで…これでいいかな」


 アナスタシアの魂がエースに吸収される。


 エースは目を瞑る。


 2人の記憶に浸ろうと…


 しかし,


 エースの頭の中に流れたのは魂を吸収することによってより鮮明に繋がった“ルイスの記憶“だった。


 「う…やめろ…2人の記憶を…見せろ…」


 エースは今にも倒れそうな足踏みでヘラクレスたちの元へと向かう。


 「帰るぞ…ヘラクレス…」


 エースは小さくそう言った。


 


 

 天界禁忌法典の改編権並びに危険人物処理を目的として行われた“アナスタシア討伐作戦“その生き残りはわずか5名であった。


 エースは宮殿で迎え出たメアリーたちに言う。


 「ごめん…何も…できなかった…だれも救えなかった…」


 エースは涙を流してそう言う。


 そして2本の剣をメアリーに差し出す。


 メアリーは2本の剣を抱き抱えて涙を流した。


 「そんな…ガブリエル…ミカエル…」


 メアリーの涙を見て,もう一度2人が死んだのだ自覚した。


 違う,死んだんじゃない,俺が…俺が守れなかったんだ。


 俺にとって守るべきものはメアリーただ1人だった。


 それはメアリーと出会った時,


あの時何かに背中を押された時,


この少女を守ろうと思った時だ。


 でも俺は仲間と出会った。


 2人と…


 同じ意思を持った2人と…


 いつしか守るものは3つに増えていた。


 そして今日,その2つを失った。


 いや,そうじゃない。


 2人の.2人の意思を守るんだ。


 俺はこの身の全てを賭けてでもメアリーを守る。


 


 後日,天界政府はアナスタシア討伐成功を発表した。


 そして捜索部隊を結成し,アナスタシアが寝床にしていたと思われる洞窟を見つける。


 「ここかがアナスタシアの住処だった場所か…?」


 ヘラクレスはそうつぶやいた。


 「こっちだ!こっちに何かあるぞ!」


 1人の兵士がそう言った。


 そこに行くと大きな岩があった。


 そしてその奥に僅かに隙間が見える。


 「岩を退けるぞ!」


 ヘラクレスがそう言った。


 岩を退けるとそこには小さな空間があった。


 「これは…」


 ヘラクレスは息を呑む。


 そこには一冊の本と一本の剣があった。


 その本にはペンが付けられていた。


 「間違いない…天界禁忌法典の原本だ…」


 「これがあれば…改編ができるかもしれない…!」


 ヘラクレスのその声に兵士たちの中で歓声が湧く。


 その時,エースは一本の剣を見ていた。


 エースがその剣に触れる。


 すると誰かの記憶が僅かに流れてくる。


 「…この剣はルイスのものだ」


 エースはそう言った。


 捜索隊は天界禁忌法典の原本とルイスの剣を持ち帰る。


 「ヘラクレス…これで終わり…だな」


 エースのその言葉にヘラクレスは頷く。


 「民に演説をしよう,もう一度正式に我々の勝利を伝えよう」


 ヘラクレスはそう言う。


 「あぁ,そうだな…」


 エースはそう言う。


 「エース…大丈夫?」


 隣にいたメアリーが心配そうな顔をしてそう言う。


 「ごめん…2人とも…少し休ませてくれ」


 エースはそう言い,宮殿を出て行った。


 エースはフラフラとしながら道を歩いていた。


 瞬きをするだけでルイスの記憶が流れてくる。


 純血の者同士となればその記憶はより鮮明に流れてくる。


 知りもしない景色,知りもしない感情


 そんなものが膨大な量流れ込んでくる。


 「やめて…くれ,2人の記憶を見して…くれ」


 エースはそう呟いた。


 しばらく歩き,“あの教会“へと着いた。


 「ここで…お前らと出会ったんだ…」


 エースは教会のドアを開ける。


 教会の中に聳え立つ像に手を当てる。


 「この像…お前だったんだな…ルイス」


 エースはそう呟き,椅子に座り込む。


 もう何日も寝ていない。


 目を瞑ると記憶がより鮮明に流れ込んでくるからだ。

 

 世界の区別がつかなくなる。


 「俺は…」


 瞬きをしただけで全身に不快感とともに記憶が流れてくる。


 「私は…違う! 俺だ…俺は…俺はエースだ」


 エースは体の力が抜けて倒れ込み,


眠りについてしまう…


 


 



 次回,二章最終話です。


 ここまでお読みいただき感謝でいっぱいです。


 正直言ってこの辺りを書くのは辛いです。


 エースがルイスの記憶に侵されていく姿はとっても悲しいですね…


 三章に関してはタイトルは「始祖の記憶と鏡の自分」にしようかなーと思っています。


 始祖の記憶というのはルイスの血筋のはじめの人物であるとされているルイスの記憶のことですね。


 また鏡の自分に関してはここでは語りません。


 是非お楽しみにー

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