消えゆく心の燈
「…無理だ」
ヘラクレスは小さくそう言った。
「もう…力を酷使できない…」
ヘラクレスは血を吐きながらそう言う。
「そんな…」
「2人を…2人を救う方法はないのか!」
エースは声を荒げそう言う。
「…そうだ」
エースはあることを思いつく。
「ヘラクレス…俺の力を継承しろ」
エースはそう言い,胸に手を当てる。
「…何を言っている…?」
ヘラクレスは掠れた声でそう言う。
「そうすれば…力がまた…使えるだろ…2人を救えるだろ!」
エースは立ち上がりそう叫ぶ。
「ヘラクレス!俺の魂を受け継げ…!」
エースは自分の胸を抉ろうとする。
口からは血を吐き,苦しそうな顔をしながら…
「やめろ…!やめろエース!」
「そんなこと…俺にはできない!」
ヘラクレスも立ち上がりそう言う。
「なら,ならどうやって2人を助けるんだよ…!」
「俺には…俺にはこれしかできない…俺には何も出来なかった…だから…この命で2人を救うんだ…!」
エースはそう叫ぶ。
その時,誰かがエースの足を触る。
エースは振り返る。
その手はミカエルのものだった。
「ミカエル…」
エースはそう呟く。
「エース…手を…握ってください…」
ミカエルはそう言い,右手を差し出す。
エースは自身の胸を抉っていた右腕を胸から抜き,
ミカエルの手を握る。
胸の傷は再生されていく。
「エース…私はずっとあなたのことが好きでした…」
ミカエルは照れるようにそう言う。
「あの時,私を光の矢で救ってくれた時からずっと…」
ミカエルはそう言い,両手を広げてエースの首に触れる。
そしてそっと抱き寄せエースの唇にキスをした。
「ミカエル…?」
エースはそう小さく呟く。
「よかったな…ミカエル…最期に想いが伝えられて…」
横に倒れるガブリエルがそう言った。
「ガブリエル…どうして…」
エースは大粒の涙を落としてそう言う。
「エース…俺たちは俺たちの願いを…意思を…お前に…託す,メアリーを守ってくれ…」
ガブリエルは今にも途切れそうな声でそう言う。
「そうです…私たちと…エースにしか…メアリーは守れませんから…」
ミカエルもそう言う。
その声は,その命は今にも途切れそうだった。
「そんな…無理だ…2人のいない世界で…俺は何もできない…」
エースはそう言う。
「お願い…私たちの魂を受け継いで…」
ミカエルがそう言った。
「嫌だ…!そんなの…嫌だ!2人がいないと…俺は…」
エースはそう言う。
「俺たちは生き続けるさ…エース…お前の心の中で…」
ガブリエルはそう言う。
2人はそっと手を差し出す。
「大丈夫…私達は世界がどれだけあなたを憎もうと,何があってもあなたの…味方…仲間だから…」
ミカエルは笑顔を見せてそう言う。
2人はそっと目を瞑り,息を引き取った。
2人の手を通して俺に魂が吸収される…
俺は大声を出して涙を流した。
目を瞑ると2人の記憶が頭の中に流れてくる。
2人の俺との“思い出“が…
俺は立ち上がった。
「…エース」
ヘラクレスがそう呟いた。
背中の羽が黒に染まり,萎れていった。
そして新たな羽が2本,背中に生える。
俺は地面に転がった2人の剣を握る。
(俺に…俺に力を貸してくれ…)
2本の剣は黒に染まる。
眼前には何本もの触手で体を包み込んでいるアナスタシアが居る。
(まだ…まだ終わっていない…こいつを殺すまで…)
「俺が…俺が2人の…願いを…意思を継ぐ!」
俺は2本の剣を構える。
お読みいただきありがとうございました。
ガブリエルとミカエルがここで死亡となります。
この物語はすでに私の頭の中で完成しています。
2人の死はここから大きく物語を,エースを変えていきます。




