記憶の声
「君となら…世界を変えられるのに…」
アナスタシアはそう言う。
「君は…君たちは僕から大切なものを奪うんだね…」
「なら僕だって,奪ってやるよ…」
アナスタシアは剣を抜く。
アナスタシアの剣は黒に染まる。
エースも剣を構える。
(この剣を奴の体に差し込めば,力を抑えられる…!)
エースが叫びを上げ,他の兵士たちと共に斬りかかろうとした時,
アナスタシアの背中からいくつもの太い触手のような何かが飛び出てくる。
「な…!」
エースがそう言い,避けようとするが左肩を砕かれる。
ガブリエルは間一髪の所で触手を避ける。
ミカエルは触手を切りつけるも,あまりの速度に弾かれてしまう。
不発になった触手数本が地面に激突し,煙を上げる。
エースも咳き込む。
「くそ…!不意打ちか…」
「みんな大丈夫か!」
エースがそう叫ぶように問いかける。
煙が晴れると何本もの触手が空を覆おっていた。
その触手の先端には兵士たちの亡骸が貫かれていた…
「な…!」
エースは立ち上がる。
「ふふ…呆気ないなぁ,こんなに死んじゃうなんて…」
アナスタシアは笑みを浮かべそう言う。
アナスタシアの触手から体を貫かれた兵士たちの魂が吸収されていく。
そしてアナスタシアが背中の触手に触れると触手が粉々に砕けていく。
兵士たちの亡骸と共に…
「そんな…」
ガブリエルは絶句する。
その場に残されたのはエースとガブリエルとミカエル,
それと腹に重傷を負ったヘラクレスと重傷を負った兵士数名。
「よくも…仲間たちを…」
ミカエルは剣を構え,怒りを露わにする。
ガブリエルもそれに続き,剣を構える。
「ヘラクレス,重症の兵士たちの介抱を」
ガブリエルはそう言う。
ヘラクレスの力というのは人が失った部位や内臓を復元する力である。
しかしこの力にはリスクがあり,酷使すると魂や身体に影響が及ぼされ,最悪死亡することもある。
「いくぞエース」
ガブリエルはエースにそう言う。
3人は地を蹴り,アナスタシアに斬りかかる。
ガブリエルが剣を振るが避けられる。
しかしその隙を突いてミカエルがアナスタシアの横腹に斬り込む。
それに続けてエースの斬撃がアナスタシアの左腕を跳ね飛ばした。
しかしアナスタシアはなんと腕を再生させたのだ。
「な…どういうことだ…」
3人は困惑する。
「僕の力…『創造の力』さ…」
そう言い,アナスタシアは地面から触手を出現させ,3人を吹き飛ばす。
触手が地面に衝突し,煙が立つ。
「こんなものか,こんなものなのか…道の支配者よ」
次の瞬間,煙の中からエースたちが飛び出し,アナスタシアに斬りかかる。
ガブリエルの斬撃がアナスタシアの剣を弾き飛ばす。
ミカエルがアナスタシアの腹を裂く。
(今だ!今ならこいつの魂を狙える…!)
エースは剣をアナスタシアの胸に差し込もうとする。
しかし,エースの剣をアナスタシアが右手で掴む。
するとアナスタシアの右手から『黒い雷』が飛び出てエースの剣を粉々に砕く。
衝撃波で3人は吹き飛ばされる。
「なんだ…今のは…」
ガブリエルは立ち上がり,アナスタシアの方を見る。
アナスタシアは即座に体を修復し,弾き飛ばされた剣を拾う。
そしてエースの方に剣を向ける。
「危ないな…殺されるところだったよ…」
「じゃあね,エース」
アナスタシアがそう言い,背中に触手を発生させる。
(このままじゃ…死んじまう…)
エースは思考を巡らせる。
道に繋がれ…全てを支配するんだ
そう,声がした。
触手が放たれる寸前,エースはアナスタシアに左手を向ける。
ガブリエルとミカエルはエースを守ろうと地を蹴る。
『動くな!ぶっ殺すぞ!』
エースがそう叫んだ時,エースの後ろから無数の光が現れ加速し,世界を飲み込む。
とてつもない衝撃波にガブリエルとミカエルは吹き飛ばされる。
アナスタシアは硬直していた。
(これは…道の力…!?)
エースはさらに叫ぶ。
『ぶっ殺してやる!お前なんか』
光はさらに加速し,重い音が響く。
アナスタシアの体に物凄い重力がかかる。
『この世から,消えてなくなれ!』
エースがそう叫んだ時,石英のような形をした青いものが現れる。
その物体はエースに対し,青い雷を放つ。
エースの体は吹き飛び,光は減速し世界は元に戻る。
「エース!」
ガブリエルとミカエルはがそう叫ぶ。