アナスタシア
「ガブリエル!見てくれ!」
俺は勢いよくガブリエルの部屋の扉を開ける。
「なっなんだ?エース」
ガブリエルは突然のエースの登場に驚いている。
「これなんだが旧政府が管理していた書物の中にあったんだ」
エースは先程の本をガブリエルに手渡す。
「こっこれは…」
ガブリエルの手に取られた本はこの世界の始まりを大まかに記したものである。
「ただ…これは事実なのか?この本に書かれていることは…」
ガブリエルは本の内容に疑問を抱き,エースに問いかける。
「このページを見てくれ」
エースはあるページを示す。
そのページは
「ルイスアラワレタタカイオワル」
のページだった。
「アナスタシアが鎖に繋がれているの…呪いを表しているんじゃないか?」
確かにこの本には比喩的表現が多い。
エースの言うことも可能性としてはある。
「確かに…な」
ガブリエルは顎に手を当て,そう言う。
その時,ガブリエルはあることに気づく。
「ここ,見たことあるぞ…これは『召喚門』の奥にある森だ…」
「…どいうことだ…?」
エースはそう聞く。
「召喚門という死んだ人間が天界人として天界に召喚される門がある…この景色はその奥にある森によく似ている…」
ガブリエルはそう答える。
「なら…行ってみよう,何かあるかも知れない…」
エースは絵を指さしながらそう言う。
「少し危険じゃないか?」
ガブリエルがそう言った時,扉が開く。
「なら,俺と一緒に行くか?エース」
扉を開けたのはヘラクレスだった。
ヘラクレスはウリエルが襲おうとしていた病院の医院長であった。
後に現在9つのうち,7つが判明している『九魂神』の力を継ぎ,天界新政府にやって来た。
エースも信頼をおける頼れる人物だ。
「すまんな,盗み聞きをする訳じゃなかったんだ,前を通りかかったら聞こえちまったもんで…」
ヘラクレスはそう言う。
「ヘラクレスが一緒なら…良いんじゃないか,ただ気をつけろよ…何があるか分からない」
ガブリエルはそう言い警鐘を鳴らしつつも,調査を承諾した。
「ならヘラクレス,明日朝一番に出発するぞ!」
エースはそう言う。
「あぁ,寝坊するなよエース」
ヘラクレスは笑みを浮かべながらそう言う。
翌日,俺とヘラクレスは例の召喚門へと向かった。
その途中でヘラクレスの力についての話になる。
「その力って天界の最高医師?って人から継承したんだよな?」
エースがそう尋ねる。
「あぁ,あの人は俺の師匠みたいな人だった,あの人が最期に俺に力を渡してくれたんだ…」
ヘラクレスがそう言う。
「そうだったのか…」
そんな話をしていると召喚門へと着く。
「ここか…確かに裏に森があるな…」
エース達の目の前には大きな門とその奥に木々が見える。
「空を飛んで上から探そう」
ヘラクレスがそう言う。
実は今回の調査にはガブリエルは来ていない,なんでも野暮用があるってことだ。
空をしばらく飛んでいると一箇所だけ木が生えていない場所を見つける。
俺たちはそこに降り立ち,あることに気づく。
ここだ,あの本で描かれていたのはこの場所だ。
しかし,周りを見渡すが特に何かある訳ではない。
その時,森の中で何かが動くのをエースは見た。
「こっちで何か動いたぞ!」
エースはそう叫び,森の中に入る。
しばらく森の中を探すが何も見当たらない。
「くそ…何かいたんだけどな…」
エースが息を切らしながらそう言った時,
「探しているのは…僕のことかな…?」
後ろから声がした。
俺が振り返ると,木の枝の上に男がいた。
「誰だ…!お前は!」
エースがそう聞くと男は,
「僕はアナスタシアだよ…」
不気味な笑みを浮かべ,そう答えた。
『九魂神』とは
今回は物語であまり触れられていない九魂神について触れていく。
ちなみに読み方は『くげんじん』である。
この力の存在は旧政府が処分せず一般公開していた書物『天界禁忌法典並びに世界の知恵の書第二章』の中に記されていたもので,その力は偉大なものであり,9つ存在すると記されていた。
その中で力の保有者が今のところ判明しているのが7つである。
その保有者は,
エース(元保有者メアリーの力,元保有者ウリエルの力,元保有者ゼウスの力)
ガブリエル(元保有者現在不明)
ミカエル(元保有者現在不明)
ヘラクレス(元保有者天界の最高医師の力)
???(現在不明)
となっている。
この力には『覚醒』というものがあり,共通点としては頭に天使の輪が現れることである。
(なお,エースの力は例外として現れない)