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ANIMA  作者: パンナコッタ
統べる者と王の資格
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マルコの日記

 ゼウス死後,場は混乱に陥った。


 俺を応援していた者達も動揺している。


 拘束を解かれたガブリエル達が俺の元に集まる。


 「エース…よくやった…」


 ガブリエルはホッとした顔でそう言う。


 「エース…」


 メアリーは半泣きというところか,目頭を赤くしている。


 「流石です,エース」


 ミカエルは感心した様子でそう言う。


 その目には泣き散らした跡があったが俺は触れないでおいた。


 俺は動揺する観客席の方を見つめる。


 民は王の死に困惑している。


 (……)


 「みんな,聞いてくれ!」


 エースは声を上げ,民に話しかける。


 「みんなは何故,ルイスの血族者を虐げるんだ?」


 誰もその質問には答えない。


 分からないからだ。


 何故,ルイスの血族者は差別され法にまで殺されるのか


 「俺たちは…お前らと同じ天界人だ」


 「差別を指示する王も居なくなった,みんなの本心はどうなんだ…?俺たちは何か悪いことをしたのか?」


 「我々は種族関係なく,共に生きていけないのか…?」


 場が静まり返る。

 今エースは差別問題に真っ向から挑んでいるのだ。


 民達は長年その体の染み付いた差別意識を拭えるのだろうか…


エースは不安になった。


 けれど自分がするしかないと,そう思った。





 どこかで拍手が鳴る。


 それに合わせて拍手はどんどん大きくなっていく。


 次第に歓声も湧き出す。


 答えてくれたのだ。


 民達がエースの意思に…


 エースは涙を流しながらメアリー達に言う。


 「やったよ…俺,みんなを守れたんだ…」



 その時,天界の歴史が大きく動いたと言っていいだろう。


 差別され,殺しても罪にならない者たちがこの世界の形を変えたのだ。


 破壊ではなく,創造で…


 物語は2年後へ…




 エース達が率いる新政府が誕生した。


 エース達が政権を握った今でも天界禁忌法典は消えておらず,


理不尽な法が多く記されたその書に民は苦しめられていた。


 エース達はそれを受け,天界禁忌法典の改変権を手に入れることを目標とした。


 その間,実質的に天界の法典となったのが『アトラス法典』と言われるものである。


 これはエースとゼウスの決闘があった闘技場の『アトランティス闘技場』の名に因んだものである。


 この法典には天界禁忌法典では罪とされるものも無罪とする様な法が数多く記されている。


 しかし,これはあくまで仮の措置に過ぎない。


 本当の問題は天界禁忌法典に記された法を破ることによる身体への損傷にある。


 些細な方でも破れば内臓に激痛が走るなど,戦闘中であればアドレナリンが出ていて気づかない様なものでも,


 私生活に出れば極めて凶悪なものである。


 何より,エースは許せなかった。


 この法典書がゼウスの作ったものではないと知ったあの時,悪の根源を知った時,


大切な人を貶める法を作った者が許せなかった。




 時は数ヶ月前に遡る…


 旧政府が管理していた様々な重要書の整理をしている時,エースは一冊の本を見つけた。


 その本の題名は…



「セカイノレキシ」



 その本にエースは惹かれ,読んでみることにした。


 この世界に歴史書というものはほとんど残されていない。


 旧政府が全て処分してしまっていたからだ。


 エースはそこに何か隠したかった事実があるのでないかと踏んでいる。


 例えば『天界禁忌法典』について…など。


 歴史書は一枚の絵で始まった。


 その絵を見てエースはあることに気がついた。


 その絵に描かれている女性は教会にあった像と同じ人物だ。


 その下に掠れた文字で


「コノヨノシソルイス」


 そう書かれていた。


 そしてその横のページには1人の男が描かれていた。


 黒で描かれたその男は黒い剣と共に描かれている。


 その下には


「アクマトケイヤクアナスタシア」


 そう書かれていた。


 (ルイス…アナスタシア,ガブリエルの言っていた俺たちの祖先のことだろうか…)


 エースはページを捲る。


 次のページには一本の木が描かれていた。


 丘の上にある木だ。


 そして説明文として


「ルイスショウゲンコノヨノハジマリキデアル」


 そして次のページには城が描かれていた。


 街の様なものもあり,王国だろうか?そんな雰囲気がある。


 「ルイスチカラテニイレクニツクル」


 その次のページには先程の男…アナスタシアが描かれていた。


 「アナスタシアシットイダクアクマトケイヤク」


 そして次のページには人の死体の転がる戦場が描かれていた。


 「センソウニルイスショウリセカイヘイワナル」


 次に描かれていたのは雲の上の玉座に座るアナスタシアだった。


 「アナスタシアテンカイシハイジェノサイドハジマル」


 次のページには光に包まれるルイスと鎖に繋がれるアナスタシアが描かれていた。


 「ルイスアラワレタタカイオワル」


 絵による説明はそこで終わり,次のページからはぎっしりと文字の詰まった物となった。


 エースはその書を一日かけて読む。


 書はこの世界の始まりの歴史を大まかに記した物で作者の主観も入っている様だ。


 歴史書と言うよりは日記の様なものに近い。


 本の最後には


「サクシャマルコ」と書かれていた。


 (とにかく,このことをガブリエル達に伝えよう)


 エースは本を持ち,部屋を出た。











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