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時空空母”いずも”発進!  作者: 平谷 口(ひらたに こう)
7/8

リトルボーイ炸裂

魚雷攻撃を受けた ”いずも”は深刻な被害を被ってしまった。その上シャオンまで故障してしまい、未来に戻れるかどうかも危ぶまれる。


ゼロ戦8機と隼2機、それらが、未来の最新鋭戦闘機F-35B2機と相まみえた。

「魚雷を装着してるのはゼロ戦2機だけだ。その2機を徹底的にマークして魚雷発射を妨害する」

 それぞれのアメリカ人パイロットが、お互いのマークするゼロ戦を決めた。

「よし!油断するな。奴らの鼻っ先を掠め飛んでやる。腰を抜かして魚雷発射どころじゃないだろう」

 そんなF-35Bに、ゼロ戦5機が一斉に、機銃を撃ちながら襲い掛かって来たが、彼らにとって信じられないようなスピードで、目の前を飛んでいくF-35Bに照準すら合わせられない。あたふたとするだけだ。酒井以外、初めて見るジェット戦闘機に度肝を抜かれたことだろう。

 魚雷を装着したゼロ戦2機は、どうにかして最適な発射位置に着こうとするが、F-35Bに妨害されてしまう。

 F-35Bにとって、これら旧日本軍のプロペラ機なんぞ撃墜しようと思えば造作ないことではあるが、”いずも”の日本人乗組員の手前、それはできない。

時空空母”いずも”は日米同盟の賜物なのである。時代が違うとしても日本人パイロットを攻撃するわけにはいかない。

 だが、広島市民10万人は見殺しにしていいのか。”いずも”は大変な矛盾の中で1945年に存在している。

 他の5機はF-35Bには目もくれず、一直線に”いずも”に向かった。だが、魚雷も爆弾も装着していないのに何ができると言うのだ?

 そして、その5機が一斉に”いずも”のブリッジに向かって銃撃を始めた。

 F-35Bもヘリも格納庫に有り、銃撃による被害を受ける心配はなかった。

 隼は7、7ミリの機関銃を胴体に2丁装備していたが、それは全く非力で役に立たない。ゼロ戦はそれよりはましで、20ミリ機関砲を両翼に、7ミリ機関銃を2丁胴体に装備しているが、いくらなんでも、そんなもので”いずも”にダメージを与えられるわけもなく、ただ火花が散るだけである。

 そんなことはゼロ戦や隼のパイロットにも分かっているが、何かに取り憑かれたように、執拗に機銃を撃ってくる。おそらく、酒井が”いずも”の怖さを彼らの頭に叩き込んだのだろう。”いずも”という空母を沈めないと人類の未来に多大な禍根を残すということを。

 東京に原爆が落とされ、それによって多くの人が犠牲になり、天皇陛下も亡くなられたということを口を酸っぱくして語ったに違いない。

 実際、酒井は未来に行って、それを見てきたのだから説得力がある? いや、当時のパイロット達が酒井の未来話を信じたとは、到底思えない。 カリスマ性を持つ酒井の信奉者としてついて来たのだろう。

 しかし、目の前の”いずも”や、F-35Bを見たら、酒井の話を信じざるを得ないのではあるまいか。

 そんな時に、リトルボーイを腹に抱えたB-29のエノラ・ゲイが、とうとう、広島上空に現れた。同じB-29、2機を引き連れて、計3機だ。

 と同時に1機のゼロ戦がB-29に向かって急上昇を始めた。

「ふざけやがって! 原子爆弾という悪魔の兵器を広島に落とされてたまるか!」 そのパイロットは怒鳴りながら、さらに上昇を続ける。

 その声を聞いたシャオンが、「急上昇を始めた機のパイロットは酒井中尉デス。無謀デス。撃ち落されマス」 

「何をするんだ?酒井中尉。ゼロ戦でB-29に立ち向かうのは無理だ」 平田艦長以下、”いずも”の乗組員全員が呆然とモニターに映る酒井機を心配そうに見つめている。

 酒井機は上昇しながらB-29に向けて20ミリ機関砲を放つのだが、全く効果はない。

 B-29には機体の上部、下部,尾部、に合わせて5か所に機関銃を装備していて、上にいるB-29からすれば、上昇してくるゼロ戦は格好の餌食だ。 当然の如く、エノラ・ゲイの、その下部の2か所から酒井機に向けて銃撃が始まった。それだけでも、酒井機を撃ち落すのは十分なのに、他の2機もそれに続いて銃撃を始めたものだからひとたまりもない。

「あ~!」 ”いずも”の乗組員全員が悲鳴を上げた中、酒井機は白煙を残し、瀬戸内海の海面めがけ墜落していった。

 酒井機が海面に水柱を立てたとき、リトルボーイが炸裂し、まるで太陽が広島に落ちたかと思うくらいの閃光が走り、

 しばらくして、ド~ンという内臓に響くような重低音と共に、ものすごい衝撃が ”いずも”と空中の戦闘機を襲った。のちの人は原子爆弾をピカドンと呼んだが言い得て妙だ。

 各機はバランスを崩しながらもなんとか体勢を立て直し、2機の魚雷装着機は相変わらずF-35Bのスキを狙って魚雷を発射しようとするが、どうにもうまくいかない。

「シャオン。被害は?」

「はい。大丈夫デス。飛んでるF-35Bにも被害はありまセン」

「そうか。それはよかった」

 そして、モニターには人類史上初の原子爆弾がつくったキノコ雲が不気味にそびえ、その姿をますます膨張させている。 その熱い雲の下では・・。

 後日談だが、真下にいた人は骨まで蒸発して、完全に消滅してしまったとのことだ。

 史実のむごたらしさに、ただ心を痛めるしかない。

 ”いずも”の乗組員全員、日本人もアメリカ人も、本来の目的は、この惨状を阻止するためにやって来たのだが、未来と過去とを天秤にかけ、未来を選んだ結果が、この地獄を出現させたのだ。しかし、やむおえない選択だった。

 目の前の苦しむ同胞を救えず、ただ傍観するしかないとは・・。乗組員の中には嗚咽する者もいる。

 マイクの、アメリカの過去を美化するという目論見は、無残にも失敗に終わった。

 その時、シャオンが張り叫ぶ!

「隼1機が ”いずも”に向かって急降下してきマス。ぶつかりマス」 

「何! この日本艦に対して特攻する気か!全員身を守れ!」

 ”いずも”には艦首右舷に20ミリ機関砲が装備されていて、その特攻機を撃ち落すのは容易だが、もちろん、そうしないし、する気も無い。

「皆!伏せろ!」 平田艦長が叫んだ直後、隼はブリッジの根本に激突した。爆弾を装着していないとはいえ、その衝撃はかなりのものだった。

 F-35Bの2機はそれを見て動揺したのか、とうとうゼロ戦にスキを与えてしまい、ゼロ戦の2機がほぼ同時に魚雷を発射した。

 魚雷2発のうち1っ発はあきらかに外れた方向に行ってしまい問題なかったが、もう1っ発は ”いずも”にまっすぐ向かって行く。

「しまった」 F-35Bのパイロットは慌てて、その魚雷をミサイルで破壊しようとしたが、それは不可能だ。水中のものにはロックオンできない。

 思わず、魚雷に向かって銃撃を始めたが、水深40~50メートルまで沈降する魚雷には全く効果はない。

 誰の目にも魚雷は避けられないということが明らかになった。

 ”いずも”の艦内に警報が鳴り響く。

「身を守れ~!」 衝撃に備えて、皆、何かにしがみつく。

 ド、ド~ン! ”いずも”の右舷に命中した魚雷は、ものすごい水柱を上げ、その爆発の衝撃で”いずも”は深刻な被害を被ってしまった。

 船体が、若干ではあるが傾いたのだ。

 それが合図かのように、10機のうち2機を失った日本機は去っていった。 彼らは墜落した酒井機を捜索したい気持ちは山々だが、ゼロ戦の燃料が尽き始めていたので泣く泣く帰っていったのだ。

「何てことだ。これではF-35Bの着艦は無理だ」

 ”いずも”は大きく傾いたとはいえ航行は可能だった。が、F-35Bが着艦することは不可能だ。傾いた甲板に無理に降りれば海上に滑り落ちてしまう。

「みんな、大丈夫か、ケガはないか? シャオン。船体の被害状況を教えてくれ!」

「・・・・」 平田艦長が呼びかけても返事が返ってこない。

「おい、どうした? シャ・・」

 コントロールパネルのシャオンのLEDが一つずつ消えてゆく。

「ど、どうした!大変だ。エイハブ!エイハブ来てくれ」

 駆けつけてきたエイハブとマイクはコントロールパネルを見て愕然とした。

「・・故障した・・。今の衝撃で回路に異常が生じたのかも知れない」 

 マイクはびっくりして、「何だと! 故障しただと。 だったら、エイハブ修理してくれ。君が設計したんだから容易だろ」

「いや、マイク。設計はしたが、実際に組み立てたのは現場の技術者や作業員だ。私には無理だ」

「F-35Bが降りられないじゃないか。燃料がもたん」 スチュアート大佐は上空の2人のアメリカ人パイロットを心配している。

「やむおえない。陸に降ろすか」

「それはダメだ。発見されたらアメリカ人はすぐ殺されてしまうぞ」

 1945年の戦時中なのだから、当然そうなるだろう。

 平田艦長がそう言うと、皆返す言葉が無く途方に暮れてしまった。

 上空の、2機のF-35Bのアメリカ人パイロットはもっと途方に暮れていた。

 それよりもっと深刻なことは2020年に戻れないということだ。




    ➆ バックアップ  に続く




 












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