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時空空母”いずも”発進!  作者: 平谷 口(ひらたに こう)
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 自由の女神

2020年に戻った”いずも”だが、そこは違った世界だった。

 

 乗組員全員が集められた。平田艦長やスチュアート大佐などの上層部の連中とマイク、エイハブが前にいる。

 今回のミッションが終了したことを皆に告げるのだ。

「みんな!ご苦労だった。我々のやるべきことは全て終わった。これもみんなのおかげだ。感謝する。広島と長崎の惨禍は史実から消えた。何十万という市民を我々は救ったのだ。誇りに

思おう」

 平田艦長の労いの言葉の後、スチュアート大佐などアメリカ人がそれぞれ言葉を述べた。もちろんマイクとエイハブも、彼らに続いて乗組員全員に大げさなくらいに感謝の意を表した。特にマイクは心の底から喜び、涙さえこぼれそうだ。今回のミッションの発案者だから当然だろう。

「さあ、2020年に帰ろう!」

 皆が笑顔で、「お~!」 と叫んだあと拍手がわき起こり、お互い握手をしたり肩をたたきあったり、心はすでに2020年にタイムスリップしている。

「よし! 全員持ち場に戻れ」

 全員嬉々としてそれぞれの持ち場に散った。

 平田艦長が酒井三郎中尉に近づき、

「お別れです。広島に寄ってあなたを降ろしますのでご安心下さい。短い間でしたが、あなたのような英雄にお目にかかれて光栄です。今後のご武運を皆で祈っております」

 酒井は神妙な顔つきになって、

「シャオンに聞きましたよ。6日後に終戦するんでしょう。ご武運もないもんだ」

「ご家族のもとにお送りします。喜ばれますよ。元気な顔を見せてあげて下さい」

 酒井は、直接それにはこたえず、

「”いずも”という摩訶不思議な空母によって、未来を少しだけ見させてもらった・・。はっきり聞こう。負けたんだな。いや、分かってる。ただ、帝国軍人として自分の口からは言えなかった」

 平田艦長は、「ええ」 としか言えない。

「そうか・・」 と、小さく呟いて、しばらく天を仰いだ。

 そして、その後平田艦長の顔を見据え、

「陛下は、天皇陛下はどうなった?」

「ご心配なく。1989年までご存命でした」

「そうか。それはよかった」

 もし陛下の身に何かあったら後に続こうとする軍人は多かった。酒井もその1人である。

「あなた方は、未来というものの片鱗を私に見せ、散々好奇心に火をつけたあげく、じゃ、さようなら。それはないだろう」

「酒井中尉、何をおっしゃりたいんでしょう?」

「私もあなたがと一緒に連れてってほしい。未来へ」

「そ、それはだめです。あなたはこの時代の人ですよ。家族もおられるんだし・・。我々は2020年に戻ったら、このチームも解散します。そうしたら、あなたをこの時代に戻すことが出来なくなります」

「多くの戦友が死んだ。彼らの死が無駄だったのか、それとも・・」

 酒井はちょっと声を詰まらせて、言葉を飲んだ後、

「後世の人がどんな日本を造ったのか見てみたい。知りたい。もし、立派な国に復興してれば戦友の死も無駄ではないと思うが・・。そうでなければ彼らも浮かばれないだろう」

 平田艦長は黙って聞いている。

「艦長、お願いだ。あなた方と一緒に未来に連れてってくれ。日本の行く末を確かめるのは私の責務だ。自分だけ家族のもとに帰るなんて、とても出来ない」

 平田艦長は心の中でこう思った。説得しても無駄だろう。帝国軍人とはこういうものだ。自分も軍人のはしくれとして、酒井中尉の気持ちは理解できる・・と。

「わかりました。皆には事後承諾ということにしましょう」

「あ、ありがとう!平田艦長、ありがとう」

 しかし、酒井は未来を知ることに不安もあった。

「シャオン。 2020年にタイムスリプする。場所はマンハッタンだ。そこでアメリカ人スタッフを降ろす」

「了解!しまシタ」

 平田艦長は医務員の染田に、

「酒井中尉殿を医務室に戻して、体の具合を診てあげなさい。見たところCTスキャンまでする必要はないかな? じゃ、よろしく」

 染田は酒井が座っている車椅子を押して始めた。2人のやり取りを全て聞いていた染田は内心驚いたが、あえて何も言わない。

しばらく無言のまま医務室に向かっていたとき酒井が声を発した。

「染田さん」

「はい。なんでしょう?」

「CTスキャンとは何ですか?」

 また説明に窮してしまった染田であった・・。


 コントロール室ではタイムスリっプに向けて全員が緊張している。

 全ての時空デバイスがONにされ、ディスプレイや、星の数を上回るとも思えるLEDインジケーターが輝度を上げ猛烈に点滅し始めた。

 タイムマシンの内部にどんどんエネルギーが蓄積される。

 ”いずも”全体が低く唸り始め、エネルギーがマックスになった瞬間、”いずも”は1945年から消えた。


”いずも”は自由の女神があるリバティー島の近くに出現した。この時代は、もちろん日米は敵ではなく強固な同盟国だ。

「さあ、2020年に着いた・・」 スチュアート大佐が言い終わらないうちにアメリカ人スタッフの1人が人差し指を出し、

「た、大佐!あ、あれを・・」

「何だ? どうした」 

 指の先を見ると上半身の無い自由の女神があった。

 全員言葉が出ない。呆然と見つめている。

 医務室では酒井がプロジェクターの大型画面でこの光景を見ていた。彼は上半身の無い自由の女神よりも、その後ろにある摩天楼に度肝を抜かれた。

「・・」 酒井は違った意味で、これまた言葉が出ない。




      ➅ 未来VS過去 へ続く

 








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