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時空空母”いずも”発進!  作者: 平谷 口(ひらたに こう)
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リトルボーイ投下!

B-29エノラゲイがウラン型原爆リトルボーイを積んで広島上空にやって来た。原爆投下を阻止するために2機のB-35Bが、ゼロ戦4機に囲まれながらも”いずも”から飛び立つ。

 

夜12時を過ぎて6日になった。マイクとエイハブは寝付かれず、スコッチをチビチビやりながら話し込んでいる。

 エイハブが、「さっき、21時ころB-29が広島上空に来たね。明日の広島の天候を探りに来た偵察機だ」

 若干頬を赤くしたマイクが、「うん、明日は晴と報告したはずだ。申し訳ないが、その報告を我々が無駄にする」 

 さらにスコッチに口を付けた後、「もうすぐ1時か・・。そろそろエノラゲイが、原爆を積んでテニアン島を離陸する頃だな。テニアンから広島まで7時間だ。彼らに無駄足を踏ませて申し訳ないが、リトルボーイの広島投下は絶対に阻止する」

「明日の夜は皆で祝杯をあげたいね。今夜は二人で前祝いだ」

マイクは、窓から真っ暗な外を感慨深そうに眺めながら、

「我がアメリカ軍のミッションを妨害しての祝いか・・。不思議な気持ちだ」

「ああ、そうだな」 エイハブが大きくうなづく。

「ねえ、エイハブ。この暗闇の向こうに広島がある。人口は、たしか3~40万人だったかな。その内10万人が、ほぼ一瞬にして死んでしまう。ほとんどが赤ちゃん、女、子供、年寄などの非戦闘員だ・・」

「君は、その人たちを救おうとしてるんだ」

 ちょっと間があって、「それを言うと、私は偽善者になってしまう」

「ほ~、なぜだい?」

「私はアメリカの過去を,ただ美化したいだけのエゴイスト・・かも」

「ふむ・・」 それに対してエイハブは答えない。

 その後、しばらくの間沈黙が続いた。

 エイハブが、「そろそろ寝たらどうだい。明日は重大な日だ。いや、もう今日か。体調をよくしとこう」

「そうだな」

「おやすみ」 エイハブは自分の部屋に戻っていった。

午前4時過ぎには夜が白み始める。人類史上初の原爆が投下されようとしている朝だ。ウラニウム型の原爆リトルボーイが8時15分に広島上空600メートルで炸裂し、4000度の熱で市民10万人を焼き殺す。

 お互い殺しあう戦争とはいえ、この惨状は、まるで悪魔の所業としか思えない。

 時空空母”いずも”は、歴史からこの地獄を消すことができるのだろうか・・。


 マイクとエイハブは短い睡眠時間の後、乗組員たちと最終打ち合わせをしていた。艦内も艦上も緊張感が漂う。

「シャオン、エノラゲイを追っててくれ」 アメリカ海軍から派遣されたスチュワート大佐が言った。

「ハイ。エノラゲイハ 真ッスグ コチラニ向カッテマス。後1時間12分デ 広島上空ニ到達シマス」

 飛行甲板では2機のF-35Bがいつでも発進できる状態だ。パイロットは2人とも日本人である。

 F-35Bは垂直離陸できるが、今回は普通に滑走して飛び立つ。燃料節約のためだ。

 レーダー士から連絡が入った。航空機が5機こちらに向かっているとのこと。

 スチュアート大佐が、「機種は?」

 それにはシャオンが答える、「ゼロ線52型デス」

「まずいな。F-35Bを見られてしまう。まさか旭日旗を掲げてるこの空母を攻撃しに来たわけではあるまいが・・。漁船が連絡したのかな?」

「魚雷モ爆弾モ装着シテマセン」

「ふむ。敵意はないようだな。私たち外国人がいるのを見られたらまずい。中に入ろう。念のためだ、全員警戒態勢をとれ。平田艦長、後はよろしく」

「おまかせを」

「マイク、さっ、中へ入ろう」

「ゼロ戦が目の前を飛ぶなんて。じっくり見てみたいな」

「そんなこと言ってる場合か」 エイハブはマイクをせかして中に入った。

 甲板には平田艦長以下日本人だけになったが、その中、2機のF-35Bがスタンバイしている。ゼロ戦のパイロットがそれを見てどう思うだろうか。

 当時、ジェットエンジンやロケットエンジンは知られていた。実際、純国産ジェットエンジンの橘花や、ロケットエンジンの桜花という特攻ロケット機があり、桜花は特攻機として悲しい歴史を持っている。

「何とかごまかせる。それよりエノラゲイが迫っているのが心配だ。F-35Bはゼロ戦の目の前で発艦することになるが・・。仕方あるまい」

 ”いずも”に接近した5機のゼロ戦はまとわりつくように”いずも”を観察していた。

 ゼロ戦から問い合わせがきた、「貴艦はどの部隊に所属するか? 初めて見る妙な航空母艦だな。2機の航空機も変わった形をしている」

「こちらは空母”いずも”。秘密行動ゆえに詳細は言えない。速やかに我が艦より離れたい」

「本部に問い合わせる」 無線の通信範囲外なので1機が本部のある広島に飛んで行った。残り4機はピタッと”いずも”の左右に張り付いている。

 平田艦長は時計を見て、「そろそろ時間だ。ゼロ戦にかまってる場合じゃない、無視していいだろう」

 甲板員がゴーサインを出し、2機のF-35Bのエンジンに火が入った。

 凄まじい轟音を発し、強烈な加速で飛び上がった。それを見たゼロ戦のパイロットは度肝を抜かれただろう。4機はF-35Bの後を追おうとしたが、それは無理だ。ゼロ戦の最高速度は550km/hである。音速のF-35Bはあっという間に見えなくなった。

 そんな中、エノラゲイと随伴機2機が刻一刻と広島に迫っている。エノラゲイが広島上空でリトルボーイを機体から離した瞬間に、F-35Bは最接近し、リトルボーイにロックオンするのだ。 F-35Bには2発の対空ミサイルが装着できるので、計4発のミサイルがリトルボーイを破壊する。

 リトルボーイは上空9400mでエノラゲイより落とされ43秒後、高度600mで炸裂する。2機のF-35Bはこの43秒の間にロックオンし、ミサイルを発射する。もっとも10秒もあれば十分だが・・。

「見えたぞ」 F-35Bのパイロットの1人が叫んだ。

「ふむ。計3機だな。先頭がエノラゲイだ。B-29に自分の母親の名前をつけるなんて、ティベッツってやつはふざけた野郎だ」

「エノラゲイ側もこちらを確認したはずだ。銃撃してきてもあわてるな。我々のスピードでは、弾は当たりはしない」

 一方、エノラゲイの機内では、「後方に戦闘機と思しきものが2機付いてきてます。妙です。プロペラがありません。それに、我々と同じ高度10000m近くを飛んでるなんて、信じられません」

「ジェット機か? 日本軍も研究してるとは聞いてるが、まさか・・、実用化してるのか。確かに信じられんな。その2機がどういう行動にでるか分からんが、我々はリトルボーイ投下というミッションを実行するのみだ」

 遂に目標地点の広島上空に到達した。

 ティベッツ機長の声が飛ぶ、「リトルボーイ投下せよ!」

 B-29の下部の格納庫が開き、ウラン型原子爆弾リトルボーイは広島市民40万人に向かって落下し始めた。

 リトルボーイは重さ4トンである。その重さから解放されたB-29はジャンプしたほどだ。

 それを確認した2機のF-35Bは亜音速でB-29に近づく。B-29には機体上部と下部に銃座があり、そこから12、7mm機銃が一斉にF-35Bに向かって銃撃を始めた。が、亜音速で飛ぶF-35Bには全く当たりはしない。

「ロックオン!ミサイル発射!」4発のミサイルがリトルボーイに吸い込まれる。

 数秒後、それら4発のミサイルは全て命中し、リトルボーイは粉砕され破片だけが落下していった。10万人以上の死者を出すはずの歴史が、この瞬間変わった、はずだ。

 2機のF-35Bは、それを見届けると、すぐさま操縦桿を”いずも”に向けた。

 B29の機内では、「何があったんだ?一瞬の間にリトルボーイが破壊されたぞ。どうなってるんだ」

 なすすべのない3機はテニアン基地に帰るしかない。

「何て報告すればよいか・・。信じてくれるかどうか」ティベッツ機長が1人ごとのようにいう。

 他の乗員が、「ミッションは失敗したってことか・・。なんてことだ。それにしても、あの戦闘機。到底信じられない。日本が、あのようなものを、まさか。ドイツでもありえない」

 当時、ミサイルと呼べるものは存在していなかった。ドイツのVロケットがミサイルといえないこともないが、F35Bの放った高性能ミサイルとは程遠い。

 F-35B2機が”いずも”に近づくと、4機のゼロ戦がまだ纏わりついている。その中F-35Bは無事着艦した。

 そこへ、”いずも”という得体の知れない空母についての情報確認のために離れていた1機が戻ってきた。

 そんなことはおかまいなしに平田艦長が、「よし、すぐ8月9日の長崎にタイムスリプする。全員スタンバイせよ!」

 マイクがエイハブに、「広島での原爆投下に失敗した米軍はすんなり長崎へと向かうだろうか? 当然今回の出来事を調査するはずだ。中止するかもしれない」

「そうだな。だが、調査しても答えは出まい。とにかく、長崎に行けば分かる」

 通信士から連絡が入った。「ゼロ戦からです。そちらへ繋ぎます」

 スチュアート大佐が、「全艦に聞こえるようにしてくれ」

 ゼロ戦の、おそらく隊長であろうパイロットから図太い声で、「大本営に問い合わせたら、そちらの”いずも”という空母は存在しないとのこと。しかし、秘密作戦というなら大本営も我々に真実をおしえないと思われる。確認のため着艦したい。許可されよ」

「お断りする。当艦はこれより作戦遂行のために移動する。あなた方は速やかに所属基地に戻られよ」

「彼らを無視していい。シャオン タイムスリプしろ。時間の無駄だ」

 スチュアート大佐の発した英語をゼロ戦パイロットに聞かれた。

「今の英語は何だ? 貴様ら、いったい何者だ? 怪しい」

 他のゼロ戦4機にむかって、「強制着艦するぞ。俺に続け」空母に着艦するには非常に高度な技術を要する。フックを確実にワイヤーに引っ掛けなければならない。ましてや”いずも”はジェット戦闘機用である。ゼロ戦では仕様が異なる。誘導してくれる甲板員もいない。

 難しい着艦というのはゼロ戦パイロット全員が理解している。

 隊長機が最初に着艦を試みる。が、やはり無謀な行為だった。”いずも”の甲板上でつんのめり、ひっくり返ってしまったのだ。と、その瞬間、4機のゼロ戦を後に”いずも”は忽然とその場から姿を消した。



  ③ 酒井三郎中尉  にへつづく










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