学園長
「すいません玲夏さん………案内してもらって本当にすいません!」
「良いよ用事があるのは私だし、気にしないでよ、ね?あっ!あそこ、その扉の先が学園長室だよ」
その後、勢い良く教室を飛び出した詩音は、学園長室が分からずに迷子になりかけた。すぐさま彼女の後を追いかけたおかげか、労せずに見つけることが出来たのだった。
詩音はそのことに対し反省しているようで、もう二度と同じ過ちをするまいと心に堅く誓っているみたいだ。
あまりに重過ぎるのでやめてほしいが、先程言っても全く聴いてくれなかった。なので、時間が徐々にたち詩音の記憶の中から忘れ去られるように祈っておいた。
アーメン、彼女に神の導きが在りますように。
そこまで私は熱心な信者ではないが、勘違いだったとしても人の事を考えて行動してくれたのだ。きっと御利益があるに違いなかった。
学園長室と描かれたプレートを見て、確認した私は詩音の方へと向き直し言った。
「えっと、とりあえず詩音………色々と驚くかもしれないけど、落ち着いてね?」
「えっ?はい?」
忠告というか?驚くであろう事があるので、詩音にはそう伝えておいた。それこそ色々な意味であった為にだ。
このまま此処で何かしていても意味がないので早速、学園長室の扉の取手に手を掛けた。
最低三回のノックをした後、部屋の中から了承の返事が返ってきたので開けた。
「失礼しま………す?…………」
とりあえず、ゆっくりとカチャッ、という音を立ててから扉を閉めた。考えてみた、もしもこの光景を今から詩音に見せても大丈夫だろうかと………
何か失ってしまうものがないか、だが考えば考えるほどに本人の自業自得なのではないかと思った。
私と関係ないんじゃないかと考えてしまう。
まぁー、実際に?私に関係ないから失うことはないんだけど!
「………玲夏さん。考え事ですか?後、入らなくて問題ないんですか?」
「えっ?あー、うん!入ろうか。あと詩音、気を強く持って」
「えっ?」
やはり、どうゆうことかわからないのだろう詩音は首を傾げていた。わからなくていい何せ、すぐに言った意味が分かるのだ。
私は扉を開け部屋の中へと入った。
「「入学おめでとうー!!」」
「「…………」」
部屋の中に入ると同時に鳴らされるクラッカーの炸裂音、降りかかる紙テープ、紙ふぶきに理解が出来ないだろう。それもそのはず、部屋の中に居た彼ら二人は入学を祝いたいが為にこの学園長室に呼んだのであった。
部屋の中に居た彼ら二人はそれぞれ、鼻メガネをつけて待ち構えていた。ひとりは高齢の男性いかにも魔法使いと言った、出で立ちでローブを纏っていた。さらにすぐ側には、自身の身長はある長い杖を立て掛けていた。
その老人が鼻メガネを外し、こちらを見て一言だけ放った。
「良く来たのぅー玲夏ちゃん、元気にしとったか?」
「学園長?何してるんですか?」
「ほほっ、もちろんサプライズじゃよ、喜んでもらえたかの?」
「はぁー」
さすがに溜息を吐き出し呆れてしまった。なにせ学園長ともあろう人が鼻メガネをつけて、クラッカーを鳴らすような人物だと詩音に知られてしまった。
問題こそはないが、世間では威厳がある人だと知られていた。これではイメージが壊れかねなかった。
「あの、玲夏さん、学園長とはどうゆう関係で?」
「あぁ、えっと?」
どうやら一番、理解出来ていない詩音は痺れを切らし関係を聞いてきた。こうゆう場合は何て言おうか?そう考えていると………
「玲夏ちゃん、いつものように、おじいちゃんと呼んで構わんぞ?」
「えっ?おじいちゃん?………玲夏さん、学園長とは祖父と孫の関係だったんですか?驚きました!」
学園長あらため、おじいちゃんは私の祖父だ!
世間では、数多くの人達に知られている有名人で在ると同時に、大層な肩書きを持った人物であるのだ。
魔法省公認、序列第六位、千雷の賢者レイナード・フォン・オーメンであった。