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転生少女は愛されている  作者: 海雪
第2章 魔王襲来
38/285

正体



 学園都市・東門



 未だに魔物を相手にしているが、倒しきれていなかった。なにせ戦闘をこなせる者が此処では皆無に等しい為に、全てが後手に回っていたからだ。



 このままでは城壁は破壊され、魔物たちが街の中へと侵入してしまうのは時間の問題だ。もしそうなれば多くの人たちが、魔物の犠牲になってしまうのは明らかであり応援が必要だった。



 だがその時、魔物たちは城壁を攻撃する手を一斉に止めた。森の奥を、(きた)る存在を見定めるかのように魔物たちは身構え警戒している。その場で戦っていた者たちも何事か気になり、同様に森へと視線を移した。




「………何だ? 何が来るんだよ?」



「分からん、もしかしたら………新たな魔物じゃ?」



「んっ? ………お、おい⁉︎ あれを見ろ⁉︎ 蛇だ!」




 最初に驚き、叫んだ人物の言う通り森の奥から蛇型の魔物がやって来る。少しずつ近づいてきているのにつれて、その全体像が分かっていく。それは人どころか強大な魔物ですら、太刀打ち出来ないであろう巨大な蛇がその姿を現した。




「あぁ、終わった………あんな魔物に対抗出来ない、どうするんだよ」



「まさか魔王⁉︎ 森から出てきたんだ! に、逃げろ!」




 巨大な蛇が出て来た瞬間に、その存在を見て絶望し逃げ出そうとするがもう遅い。本来であれば危険を察して、すぐにでもその場から逃げ出すべきだったのだ。蛇はその体躯に見合った巨大な顎を開き、一人の人物へと彗星の如き速さで襲いかかった。




「うっ………………あ、あれ? 何もない? 」




 襲われたと思った刹那、必死に目を閉じてその恐怖の瞬間を耐えていた。だが、何も起こらないと疑問に思い恐る恐る目を開けた。その人物は周囲の状況を確認してからようやく気づいたのだ。



 あの巨大な蛇は、すぐ近くにいた魔物を標的にしていとも簡単に飲み込んでいた。さらに尻尾を巧みに動かしては、魔物を薙ぎ払い押し潰していく。あまりに圧倒的な強さに、全員はその場を動かずに見惚れていた。



 魔物たちは仲間の弔いと言わんばかりに、巨大な蛇を相手に攻撃するが、硬い鱗のせいかダメージを与えられていない。しかも痛痒を感じていないのか見向きさえしていないのだ。



 たった一体の魔物によって、戦局が塗り替えられていく状況に誰もが惚けていた。そんな時、一人の人物が巨大な蛇の頭部を指差し叫んだ。




「お、おい! あれを見ろ、誰か乗っているぞ!」



「そんな馬鹿な! あり得ないだろ、あれだけの強大な魔物を使役しているなんて! 」



「………お、俺も見たぞ! あの蛇の頭の上に二人いたんだ! 」




 戦場にいた全員は、倒すべき魔物をそっちのけで確認し始める。そして彼らは巨大な蛇の頭部にいる謎の二人組を見て確信した。




「「「俺たち、必要じゃなくない?」」」
























「召喚………アトラ、ミューダ」




 私は右手に魔力を送り、召喚したい存在を思い浮かべる。昔から契約を結んで使役している、二体の召喚獣をこの場に呼び出したのだ。



 魔法陣が現れて光輝いた後に呼び出されたのは、巨大な蛇の魔物と黒いローブに身を包んだ小柄な存在だった。突然、その内の一体である黒いローブの存在が私に突進して来たのだ。




「あっ、母様〜!!」



「グヘっ!………お、お腹が!」




 黒いローブを身に纏った存在は、少女のような声音をしている。彼女は私に抱きついたまま離れず、頭を撫でて欲しそうに擦り擦りとしてきていた。




「ひ、久しぶり、アトラ………」



「えへへ、久しぶり母様! 全然呼んでくれないんだもん、アトラから逢いに行こうと思ってた!」



「それはダメ! ところで………あの人は元気?」



「んっ? あの人?………あぁ、ババアか」



「………」




 私は未だにこの子の性格が直っていない事に頭を抱えた。"アトラ"と名付けた黒いローブをその身に纏った少女は、アラクネと呼ばれる魔物だった。



 見た目こそローブから覗く顔は、普通の可愛い少女に見えるが。本来の姿は上半身が美しい女性、下半身が蜘蛛の胴体をしている魔物だ。



 数が少ない為か、生態については分かっていない事が多く。どのような魔物、存在かは大雑把にしか分からない。だが力が強く、強力な毒を持ち、糸を自由自在に扱うのに加えて、一度でも狙った獲物、存在は何処までも追いかけるとしか分かっていなかった。



 さらにアトラが、私の事を母親のように慕っているのは彼女の出自に関係していた。"魔生卵(ませいらん)"、と呼ばれる迷宮からしか発見されない貴重な卵から生まれた。



 魔生卵を孵化させる条件は、魔力を送る事だけだった。そのせいか、刷り込みの要領で魔力を覚え、親を識別することが出来た。アトラが私を母と呼ぶのはその為だ。




「………はぁー、あの人をそんな風に呼ぶなんてね、まあ良いや、しょうがない。それよりも………」



「………シュルルル」



「ミューダも久しぶり、元気にしてた? また大きくなっちゃって!」




 舌をチロチロと出しながら、近づいてきたもう一体の頭を撫でてやる。彼女は見た目通りの巨大な蛇、"世界蛇(ヨルムンガンド)"と思われる魔物だ。



 同個体と思われる魔物はいない為に文献から、近い特徴を持った魔物として種族名をそのように読んでいた。



 アトラと同様に人の姿に成れるが、元の身体を好んでいる為に滅多な事で姿を変えなかった。



 お願いしたり、特定の場所であれば人型へと姿を変えてくれるが、やはり彼女は人の姿が苦手らしい。ミューダが魔生卵から生まれたかは分かっていない、アトラが生まれた後に父さんが連れてきた為だ。




「アトラ、ミューダ………力を貸して」


 



 

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