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転生少女は愛されている  作者: 海雪
第4章 序列会議
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昏睡の原因



 研究所近くに設営された軍のテント、上官となる者たちが揃っては各々頭を抱えていた。これからどの様に動くべきか話す者、入った報告に耳を疑い驚かずにはいられない者、黙り込んでは悩む者達など様々だ。その中でも成り行きを見守っていた責任者らしき人物は、彼等が落ち着くのを待った後に口を開く。



「まさかこんな事になるとはな。それでコラン大佐の容態は?」



 向けられた視線の先には、コランと同様に研究所へ潜入していたミランダが椅子へと座っていた。一気に全員の興味が注がれたのもあり反射的に背筋を伸ばす。表情からは萎縮してしまう程の圧を感じさせてしまう軍の上官達だが、かなり心配している様子が見受けられる。



 それもその筈、交戦した敵であるレヴァンにより返り討ちに遭ってしまった。しかも意識不明という最悪とも言える状態でだ。その知らせを受け取るまで、此処に居る者達は誰一人としてコランが病院に搬送される事態になるとは思わなかった。



 中には、作戦を中止したミランダを心の中で責めているだろう。そんな状況に晒されても彼女は気にせず、ただひと言「大丈夫です」とその場に居る者達へと告げた。その言葉を聞くや否や表情が少し和らいだ気がしたが、続く言葉からまたもや顔を引き締める。



「………ですが、意識の方だけは依然として戻りません。身体に対し怪我を負わせた訳ではない事は確認済みです。問題等も今は探っている状況で、いつ頃に目覚めるかは………」



 一瞬だけぬか喜びさせた後にもたらされた悲報、そこから分かる事はとんでもない事態に陥っているという事だけ。「分からない」そう聞こえた彼等はまたしても頭を抱えてしまう。なにせ、病院へ担ぎ込まれたのは軍でもかなり上位の実力を持つコラン大佐だからだ。



 鉄壁と呼ばれ、二桁に就く実力がある通り彼が参戦した戦闘で自身を含め、隊員が大怪我を負って病院に運ばれていく状況は皆無であった。にも関わらず、まさか本人が怪我の有る無し問わずして病院へ運ばれていくとは誰も思わないだろう。




「とりあえず研究所内の制圧は完了、配置されていたゴーレム等の排除は問題なし。逃げ道となるルートも確実に塞いでいる」



「こればっかりは残念だが、我々は現場に居る以上、前を見なければならない。持ち場を離れるのは彼を愚弄してしまう。朗報を齎らすのが最優先だな」



「なら今一番、危惧すべき問題は………」




 厄介となる敵の存在だろう。二桁とやり合って打ち勝つだけの実力を持つ存在が居る以上、次の一手を考えなければならない。とは言え、対処出来るだけの人材はすぐに派遣出来ず。かと言って事を急いでは返り討ちに遭うだけ。それこそ今行なえるのは軍人達を研究所内へ突入させる準備のみだろう。



 それに今回の救出作戦に参加している序列第二位と八位、その2人ならば問題なく目的を成し遂げられるだろうと考える。彼等の帰還なくして作戦を変更する事は当然出来ない。もしも外部の方で問題が発生してしまえば………



「会議中すみません。失礼します!」



 突然駆け込んで来た1人の軍人に全員が注目し視線を次々に向けていく。一瞬にして先程の議題が頭からは消え、聞く姿勢へと移っているのが分かる程に真剣な表情を彼等は浮かべていた。最も近場に居た上官の一人が慌てふためいている彼へと尋ねる。




「何があった?」



「ほ、包囲していた内の一班との定期連絡が途絶えました」



「何っ!? そんな馬鹿な!?」




 またもやテント内に居る者達が動揺しているのが伝わってくる。彼等が驚くのも無理はない。無事かどうかの確認も併せて行なっている定期連絡が途絶える事は、全滅するのと同時に犯人達が内側から脱出した、もしくは外部から強敵が侵入して来たと危惧すべき出来事だ。



 一桁と比べれば雑兵の寄せ集めと言われてしまうが、かなりの訓練を潜り抜けて自身を磨いてきた軍人達である。軍事基地に残してきた者も相当な実力者だが、此処で研究所を見張る軍人は歴戦の猛者ばかりだ。だからこそ、何かを察した後に責任者は呟く様にして命令を下す。



「………近場の班から数名ずつ選出し現場へと急ぐよう伝えろ。負傷者たちをすぐに病院へ、急げ!」






















「こいつを相手に立ち回るのは、コランさんでも厳しいかなぁ」



 相手の心臓を抉る様にして槍を突き刺す。ドラゴンゾンビを防御用に呼び出しているのもあってか思う様に攻撃が通らない。鉄同士を打ち合わせた様に火花を散らすだけで、傷跡さえつかない程の頑丈さを見せ付けてきた。



 並大抵の攻撃どころか、上級の魔法さえ平気で防いできてもおかしくないと考え一旦は後方へと退がる。取った行動で召喚のスペースを確保出来たのか、頭から順に腕や胴体が空間の歪みから出て来た。身体の一部だけでも巨躯を誇っているが、全身が現れたことで改めて巨大な魔物だと分かる。



「ドラゴンゾンビ………大抵は他者に対しての怨みから暴走して、後に危険な魔物として討伐されるけど………前の奴と同じで利口そうだな」



 赤い眼窩からは意思が感じ取れる。かなり特殊な魔物でなければ暴走状態のままだろう。しかしながら呼び出した魔物 "ドラゴンゾンビ" は独自の意思を持っている様に見え、完全に相手の制御下に置かれている様子であった。



「殺すつもりでやれ。相手は魔法省が認めた第二位だ、手加減するな」



 自身の召喚獣として使役するドラゴンゾンビへと号令を掛け、抹殺する様にと伝えた。そして今の言葉を理解したかのように、周囲の物を容易に吹っ飛ばしてしまう程の咆哮を放った後に動き始める。口内へとエネルギーを溜め込み始め、此方を狙い撃とうとしていた。



 その次の瞬間、此方の体制を崩すかのように頭上から巨大な何かが降ってくる。咄嗟に避けた後の視線の先には、ドラゴンゾンビの腕が先程まで居た場所を踏み潰していた。そして狙い通りにいったのか、息吹(ブレス)の範囲内に収まり硬直したところを狙われる結果に………



「………出来れば戦わずして仲間へと誘えれば良かったが、そう簡単にはいかないな」



 土埃や息吹きにより視界は閉ざされ対象を見失う。口にした通り自身の目的、願いを成就するには彼女が必要不可欠であった。だからこそジョーカーが代わりを務め仲間へと誘ったのだが、それが間違いだったとレヴァンは考え直す。



「全く、最初からこうなる様に仕組んでいたな。ジョーカー」



 大鎌を構え直し力強く握る。次の瞬間、一気に視界を覆っていた土埃等が晴れ、息吹きを浴びせ掛けた対象の姿を眼にする。だが、それと同時に目に入ったモノにレヴァンは息を飲み、後悔したかの様な表情を思わず浮かべていた。

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