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転生少女は愛されている  作者: 海雪
第1章 少女と魔法
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事件



 お昼頃、ちょうど真上を指す秒針によって時刻を知らせるが如きニュースが流れてきた。



 テレビから流れる音と映像に気になった者は足を止めて見入っていた。




『………つい先程、事件の現場である学園都市のショッピングモールに人質とともに立て篭もる犯人グループから、身代金の要求が来ています。それに対する警察等の答えとして、このように………』




 怖い話だ、なにせ魔法を使えるものがいる以上、対処する方法が変わってきてしまうのだ。



 対処の仕方を間違えれば、大怪我をする所ではないだろう、最悪だが亡くなってしまう者たちも出て来てしまうのだ。



 そうなれば、事件に関わった警察や軍を言及しだす者たちも出て来る。



 もちろん自分たちのせいにはされたくないだろうから、円満と言える結果を出そうとするが上手くいかないものだ。



 ニュースで得た情報を元に、周囲は巻き込まれたくはないだろうとは思っているはずだ。



 人生を一変させてしまうのが事件であり、自分自身が関われば運が悪かったなんて思えないはずだ。



 実際に私の眼にはそう写っていた。




「おい………ちゃんと用意はできているんだよな?………はぁっ⁉︎出来てないだと………時間が足りないだと?無理だな、交渉決裂だ………」

 



 犯罪者のリーダー格らしき男は通信用の魔道具、端末らしき物に向かって声を荒げ喚き散らしていた。



 推定、約十人程がヤツの仲間であるのだろう。私たちの周りを取り囲んでいる、つまり今の自分たちは人質だった。











 ショッピングモールには食事処や娯楽施設、衣料品店はたまた書店が一緒くたにされていた。



 別名、大規模商業施設と呼ばれる場所に来ていた。



 歩くたびに様々な小売店が現れては消えていく、やっと着いた掲示板前で、どのような店があるか私たちは確認していた。




「詩音はどうする?」



「まだ、決まっていないんですよね、多すぎて困っています」



「まぁ、数は多いからね………」




 モール内の案内図があるが似たような施設がいくつも並んでいた。これでは決めるのにそうとう時間がかかってしまうはずだ。



 悩んでいる所悪いが、まだ決まらない以上は問題ないと思った私は提案した。




「詩音。私行きたいところがあるんだけど良い?」



「えっ?良いですよ、どこですか?」




 了承の返事を貰った私は早速とばかりに行動に移した。



 詩音は看板である店の名を見上げ、口を開いていた。なにせ多くの人たちが入店しては帰っていくのだ。



 入店している人たちはともかく、帰っていく人たちのほとんどは店のイメージに合っている袋を提げて帰っていった。




「玲夏さん………此処は?」



「書店だけど?」




 現在、モール内で来ている場所は書店だった。詩音が首を傾げて、不思議そうにしているのはイメージと違ったことだろう。



 詩音が思ったことは、図書館のような場所だ。静かな場で、小難しいような本をよんでいる人たちが山程いる所、彼女はそう思っていそうだ。



 なにせ、詩音は育ちが良さそうな感じだった。歩く時の背筋はピンと伸び、食べる時も飲み物を飲む時も音を出していなかった。



 人によっては不快な音になるのは間違いないし、マナーや常識だと言えたが、その事に常に意識して生活するのは難しかった。



 もしかしたら、詩音は何処かの貴族ではないかとそう思った。なにせこの世界では貴族制度は廃止されていない、国にはそれぞれ町が点在しており貴族が領主を務めていた。



 だが本人は貴族ではないと否定している、私もそう思っていた。雨宮(・・)なんていう名字は貴族にはいなかったのだ。




「どの本を探しているんですか?」



「漫画や小説でもいいけど………魔法関係かな?」




 大抵はそういった本を探しに来ているが期待はしていない、知識を蓄えても実戦が無ければ魔法を使えても意味はなかった。



 早々に魔法関連のタイトルを眺め、そのコーナーを後にした。小説や漫画が置かれた場所で新刊等を見ていると詩音が言った。




「すいません、玲夏さん。少しお手洗いに行ってきます」



「んっ?分かった」




 そういった詩音は足早に去っていった。お手洗いではないだろう、彼女は自身の端末に視線を落とし内容を確認していた。



 そして書店の出入り口あたりで視線を彷徨さまよわせ、私の視界から消えていった。



 数十分後、本に夢中になっていた私の所に、誰かが近づいてくる気配に顔を上げた。




「詩音。遅かったけど、だいじょう……ぶ…だっ…た?」




 私の目の前にいたのは詩音、ではなく見知らぬ二人の人物だった。



 その内の女性は(うつむ)いて、表情を暗くしている。二十代中頃だというのに人生が終了したとでも言いたそうな表情だ。



 そして、その元凶らしき男は女性の背後で杖を突きつけていた。まるで何かあればすぐに殺してやると言いたげだった。



 もちろんそれに対して私は………











 ショッピングモールの広場にて、両方の手を後ろ手に縄でキツく縛られている上に、三十人ほどが集められていた。



 逃げ遅れた、もしくはなんらかの事情により捕まったのだろう。中には捕まってはいないが、モール内のどこかに隠れ潜んで脱出の機会を伺っている者達もいるかもしれなかった。



 私は考えた、このような人が多くいる所で戦闘を起こせば間違いなく怪我人が出てしまうと、つまり今できるのは反撃の機会を待つ事だ。



 とりあえず、此処の人質たちの中に詩音は捕まってはいないと分かったが怪我をしていないか心配になった。



 




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