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13話

一番知りたいところがやっと見れた。

単純な話、世界の要人である彼と関わりのある私は何かに狙われ、その時は命を狙われた。

いつもならSPで固めて警備が厳重だけど、その時だけわずかな時間ぽっかりと私たち2人だけ。

間に合わないと思ったのだろう彼は力を使い私を銃弾から救おうとしてくれた。

ただ加減が出来ず、力はその場で爆ぜた。相手は死んで、私も入院。重傷だったのだろう、朦朧とする中で彼の謝罪の声しか聞こえなかった。

違う。

なんて言えばいいかわからないけど、違うのよ。

起きていわなきゃ、このままの貴方は見たくない。

起きろ。私。お願いだから起きて。


「リズ?」

「フィル?」

窓から日が差している。見たところ早い朝だ。

私は夜着に着替えていて、彼も室内用の衣装になっていた。

あぁ、そうだ。

馬車に乗りすぐ、私は急な眩暈に意識を飛ばしたんだ。

力の使いすぎ、記憶の奮起、頭部への攻撃は受け入れたから影響ないだろうけど、総合的にギリギリだったのか。

「…よかった」

彼が心底安心したように囁く。声はかすれて、目に少しクマが出来てる。以前を思い出してたのだろうか。

「…私は大丈夫よ」

「うん」

「貴方は何も悪くない」

「…」

「あの時だって昨日だってそうよ」

その言葉に彼は僅かに喉を動かす。本当なら彼は思い出してほしくなかったことだろうから。

けど、私が欲しかった思い出したい記憶はここだ。彼が彼らしくいられない要因になったこと。

「…思い出した?」

「えぇ」

「僕が、君を傷つけたことも」

「違うわ」

起きてしまっただけ。

「私も貴方も、あの時のことに捕らわれすぎてるのね…」

どうしようか。

いや、まずはもう少し寝たいかな。


「フィル」

「リズ?」

あいてる方で手招きをする。

私が起きるまで手を握っていたのか、絡めていた手を外し、こちらに近づいてくる。

その首根っこに腕を回してこちらへ引きずり込んでやった。

「リズ?!」

「……もうちょっと寝たい」

「え?」

「貴方寝てないでしょう?」

「……」

肯定だ。これはわかりやすい。

「少し寝ましょう。話はそれからよ」

「え…僕は」

「聞かない。私は貴方と一緒に、ここで寝たいの」

しばらく黙った後、彼はベッドに入り込んできた。

そして抱きしめる。縋りつくに近いだろうか。久しぶりに彼ときちんと向き合った気がする。

それはもう久しぶりに。

「リズ」

「うん」

「……ありがとう」

「どういたしまして」

掠れた声で囁く彼に応える。これで謝ってきたら蹴り飛ばしてた。

彼に少しは届いたようだ。まずは寝よう。


* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *


前の世界の私はそれはもうはねっ返りの強い社会人だったわね。

そんなだから、何度もぶつかった。彼だって若くして国を背負う要人で、鼻持ちならない人間だったもの。

傍から見れば相性悪そうな私たちが、あの世界あの時によくもまぁくっついたわ。とてもじゃないけど笑える。不思議なものね。


……あぁ、そうか。

眠りについて、前の世界を見る。

頭をぶつけたのが原因だと彼は思ってるけど、あの時のはそれが原因じゃない。

爆ぜた彼の力を大量に浴びたからだ。

力が強すぎて酔ってしまったような、受けた彼の力が私の体に馴染むまで時間がかかった。

加えて彼には記憶をいじられてる。記憶にないものを受け入れるには時間がかかった。私の今ある力は彼によるものだけど、その力のおかげであの時のことがよくわかる。

受けとるまで時間がかかってしまった。遠回りも随分したわね。

そもそも、あの世界で異質だった彼の能力を私は知っていた。受け入れていた。

それは限りなく私が彼の世界に近いとこにいたからか。


* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *


「……」

起きたときには太陽は真上、陽気のいい昼下がりだ。

彼を起こす。

もう少し寝かしてあげてもよかったけど、こうして起こしてあげることで彼は気づくだろう。朝起きてもこれからは一人じゃないことに。 強気で自由に生きてる割に孤独は苦手、そういう人だ。覚えているし知っている。

「フィル」

「……リズ」

「昼よ。着替えて食事にしましょう」

「……リズ」

半分起き上がって、私を寝ぼけた眼で眺めたあとに、ゆっくりとした動作で抱きしめてくる。確かめてるのか。寝ぼけているのか。どちらでもかまわないのだけど。

「…ほら」

腕を緩めてもらって立ち上がる。

まだぼんやりしてたようだけど、なんとか着替えに自室へ入っていった。

これなら大丈夫でしょうね。

「…まったく」

溜息一つ、私は階下へ向かった。


先に席について紅茶を頂いていると、さっきとは打って変わった屋敷の主が入ってくる。

切り替え凄いわ。実に爽やか、背筋が伸びて自信が垣間見える。

この人は一つ超えたのね。

席につき食事をともにしてもわかる。

私が昨日受け入れたからか。

まだすこしばかりの遠慮が見られるけど見違えるよう。


対して私は。

すっきりしたものの、気持ちが踏み切れてなかった。

思い出したいことは思い出した。いろいろつながったし、そこはいい。

けど、私は本来の私に戻れたのだろうか。

どうしても、私が私である確証がもてない。

姿は違うけど中身は一つ前の世界の日本という国にいた社会人だ。

死んで生まれ変わったわけじゃない。そのままの形を保ってこの世界に来た。それでもたとえ姿を日本人に戻しても私は前の世界の私だと思えない。

ここにいる私は記憶を抹消し幼女から始まった新しい人格。

同一視できない。

本質は同じで同一人物、けど私は私、あっちはあっちといった具合に他人事になってる、

彼に対してもそう。

好感は抱いてても、そこに愛があるかと問われるとはっきり答えられない。

今まで見てきた世界の私たちのような感覚はない。

さて、どうしよう。

思い出せば進めると思ってた。

受け入れることができればゴールだと思ってた。

それは違うと、目の当たりにする。

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