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1話

気づいたとき、私は4歳の幼女だった。

それまでの記憶は可愛いものでありふれた子供の記憶。

それが今日、何のきっかけもなく、急に違和感を覚えた。

ただ単純に私は4歳ではないと感じた。

明確に証明できるものはなく、ただ「なにかがちがう」という違和感しかない。

「いかがされました、お嬢様」

私は小さな島の大きな別宅に住む、伯爵家の一人娘。今は休暇中で、同じ伯爵家の友達の女の子と、この島の別宅でのんびりすごしている。

「私が私でない気がする」

「左様でございますか…では気晴らしに何かお飲みになりますか?」

「お願い」

出されたホットミルクを飲みながら考える。

私はイギリス生まれのイギリス人だ。鏡で見ても確かにイギリス人だ。

名前もエリザベス…ありきたりな名前だ。愛称はリズ、うん、ありきたりだ。

その名前にも見た目にも肩書にも違和感を感じる。

人種すら違っていたのではないか、身分なんてもってのほかだ。


そもそも、この世界自体がおかしい。

この世界にはバラけるという独特の言葉がある。

その言葉通りバラバラになるという意味ではあるが、これは分子レベルから見た目の肉塊まで幅が広い。

そこまでの意味なら私は納得しただろう。けどこの世界では、そのバラバラの状態から再生するまでがバラけるの一くくりなのだ。

この世界では表面上バラバラになっても再生する。刺されても首を閉められても人は死なない。あくまでその個体の寿命が来るまでは不死だ。


このバラけるという破壊と再生のワンサイクル……今の私にはありえない常識だった。

こう思ってしまった。

私の知る世界はバラけたら死ぬ。

寿命以外でも人は死ぬし、ものは壊れる。

何故この世界の人々はバラけても死なないことに違和感を感じないのか。

思い起こせば、私はこの4年、バラけることへ異常なまでに恐怖を覚えていた。教育の一貫で実践があろうものなら全て跳ね返した。

跳ね返すとは言葉のままだ。相手からぶつかるバラけるであろう力を自分の能力で跳ね返す。


この世界は「魔法」と言う名の特殊な能力が存在した。

私は自分の身に降りかかるバラける危険を含んだ魔法をことごとく跳ね返し続けていた。教育の現場であっても躾の現場であってもだ。

私の知る世界では、それを人は「超能力」といっていたと思うが、それもはっきりと断言できない。なんとも中途半端なこと。

この魔法という力に関して、私は人より秀でていたらしい。

跳ね返す度に私の代わりに教師が、親が、使用人が、目の前で分子レベルでバラけた。

その圧倒的な返しに周りは私を絶賛した。

素晴らしい力だと。

何かをなしえるために規格外の力を神が与えたのだと。

そう周りが囃し立てるものだから、私はバラけるを体験しないままここまでこれた。


「…さて、どうしたものかしら」

女性であることに違和感がないということは、女性であることは正しいことなのだろう。

違和感しかないのはなぜなのか。

その先はあるのか、何を今すべきか悩みながらトイレに到着する。後ろから友達であるスカーレットが静かについてくる。彼女もトイレか。この世界にも連れションはあるのか。いやさすがに伯爵家の令嬢が使う言葉ではないか。

この屋敷のトイレはおかしなことに2つも個室がある。そんな公共のトイレでもないのに。これが伯爵家だからなのか。よくわからないが、私の常識ではトイレは自宅に個室一つあればいいよう。


「…?!」

ここにきて悪寒が走る。

近い未来が同時に見える。

ここに核が落とされるような魔法の攻撃がくる。

妙齢の女性…あれはテレビで見たことある候爵家、政府要職で軍事のなにがしかの階級のある有名な女性だ。

なぜ、この人物が島の上空に来て攻撃を?

いや、考えるのは後だ。

私は急いで個室に入り、自分のもてる能力で防護用のシェルターを作る。かつ、ダミーの私を作りだす。未来予知ではあの女性は私が一度もバラけないことに不信を抱いていた。

誤魔化そう。

なにせ、違和感を感じてる私はまだバラけるのが怖いから、バラけるのだけは回避したい。

程なく、攻撃が始まる。

ダミーが分子レベルで焼き切りバラバラになっていく。透視をすれば建物も骨組みを残し消えていってる。

彼女が攻撃する瞬間、誰かが止めにはいってたような気がしてたけど、それはまた後だ。

バラけの後半、再生に乗じてシェルターを解除、あたかも再構築されるその途中で、私をいれる。よし、いいぞ。

透視してる彼女は納得してさっていった。

私はバラけた友人とともに廊下に戻った。友人が先に部屋に戻り、後を追うように私も戻ろうとしたとき、声をかけられた。


「ねえ」

「?」

そこには成人男性が私を覗き込むように腰を曲げて立っていた。

「…え?」

「なんで君はこんなところでこんな姿でいるの?」


彼には見覚えがあった。新聞やテレビに出ている公爵家で騎士の称号をもつやり手の実業家。若さや見た目、実力から最近注目の人だと見た記憶がある。

けど、なぜここに、そんな人が?

そもそもなんて言った?

こんなところでこんな姿で?


「……」

途端、吐き気が襲う。

「…気持ち悪…」

目の前がぐるぐる回る。

頭が痛い。

なんだこれ。

いやちがう。

なんで私は子供の姿なのか?

ちがう。

私は伯爵家の子供じゃない。

「…ぐう」

頭が痛い。目の前に過去が、記憶が見えた。

私は、子供じゃない。

私は、この世界の人間じゃない。

「……」

息切れ動悸もひどい。

気持ち悪い。

私は事務仕事をする30代社会人。イギリス人じゃなくて日本人。一人暮らし、両親共に伯爵とか立派な役割はなかった。

「痛い」

一度事実に気づくと体から音がでて形を変えていく。

気持ち悪い。

私の身体が大きくなっていってる。

目の前の男は困ったように笑う。なんなの。

気持ち悪いし、あちこち痛いし、目回るしで何も言えない。

いろんなものに耐えて数分、私は完全に私にもどった。

私は魔法でここの娘になってただけのこの世界外の人間だ。

4歳の服は当然やぶけて私はほぼ裸、そこに目の前の彼が上着をかけてくれる。

なにもわからない表情で私をただ見ている。

なんなのよ、本当。

次に私は彼に抱え上げられた。

ひゅっと息だけが漏れる。当然先ほどの変化で私はもう声すらあげられなくなっていた。


「しっかり捕まっててね。気持ち悪いから」

「え?」


途端反転する世界。

あぁ、能力を使った移動…瞬間移動とかいうものだったかしら。気持ち悪くなるから使ってなかったけど、この人も使えるのか。となると彼は相当な能力者ということになる。

そんなことを思ってすぐ、別の屋敷のある部屋に移動した。


「僕の部屋だよ」

私の思考を読んだのか彼が答える。

頭も痛くてめまいと吐き気もおさまらない私は何も返事ができなかった。

彼は眉根を寄せたままだった。

初投稿。10話くらいで、月・木更新予定です。

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