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希望の光 〜人vs侵略者〜  作者: なっちゃん
第一章 未知との遭遇
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四話 師弟

 神風軍本部は人里離れたところにあった。500人もの隊員が日々訓練を行い侵略者の討伐に精を出している。

 照人、蓮、そして風木が神風軍本部に到着すると既に他の合格者が到着していた。


「てかなんで風木も付いてきてるんだ?」


 蓮は風木に対して怒っているようだった。無理もない。一方的に完膚なきまでにボコボコにされたのだから。


「ごめんよー。蓮くんだっけ?僕が君にしたことは許されないことだと思うけど許してほしいな。」


 風木は蓮に頭を下げた。蓮は溜息をついた後に風木の肩をポンと叩いてこれまでのことを許した。


「許すよ。僕は優しいから。風木。いや涼太。これからよろしく。」


 涼太と蓮は握手をしてお互いに口角を上げて笑みを浮かべた。


「さて、お集まりのようだなァ!10人の合格者、改め新人隊員共ォ!!」


 燃えるような赤髪の男が新人隊員達の前に現れた。髪型はツーブロックで鋭い目をしていた。年齢は21、22ほどと思われる。


「俺の名は伊達 炎上。2番隊隊長だァ。さてお前らがこれから強くなれるように各々に師匠をつけさせてもらうぜ。」


 伊達炎上が指を鳴らすと10人の男達が照人達の前に出現した。一人の新人隊員に対して一人の師匠がつくようだ。

 照人には七三分けの黒髪の男が師匠となるようだ。眼は糸のように細く年齢は20後半くらいだろう。


「ボクの名前は4番隊副隊長の影沼 仙。キミの師匠をさせてもらうよ。よろしく。」


 影沼はそう言うと照人を担ぎ上げて誰もいないところへ連れて行った。


「ここは…どこですか?」

「ここはねキミのこれからの修行場所なんよ。その特殊な能力を鍛え上げるためのね」


 影沼は不気味な笑みを浮かべた。照人は身体が震えた。圧倒的な威圧感だった。4番隊副隊長ということは神風軍でも上位の実力者ということだ。影沼に修行をつけてもらえるのは有り難かった。


「さて早速だけどキミの能力を見せてもらおうかね。ほれ、ブレスレット。」


 影沼は照人に超能力ブレスレットを投げた。昨日装着したものだ。照人はそれを装着して能力を解放した。

 眩しい光と共に照人を光が包み込んだ次の瞬間、光のドレスを纏った照人が現れた。


「これは凄いね。ボクはこんなん始めて見るよ。さて稽古をつけようかね。試しに攻撃してみてくれないかい?」


 照人は自分のまだ能力について全く理解していなかった。まず拳を握りしめると光が拳一点に収束していった。

 そして人差し指を影沼の方に向けた。影沼を照射すると沢山の光子が動き一筋の光ができた。そしてそのまま放射された。


 野太い青い光線が影沼を襲う。圧倒的な速度なので直撃は必至だ。爆音とともに土煙がまった。

 直撃だ。照人は思った。あまりの能力の強さに自分でも困惑していた。この光線が人の眼球に当たれば失明、その他の部位でも身体を焼くに違いない。


「恐ろしい能力だ。間違いなく最強クラスの能力だろうね。」


 そこにはケロッとした影沼がいた。何故ピンピンしているのか照人にはわからなかった。


「何故生きてるかわからんよね。説明するとボクは影を扱う能力なんよ。瞬時に自分の影に潜り込んで攻撃を避けたってこと。」


 影沼は照人に近づいて照人の周りを一周した後に一言告げた。


「んー。力の制御ができてないね。これから学んで行こうか。」


 それから照人は力の使い方を学んだ。影沼の能力と照人の能力は対極にあると言っていいだろう。光と影なのだから。

 だが、影沼の説明はとてもわかりやすいものだった。照人はメキメキと成長していった。


 そんなある日、影沼は照人に一つの試練を与えた。山奥に住む最強のボス猿を討伐してこい、というものだ。

 照人は山奥に向かった。そこは昼なのに薄暗く光があまり差し込まない場所だった。


「ふぅ〜全然見つからないなぁ。」


 照人が溜息をついた直後だった。照人の背後から咆哮が聞こえた。照人が後ろを振り向くと金色の髭を蓄えた巨躯の猿がいた。

 全長は3メートルくらいだ。これがボス猿だろう。照人は震えが止まらなかった。


「で、デカイ。でも一撃で決めてやる!」


 照人のブレスレットが光った。眩しい光を放ちボス猿は堪らず目を塞いだ。ボス猿が再度目を見開くと光のドレスを纏った照人の姿があった。

 照人はボス猿に人差し指を向けて照準を定めようとするが動きが素早く狙いがまったく定まらない。


「クソッ!どうすれば!」


 直後ボス猿は跳躍した。照人は一瞬頭が真っ白になり硬直した。そんな照人の背後をボス猿は取った。

 隙だらけの照人の背中をボス猿は大きな爪で引っ掻いて照人の背中から出血が。照人はそのまま倒れ込んだ。


「ーーハァハァ。痛い。クソォ!痛い痛い痛い痛い!」


 照人は自分に失望した。能力をまだ使いこなせてないとはいえ侵略者どころか野生のボス猿にすら苦戦するとは思っていなかった。

 そんな照人をよそにボス猿は照人を殺しにかかった。倒れ込む照人を目掛けて腕を振り下ろした。


「今だ!俺を全てにかえてお前を討つ!致死光線リザールレーザー!」


 照人の人差し指から放たれた青い光線がボス猿の心の臓を射抜いた。ボス猿の巨躯が地に伏した。

 照人は勝利した。だが、手足に力が入らずそのまま意識を失った。


 気づくと照人は薄暗いボロい家屋にいた。キョロキョロ周りを見渡すと料理を作る影沼の姿があった。

 照人が起きたことに気づくと影沼はニヤッと笑った。


「随分と派手な戦闘やったんやね。背中に大きな傷跡があって血を流しまくって倒れてたよ。」

「ーーそうですね。思ってたより苦戦しました。動き回る敵を倒すのはまだ難しい。」


 影沼は落ち込む照人の前に出来上がった料理を出した。美味しそうな野菜スープとオムライスだ。


「まぁそう落ち込むことないよ。キミは勝ったわけだし。ほら、お食べ。」

「で、でも…。」

「お食べ。」


 普段細く鋭い目の影沼が目を開けた。照人に何も言わせない圧力があった。

 照人は仕方なく野菜スープを飲み、オムライスをガツガツと食べた。とても美味しく店に出せるレベルの味だった。


「あのなぁ照人君。勝ち方は完璧じゃなくていい。どんなに汚い勝ち方でも泥臭い勝ち方でも勝ちは勝ち。この弱肉強食の世界では生き抜くことこそが全てなんよ。」


 影沼の言葉に照人は納得した。そうだ。この世界では生き抜くことが全てだ。どれだけ情けなくとも惨めでも。

 そうでないと家族を殺されて自分だけ生かされた意味がない。自分が死んだら家族にも守ってくれた神楽坂にも顔向けできない。


「わかってくれたらいいんよ。ほらもっといっぱい食べるんよ。」


 そして一ヶ月の月日が流れた。照人は能力を一通り使いこなせるようになった。技名をつけたりもした。

 ぱっと見で成長したことが分かるくらい表情も違った。この一ヶ月能力を鍛えるだけでなく素手格闘についても影沼から教わった。


「ふぅ〜。影沼さん、修行をつけてくれてありがとうございました。」

「いやいや。殆どボクは何もしてないよ。キミが頑張っただけよ。胸張るんよ。」


 影沼は照人の背中をポンと叩いた。この一ヶ月で照人と影沼は強い師弟の絆が結ばれた。

 照人は影沼に手を振り神風軍本部へと歩き出した。

 ついに照人と侵略者の戦いがこれから始まるのだ。はたしてこれからの照人の運命はいかに。


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