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希望の光 〜人vs侵略者〜  作者: なっちゃん
第一章 未知との遭遇
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二話 超能力ブレスレット

 一次試験が終わり勝ち残った25人は一旦休憩ということで支給されたおにぎりを食べていた。

 蓮は照人に対して恐怖のような感情があった。先の戦いで見せた恐ろしいまでの気迫のこもった戦い方。西園寺隊長の静止がなかったら相手を嬲り殺すまで続けていただろう。


「蓮どうしたんだ?食欲がないのか?」


 照人は顔色が冴えない蓮の心配をする。その表情を見ると先の戦いで見せた表情は本当に照人だったのか分からなくなりそうだ。

 蓮は自分の頰をパンと叩いた。仮に照人が心に大きな闇を抱えていたとしても自分が抑止力となる、そう決意した。

 だってそれが友達というものだから。もし誤った道を進んでいたのなら正してやるべきだ。


「いや、今から二次試験だし緊張してただけだよ!それより照人は何でそんなに強いんだ?教えてよ!」

「それはな〜カクカクシカジカでな」


 二人が談笑しているのを他所に一人の男が草むらから二人を眺めていた。その男は先の戦いで不気味な薄ら笑いを浮かべて勝利した線の細い男だった。

 線の細い男は照人をじっと見つめる。先の戦いで惚れてしまったのだ。ずっと探し求めていた圧倒的な武。視線が合いそうになっただけでニヤつきが止まらない。


「はぁ〜たまらないなぁ…こんなにも強い男がいるなんて…興奮が止まらない…」


 線の細い男は照人を思うだけで幸せなようである。常人には理解し難いがこの男にとって圧倒的な力を持つ男こそが正義であり心酔すべき対象なのだ。


「試験が終わったら必ず君に話しかけて…僕は君に…フフッ」



 ーーーーーーーーーー



 30分後、西園寺隊長が皆の前に姿を現した。ストロベリーブロンドの綺麗な長髪が風になびいている様子が絵になる。先程と同様非常に美しいその姿は見る者を魅了した。

 聞くところによると西園寺隊長は20歳にして数多の人間に告白されてきたらしい。なんとその数100を余裕で超えるとか。それなのに特定の誰かとは付き合ったことがないといわれている。


「さて、そろそろ二次試験の方を始めていきましょうか。」


 西園寺が指パッチンすると神風軍の隊員と思われる者達が現れ参加者一人一人にブレスレットを渡していった。

 これが「超能力ブレスレット」である。このブレスレットを付けて発現した能力が強かったら合格である。


「さて、皆さん装着していってください」


 西園寺の許可とともに一斉にブレスレットを付けていく参加者達。照人と蓮も恐る恐るブレスレットを付ける。

 最初に反応があったのは線の細い男だった。物凄い風が線の細い男の周りに吹き荒れた。


「風系統の能力が出現したようです。貴方の名前は何と言うのですか?」

「フフッ。僕の名前は…風木 涼太です。年は17歳ですね。」


 自己紹介を終えると風木は西園寺に向かって能力を行使した。耳が張り裂けそうな轟音を伴った暴風が西園寺を襲う。

 周りにいた参加者達は暴風に巻き込まれ上空へと吹き飛ばされた。おそらく風速70mはあるだろう。巻き込まれたら終わりだ。

 参加者達は一斉に逃げ出した。無論照人や蓮も巻き込まれないために風早から距離をとった。


「全く世話が焼けますね…」


 西園寺は溜息を吐く。直後、風の勢いは弱まりやがて無風に近い状態になった。

 何の能力かはわからないが能力を使ったに違いない。あれだけの暴風を一瞬で消すのだから強能力なのは間違いない。照人は息を呑んだ。


「フフッ…さすが隊長〜。僕の脳力をいとも簡単に打ち消した。」

「恐ろしい能力です。これだけの風を操る者は神風軍にもそうはいません。ーーですが…貴方、不合格にされたいんですか?」


 照人は遠くからでも西園寺が怒っていることがわかった。声に怒りが込められていた。当然である。


「まさか。フフッ、僕は試しただけですよ。隊長の力がどの程度のものなのかをね。」

「ふぅ…貴方は合格です。ですがその性格は矯正してもらう必要がありますね。」


 風木はニヤニヤしながら近くの草むらに腰を下ろした。口笛を吹いてかなり上機嫌なのが伺える。

 西園寺はそんな風木には脇目も振らず他の参加者達の方を見つめる。


 次々と参加者達は能力を発現させていった。火を出す者。水を出す者。参加者によって能力は区々だ。出現した能力を西園寺が評価を付けて合否を決めていくスタイルだ。


「貴女凄い能力ですね。お名前は?」


 一人の少女に近づき西園寺は名を尋ねた。見たところ少女の年齢は照人や蓮と変わらないようである。風貌は黒髪のポニーテールで切れ長の目が特徴的な整った顔立ちの少女だ。

 少女が発現させた能力は「瞬間移動」。姿を消した1秒後に別の地点に姿を現わすという能力だった。


 チートみたいな能力だなと蓮は思った。がそれは周りの参加者達も同じ事を思っているのが表情から読み取れた。


「私の名は森橋 アヤ。16歳です。」

「森橋さん。貴女も合格です。素晴らしい能力で希少性も高いです。」


 森橋アヤはニコリともせず一礼した。そんな様子のアヤに対して西園寺も一礼してから他の参加者を見回った。

 次に能力が発現したのは蓮だった。蓮の周りに冷気が漂い始めたと思うと近くにあった水溜りが凍った。それだけではなく近くに生えていた木々も凍りつき始めた。


「貴方の能力は水系統の中でも氷属性の能力みたいですね。名前は何ですか?」

「箕面 蓮。年は16です。神風軍に入って侵略者を倒したい…です。」

「箕面くん…。合格です。戦闘において使い勝手の良い能力ですからね。」


 次々と合格者が出揃っていく。残りの枠は一人になったところで照人の能力が発現した。照人を光が包み込んだ。近くにいた者は眩しさのあまり目を塞いだ。

 目を開けた次の瞬間、眼前には光のドレスを纏った照人の姿があった。


「これは凄い…見たこともない能力です。」


 西園寺は呆気にとられていた。これ程までに得体の知れない未知の能力は遭遇したことがなかった。西園寺は「光」に関係する能力だろうと判断した。


「合格です。貴方が最後の合格者です。お名前をお聞かせ下さい。」

「光 照人。年齢は16。侵略者を一匹残らず倒す者の名前です。命に変えても必ず…。」


 照人と西園寺は暫くお互いの顔を見つめあった。照人の顔は一切迷いのない顔つきだった。命に変えても必ず…という言葉からもそれは分かる。

 西園寺はこの時確かに感じたという。他の参加者達とはいう只ならぬ信念を。そして同時に心の中に魔物が住んでいることも。


 ーーーーーーーーーー



 10人の合格者が出揃った後はブレスレットを一旦回収して西園寺が今後の事について詳しく話した。主な内容はこれから神風軍に入ったら厳しい訓練が行われること寮生活が始まる事などだ。

 一先ず寮生活や訓練は明日からとのことなので今日は家族のもとに帰り家族と最後の別れを済ませてきてほしいと西園寺は話してから最後に「おめでとうございます」と言って去っていった。


 帰る場所も特にない照人はどうしようか悩んだが、蓮が来る場所がないなら自分の家に来たら良いと言ったので行く事にした。

 蓮の家は豪邸だった。家には広大な庭がありプールもあり、さらには執事もいた。まさに恵まれた環境だなと照人は感じた。


「貴方様は蓮様の連れの方ですね。どうぞお部屋に案内します。」


 案内された部屋は綺麗で豪華な部屋だった。照人は少し落ち着かない部屋だなと思ったが風呂に入って布団に入ると心地良く存外すぐに眠れた。


 次の日の朝、執事に大広間に来るようにと言われたので行くと食事が並べられていて蓮と蓮の両親が既にそこに座っていた。

 照人の姿を見つけると蓮の両親は挨拶をして皆で朝食を食べ始めた。朝食はエッグベネディクトを始め豪華そうなものがズラりと並べられていた。


「君の名前は照人君というのか。蓮とは仲良くしてあげてくれよ。蓮は本当に人見知りでね。」

「いえ、本当に蓮は良い奴ですよ。」


 照人と蓮の両親の会話は弾んだ。試験のこと蓮のこと。話のネタは尽きなかった。あっという間に食事が終わり旅立ちの時が来た。

 蓮は少し寂しそうで別れ際には涙を流しそうになったが唇を噛み締め我慢しているようだった。


 二人は神風軍の寮へ向かう途中近くの川に寄った。二人は腰を下ろしてボーッと遠くを見つめた。


「照人、今日はいい天気だね。雲一つない青空だ。」


 蓮の言う通り雲一つない青空で穏やかで過ごしやすい気温だった。照人は伸びをしてから答えた。


「そうだな!蓮、本当にいい天気だ。いよいよこれから始まるんだな。神風軍の隊員としての生活が。」


 照人が目を輝かせウキウキしているのを見て蓮は照人がドMなのかと疑問に思った。これからキツイ訓練があるのにな、と心の中で思った。

 二人はそれからくだらない会話で盛り上がった。子供の頃の遊びや好きな女優や偉人。


「へぇ〜意外に照人って女の人に興味とかあったんだな。しかも太ももフェチとは。」

「どういう意味だよ。だったら蓮こそ巨乳の女が好きなんて意外だった。じゃあさ、さっきの女隊長、西園寺だっけ?あれはどう?」

「西園寺隊長はやばいね。僕にとって理想的だな。綺麗で優しくて何より胸が大きい!Eはあるね。」

「なんだよ。蓮は胸が好きなのか?むっつりスケベなのか?」


 お互いの理想の女性像については特に盛り上がった。二人とも爆笑が止まらなかった。特に照人は声を出して笑った。

 照人にとってはこんなに笑ったのは久しぶりだった。家族が殺されてから心から笑ったことがなかったからだ。


 他にも何才までに結婚したいかや死ぬまでにやりたいことなどを話した。楽しい時間というのはあっという間だ。そうこうしているうちに時間は正午を過ぎた。


「やば!もうお昼じゃん!蓮、集合って何時だっけ?」

「昼の1時からだった気がする。早くしないとな…」


 二人が動き出そうとした時、ある男が視界に入った。その男は不気味な線の細い男、先の二次試験で暴風を発生させた風木 涼太だった。

 照人に異様な執着を持つ得体の知れない男が今、照人と対面する。

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