コント 喫茶店にて
昔ながらの喫茶店に、ツッコミがコーヒーを飲んで待っている。
ツッコミ「しかし、遅いなーあいつ、約束の時間30分も過ぎてるぞ」
ボケ「悪い、遅くなってごめん!」
明らかに血まみれの状態で店に入るボケ。
ツッコミ「どうしたんだその格好!」
ボケ「トラックに女の子が轢かれそうになったから、慌てて弾きとばしたら、トラックに轢かれて、駆けつけた女の子のお母さんにも殴られただけだよ」
ツッコミ「お母さん理不尽過ぎるだろ、いやそれよりも、なんでそのまま病院に行かなかったんだよ、ちょっと待て、救急車呼ぶから」
「いや、待ってくれ」
スマホを取り出して電話をかけようとするツッコミを、ボケが止める。
「それどころじゃないだろ、このままじゃ死ぬぞ」
「いや、おれもう死んでるんだ」
突然のカミングアウトで呆然とするツッコミ。
「おれこの世に未練があってさ、それに時間も過ぎてたから急いで来たんだ」
「お前……ちょっと待てよ、そんな幽霊なんて冗談」
突然ツッコミのスマホから、彼女から電話が。
ツッコミ「もしもし、チヒロ……えっ、アイツが事故で……分かった」
ボケ「信じてくれたか?」
ツッコミ「ああ、それで未練ってなんなんだ?」
ボケ「おれさ、事故から庇ったのに、殴られて死んだじゃんか」
ツッコミ「ああ、今まで生きてきた中で最悪の死に方だよ」
ボケ「だから、あの世に行く前に、是非見ておきたいものがあるんだ」
ツッコミ「なんだ、なるべくお金が許す限り叶えてやるぞ」
少し間を置き、ボケが打ち明ける。
ボケ「お前が彼女と幸せにデートしている姿を見てから、あの世に行きたいんだ!」
ツッコミ「そっちかよ!」
ボケ「なあ頼むよ、親友が幸せそうに幼なじみとデートしてる姿を見て、安らかにあの世に行きたいんだ」
ツッコミ「いや、恥ずかしいわ! そもそもなんで他人のデートを見たいんだよ」
ボケ「幸せオーラに満たされてから、あの世に行くのが悪いのか?」
ツッコミ「じゃあ満たされなかったら?」
ボケ「地縛霊か怨霊か……あるいはお前にストーカーするとか」
ツッコミ「俺たちのデート血まみれで覗く時点で、馬鹿みたいにヤバいストーカーだろ……それに、なんで野郎にストーカーされないと行けないんだよ!」
ボケ「それに関連する事なんだけど」
ツッコミ「ちょっと待て、ストーカーと関連する事なんてどんな案件だ」
ボケ「おれさ、今日生きて伝えたかった事があったんだよ」
ツッコミ「この流れだとロクな展開にしかならない気がするけど……なんだ」
ボケ「おれ……お前とお前の彼女に恋しちゃったんだ!」
ツッコミ「……ちょっと待て、展開が45度過ぎて思考が追いついてないんだが」
頭を抱えるツッコミに、気にせずボケが告白を続ける。
ボケ「お前の筋肉質なところ、大切な人を見守る包容力、彼女の話をする時の幸せそうな顔、凄く素敵だ」
ツッコミ「なら、俺の彼女が好きなのはどうしてだ」
ボケ「おっぱいが大きくて、おっとりして包容力がある所だ」
ツッコミ「お前最低だな!」
ボケを叩こうとしたら、すり抜けて、自分の手を見て驚く。
ボケ「ほらね、すり抜けるでしょ?」
悲しそうな顔をして、ボケが空元気に笑う。
ボケ「やっぱやめる、緊張してる姿見てても、面白いだけで幸せな気持ちになれないし」
ツッコミ「お前おちょくってないか?」
ボケ「いつも通りでしょ」
ツッコミ「……だな」
ボケ「オレ、もう出てくわ。これ以上いても迷惑だし」
ツッコミ「ちょ……待てよ!」
ボケが出ていきながら、舞台が暗くなってツッコミだけになる。
ツッコミ「あのバカ……出て行くならちゃんと汚れ拭いてけよ」
ボケ「ゴメンゴメン、携帯忘れた」
ツッコミ「幽霊なのに、携帯いるか!」