サービスと個人情報
こっちの世界も春が近づきつつあるため少しずつ暖かくなってきた。
そんな中理津子はこっちでも通販も活用するようになっている様子。
そこで少し気になっているのは個人情報について。
理津子の世界だとたまに顧客情報などが流出する事もあったためだ。
「りっちんなんか買ったんかね」
「あいつ通販もきっちり活用してる辺り流石だよな」
「通販まで使いこなしてるなんて、こっちにも慣れたよね」
そんな理津子が買ったものは何か。
通販はお取り寄せのような事も出来るから便利なのである。
「りっちん、何買ったん?」
「これ?水界の名物だっていうフルーツゼリーだけど」
「そういえば水界は交流が出来てからそういうのが名物になったらしいな」
「それで興味があったからお取り寄せしてみたんだけど」
「とりあえず冷やさないとね、ゼリーはそうしないと美味しくないよ」
水界の名物というだけあってやはり冷やしてこそ美味しいものらしい。
とりあえず箱を開けて中のゼリーを冷蔵庫に移す。
今夜のデザートにでもする事にした。
「にしても通販も便利でいいよね、機界との交流で一気に便利になったもんよ」
「そういえば通販だとアドレスとか登録するけど、個人情報は平気なんだよね」
「そこは管理してるのが機界のシステムだからな、安全性は高いと思っていい」
「なるほど、なら信頼してもいいのかな」
「リツコの世界だとそういうのって漏れたりするの?」
理津子の世界の場合それがたまに流出する事もある。
だからそういったニュースが流れるとまずはパスワードの変更をする事になる。
頻繁に起こるわけではないが、たまに起こるから困るのだ。
「なるほどねぇ、まあサービスを利用するってのはそういうもんよね」
「そうなんだよね、あるサービスでフォロワーを稼いだらアカウントを売るとかあるし」
「それかなり悪質だな、要するに万単位での個人情報を売られるって事だろ」
「だからそういうアカウントは警戒してたなぁ、フォローしてるのもあったけど」
「こっちでもそういうサービスはあるけど、何かと制約もあるよね」
理津子もパソコンでそういうサービスは使っている。
森の国が作ったと言われる杜の酒場という名前のサービスだ。
理津子の世界で言う青い鳥のようなサービスで、システムも類似しているらしい。
「杜の酒場っていいよね、気軽に独り言を垂れ流せるから」
「ああいうのって繋がるのが目的でもないもんね」
「僕は一応使ってるが、フォローが今でも一桁だな」
「少年ってそれこそ独り言を垂れ流すタイプか」
「でもそれが本来なんじゃないの」
セルベーラの言うようにそれが本来の使い方だ。
ちなみに理津子はレシピアカウントと化しているらしい。
料理が好きで手抜きから本格的なものまで投稿しているとか。
「まー個人情報ってのはそんなもんよ、どんなにやっても漏れる時は漏れるのさ」
「外部からのサイバー攻撃とかもあるしね」
「機界のシステムにサイバー攻撃をして突破出来る奴なんて稀だけどな」
「サービスに個人情報を登録するって結局はそういう事なんだもんね」
「そうだよ、だから何かあるのも覚悟しておいてねっていう事だよ」
それもあり理津子はサービスを使う事自体への躊躇はない。
ただある程度の覚悟はした上で使うものなのだ。
安心と安全は必ずしも保証はされないという事でもある。
「でも個人情報ってのは詐欺に使われるっていうのは鉄板っしょ」
「実際ボットアカウントを売却されるとそれだけの情報が流れるもんね」
「ボットアカウントは多少の警戒も必要だからな」
「あたしもいくつかフォローしてたボットはあったけど、やっぱりなんだよね」
「機界だとメールのテンプレート返信に使われてたりするけどね」
よくあるお問い合わせへのテンプレ返信。
機界はそれへの返信のシステムにも使われているらしい。
主にクレームへの返信にそのシステムが使われているとか。
「でも通販はやっぱり便利だよね、いい時代さね」
「全くだよね、でも調理器具とかは実物を触ってから買いたいけど」
「道具や靴なんかは通販より実店舗だよな」
「分かってるねぇ、少年」
「そういうのもあるんだね」
そういう感覚は道具にこだわりのある人らしい。
やはりプロは道具にもこだわるという事なのだろう。
理津子もロザリオもそこは譲れないようだ。
「んじゃゼリー楽しみにしとくぜぇ」
「うん、今夜にでもね」
「個人情報の扱いは何かとあるものだよな」
「機界のシステムは高度なものなんだけどね」
そんなこっちの世界の個人情報の事情。
機界のシステムはとても高度なものだ。
それでも完全ではないという事だ。
こっちの世界でも通販はやはり便利なものなのである。




