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外に出るようになった

相変わらずに使用人としてきちんと仕事はしている理津子。

そっちが本来の呼ばれた目的ではあるので当然ではある。

そんな中エミールから帝に最近少し変化があったと話を聞いた。

何が変わったのかというと。


「帝っち、最近うちに来るようになったよね」


「あの喧嘩から外に出るのも悪くないと思えるようになって」


「でもだからってうちに来るのはどうなんだ」


そんな話をしていると理津子がデザートを運んでくる。


どうやら牛乳寒天のようだ。


「お、また美味しそうなもん持ってきたね、りっちん」


「うん、二重構造の牛乳寒天のを作ってみたんだけど」


「二重構造?」


「食べてみれば分かるよ」


「ならいただくとしようか」


理津子の作った二重構造の牛乳寒天。

上にアップルゼリーを乗せて下に牛乳寒天を敷いてある。


ゼリーと牛乳寒天の二段構造になっているもののようだ。


「ん、こいつぁ美味いね、上はゼリーになってんだね」


「お菓子作りにも慣れてきたからね」


「流石は理津子ですね、エミールのものも美味しいですが、負けていません」


「帝ってエミールの事は本当に信頼してるって分かるよね」


「神様と亜人っていう昔なら珍しい組み合わせだけど、今ではそうでもないもんな」


帝はエミールの事を信頼しているというのも確かだ。

その一方で理津子の料理も気に入っている様子。


今まではめったに外に出なかったという事もあり外の世界は割と新鮮なようである。


「帝っちって今まで引きこもってたのに外の世界とか平気なもんなのかね」


「あたしの世界だとそういう人への風当たりも強かったから、確かに気になるね」


「そうですね、人に話しかけるのは今でも勇気が出ませんけど」


「対人関係が苦手なのはあるみたいだね」


「僕達が特別なだけって事なんだろうな」


帝もこの家の人やエミールは特別という事なのだろう。

それは引きこもり特有の感覚なのかは知らないが。


ただ人と話すのは苦手なようではある。


「でも引きこもりじゃなくても人と話すの苦手な人っているよね」


「そういう人ってお店の人と話すのは割と平気みたいな人はいると思うけど」


「話すのはともかくお店の利用のしかたとかがまだどうにも」


「そこからか、これは壁は高そうだね」


「僕だってはじめて行く店なんかはよく分からないから、それはおかしくないだろ」


確かにはじめて行く店というものはどうすればいいか分からない事はある。

ただ引きこもっていた帝にはそういうのはまだハードルは高いようでもある。


なんにせよこれから慣れていくとは思いたいが。


「でも帝っちが外に出るようになるとは、人って何かと変わるもんさね」


「あの喧嘩から外に出るようになったみたいだけど」


「外の世界はおっかないですね、チラ」


「そんな事思ってない目だね」


「こんなあざとい奴だったか?」


なんにしても帝に変化があったのは確かなのだろう。

ただこの様子を見る限りそこまで問題はなさそうではある。


思っているよりも帝は逞しいのかもしれない。


「りっちんって創作料理とか好きな人っしょ」


「お父さんには料理はレシピは守れって言われてるけどね」


「エミールも料理は変にアレンジすると不味くなると言っていましたね」


「うん、まあ料理に使う調味料の分量って人の味によって適量が変わるからね」


「人の好みの味の濃さってやつか」


好みの味は人によって違うもの。

だからこそ使う調味料の分量は人の好みによって変わってくる。


理津子もレシピは守る方だが、そこは料理において大切だと思っているらしい。


「そういや帝っちって甘党だったりする?」


「以前来た時も甘いものをよく食べてたよね」


「はい、甘いものを食べないとエネルギーにならない体質なんです」


「体質は流石に冗談だと思うけど、甘党なのは分かった」


「そんな体質は聞いた事もないからな」


体質というのは流石に嘘であろうが、甘党らしい。

世の中には甘いものが苦手な人もいるが、甘いものが好きな人はそれなりに多い。


そもそもカレーやラーメンでも世の中には苦手な人がいるのは理津子も知っている。


「はぁ、満足だぜぇ」


「また来た時も甘いものをお願いしますね」


「帝って意外と図々しいのかな」


「外に出るようになったのにこれなのか」


そんな帝の変化もエミールは嬉しいようだ。

その一方でこの屋敷にちょくちょく来るのは理津子の料理目当てか。


それでもエミールを信頼しているのも分かる。


なんだかんだで帝も外の世界は新鮮なのだろう。

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