魔法とはなんなのか
いつものように食材の品定めをしていろいろ揃える理津子。
珍しい食材でも普通に調理出来てしまうのは自称元シェフの血筋なのか。
そんな中ロザリオは来た当初に比べるとだいぶ懐いてくれるように。
胃袋を掴むというのはやはり大切だと思っていた。
「少年、また魔法の研究しとったんかい」
「そうだが、こういうのは楽しいからな」
「リツコを呼んだのも作った召喚魔法でなんだっけ」
そんな話をしていると理津子が食事を運んでくる。
相変わらずのドカ盛り飯だが、ロザリオも今ではすっかり完食するように。
「おー、美味そうだね」
「グリーンカレーを作ってみたんだけど、たぶん問題ないはずだよ」
「グリーンカレー、また変わったものを」
「美味しいんだからね」
「とりあえず食べようよ」
今回作ったのはグリーンカレーという理津子。
スパイスから何まで似たような食材は多いからこそ作れるのだろう。
ただし似たようなものでしかないので、そっくり同じ味にはならない様子。
「んー、辛いけどこりゃ美味いわ」
「そういえば少年は相変わらず魔法の研究なんだ」
「そうだぞ、まあ新しい魔法を生み出すっていうのも簡単じゃないけどな」
「あたしを呼び出したのって召喚魔法だよね?」
「それでまた別の人を呼んだりとか出来たりするのかな」
魔法というのは人族特有の技術なのだという。
機界人は魔法はそもそも使えなかったり、エルフの場合は精霊術だったりする。
魔族の場合は魔術だし、他にも妖術や神通力、神術など種族によって違うのだ。
「でも召喚魔法を生み出した時点で凄いと思うけどねぇ」
「そうなんだ、でもあれからは何か出来たの」
「明かりの魔法なら出来たな、街灯とかがない暗闇で便利だぞ」
「技術もある今にそれは役に立つのかは分からないけど」
「道具は壊れるかもしれないから魔法はそういう時に便利だよ」
セルベーラの言う道具は壊れるかもしれないという言葉。
それは機界人らしい考えでもある。
そもそもどんな道具でもいつかは壊れると思っておかないといけない。
「少年って召喚魔法なんて凄いもんを作っといて次が明かりとは」
「そんなに凄いんだ、召喚魔法って」
「一応また使う事は出来るけど、召喚魔法と同レベルのものはたぶん作れないな」
「それを作っといてよく言うよね」
「魔法を作るっ大変だって聞いてるからね」
魔法を作るという事自体は大変な事らしい。
理津子を召喚した魔法もきっちりとした理論を組み立てて作ったもの。
とはいえそれと同レベルのものはたぶん簡単には作れないという。
「でも少年よ、その召喚魔法が使えるならまた人を呼べるって事かね」
「言葉からしてそんな感じだよね」
「それは出来ると思うけど、誰を呼ぶか指定するみたいな事はたぶん無理だぞ」
「つまりあたしが呼ばれたのも偶然選ばれたからなんだ」
「召喚魔法で特定の何かを召喚するのって難しいんだよね?」
セルベーラもこっちに来てから魔法については勉強しているようだ。
アノットも魔法の知識はあるので、召喚魔法の凄さも理解している様子。
何かを指定して呼び出す召喚魔法はかなり高度な魔法なのだそうな。
「まー指定出来なくても召喚魔法を作っちまう時点で少年は凄いって事さね」
「なるほど、それだけでも凄いんだね」
「どこの誰を呼べるかは分からないからな、言葉も道具で翻訳してるし」
「呼ばれた時に渡されたこの指輪かな」
「異世界人の言葉を翻訳する道具って交流が始まった事に合わせて開発されたやつだっけ」
呼び出された時に理津子に渡した指輪。
それはこの世界が異世界との交流を始めた際に開発された魔法の道具である。
理津子のそれもきちんと機能しているのはそれだけ流石という事なのだろう。
「にしても異世界に来てこんなエンジョイしてるのは凄いよね、りっちん」
「こんな経験二度と出来るか分からないしね、全部吸収するつもりで暮らしてるよ」
「他の異世界人もいろんな世界を行き来してたりするから、意外と平気なんだよな」
「この人界以外の異世界にも行けたりするんだね」
「行くには許可証みたいなのが必要だけどね」
世界の行き来は許可証があればあとは自由なのだそうな。
それの発行は国に申請して一ヶ月程度で届くという。
審査こそあるが、それもあり多くの異世界との繋がりは今では普通になったという。
「はぁ、んまかったぜぇ」
「それはどうも、片付けたらデザート持ってくるね」
「やっぱり召喚魔法クラスになるとまた作るのは難しいよな」
「それでもロザリオは凄いと思うけどね」
召喚魔法は指定するとなると相当にレベルが高いらしい。
理津子が呼び出された召喚は相手を指定出来ないもの。
魔法というのは人族特有の技術で、種族によってまた違うという事。
何が呼び出されるかは呼び出すまで分からないのである。




