怪しいお姉さん
帝とエミールとは仲良くなれた気がする理津子とロザリオ。
時間もあるのでもう少し街を散策する事にした。
出会いとかあるといいなと理津子は思うが、ロザリオはそうでもない様子。
とはいえ理津子としてもロザリオに日光ぐらいは浴びさせたいと思っている。
「ここは港なんだね」
「港町だからな、でも魚は生臭いからあまり好きじゃない」
「ならあたしが美味しい魚料理食べさせてあげる、今夜は魚かな」
そんな港を見て回っていると白衣姿の女性を見つける。
明らかに港には不釣り合いな彼女に声をかけてみる事に。
「すみませーん」
「ん?私かしら」
「あんた科学者か何かか?」
「そんなところですね」
彼女は科学者らしい。
つまり機界の住民だと思われる。
何をしていたのか聞いてみる事に。
「こんな港で何をしてたの」
「海水の採取、新しいエネルギーに使えないかなって」
「エネルギー?」
「アンドロイドとかロボットのエネルギーね、今よりいいものが出来ないかなって」
この世界にも機界のアンドロイドやロボットはちょくちょく見る。
そんな彼らのエネルギーは主に電力らしい。
だが他にも使えそうなエネルギーの研究もされているという。
ちなみに電力の他に食べ物などをエネルギーに変換する事も出来るという。
それでも効率に関しては電力が圧倒的に強いのだとか。
「そういえば名前聞いてなかった、名前は?」
「サイン、サイン・サイラード」
「サインか、でも海水からエネルギーなんて作れるの?」
「今研究されてるのは自然にあるものから作られる特殊な水晶なんですよね」
彼女の名前はサイン、自然のものから作られる特殊な水晶とはなんなのか。
科学は専門外だが、ロザリオも興味はある様子。
それがアンドロイドやロボットのエネルギーとして研究されていると彼女は言う。
アンドロイドやロボットは人間と違いエネルギー問題は永遠の課題なのだそうだ。
「それでその水晶って?」
「こういうの、自然界のエネルギーを凝縮してあるの」
「見た感じはただの青いクリスタルみたいに見えるね」
「これは高濃度に凝縮してあるから、実際は凄いエネルギーなんです」
サインが持っていた青い水晶。
それがそのエネルギーであり、今研究がされているものだという。
自然界のエネルギーを高濃度に凝縮したそれは今までよりもずっと効果が高いとか。
「科学者ってやっぱり凄いんだなぁ、あたしの持ってたものとかこっちじゃ使えないし」
「あなたも、えっと」
「そういえば名乗ってなかったな、僕はロザリオ、こっちはリツコだ」
「ええ、それであなたも何か技術を持っているんですか?」
理津子もスマホなどは持っているものの、こっちの世界ではオフラインしか使えない。
ネットや電話などはこっちの世界にもあるが、そもそもの技術的な対応の問題だ。
異世界から召喚されたという事になっているので、当然といえば当然だ。
「こういうのなんだけどね、こっちだと基地局とかないからオフライン限定になってる」
「こんな小さい板のようなものが…これで通話などが出来るんですか?」
「そういえばたまにいじってたな、なんだろうとは思ってたけど」
「なら通信端末を新しく買うべきでは?」
一応こっちの世界にもスマホに似たものはある。
機界から持ち込まれたもので、機能はある程度制限されるがスマホと似ている。
家電量販店などに行けば買えるという。
「連絡は取れた方がいいし、買っておこうかな、ありがとね」
「ええ、それと少し興味があるのでこれは私の連絡先です」
「あ、うん」
「新しい端末を買ったら連絡してください、知り合いになって損はなさそうですし」
サインも理津子に興味を示したのか、連絡先を渡してきた。
一応それを受け取り、付き合っていく事になった様子。
「では私は他のものを採取に行きます、何かあったら連絡してください」
「不思議な人だったね」
「機界人か、科学者とか技術者は大抵はそこの出身だしね」
「それじゃ通信端末を買いに行こうか」
そうしてサインと別れ、また家電量販店に行く事に。
スマホはオフラインでしか使えず、通話も出来ないので買っておいた方がいい。
ロザリオもそういう考えはあるようではある。
どこか不思議な科学者ともお知り合いになったのだった。