仲直りは強欲に
帝が屋敷に転がり込んできてから少し。
相変わらず帰る様子もなく、マイペースに絵を描きながら過ごしている。
とはいえ流石にそろそろ仲直りさせて帰した方がいいとも思う。
エミールに連絡はしてあるので、あとは本人達次第だ。
「本当に帰らなくていいの」
「いいんですよ、向こうから謝ってくれるまでは帰りません」
「結構な頑固者だな、帝は」
あくまでも悪いのはエミールだと言って譲らない帝。
確かに帝のチョコ大福を食べたのはエミールではあるのだが。
「すっかりうちでの暮らしを満喫してるし」
「ここはいろいろ広いので助かってますよ」
「帰る気がないだろ」
「ネット環境があれば生きていけますから」
「これは完全な引きこもり精神だね」
少し呆れつつも神社でもそうして暮らしていたのだろうというのは分かる。
とはいえ事情があるというのはエミールからも聞いている。
それもあって良好な関係ながらもお互いに譲らないところがあるのだろう。
「それにしても帝って服を脱ぐと割といいスタイルしてるよね」
「そうですか?」
「引きこもりの体じゃないだろ、神様だからなのか」
「神様でも不摂生なら流石に太りますよ」
「だとしたらそのスタイルはおかしいよね」
この数日で一緒にお風呂に入ったりしていた理津子もそのスタイルには驚いたとか。
少なくとも引きこもっていた人のスタイルではないとのこと。
着太りするタイプではあるのだろうと理津子もロザリオも思っていた。
「本当に帰らないつもりなの」
「だからエミールから謝ってこないなら帰りませんよ」
「そこだけは絶対に譲らないんだな」
「当然でしょう」
「そろそろ来ると思うんだけど」
そうしているとチャイムが鳴る。
どうやら来たようだと理津子がそれを迎えに行く。
エミールが迎えに来たのだとロザリオも分かったようだ。
「帝様、いい加減にしてクダサイ」
「エミール、悪いのはあなたですよ」
「それは認めますから、もう帰りマスよ」
「なら何か甘いものを買ってください」
「それは構いマセンけど、それで帰ってきてくれるならなんでも買いマスよ」
どうやら帝がエミールに甘いものを要求しているようだ。
エミールもそれで帰ってきてくれるというのなら安いものだと。
帝もそれに対して結構な数を要求するものと思われる。
「それで何をどれだけ欲しいのデスか」
「そうですね、とりあえず見てから決めます」
「分かりマシタ、では商店街で何か買って帰りマスよ」
「仕方ないですね、こう言っているのでではそろそろ失礼します」
「帝様の事、感謝しマス、それではまた遊びに来てクダサイね」
そうしてエミールと帝は帰っていった。
なんだかんだ二人は仲がいいのだと改めて思う。
それはお互いにその人の事を理解しているからこそなのだろう。
「にしても意外とあっさり帰っていったね」
「割と強欲なところがあるからなんだろうな」
「どれだけ甘いものを要求されるのやら」
「帝も完全に足元を見てくるだろうからな」
「でも強欲なぐらいの方が案外いいのかもね」
帝がエミールに何を要求するかは想像の世界である。
とはいえ帝のチョコ大福を食べた事によるガチ喧嘩。
それは友情がそこにあるからこそなのだろうと理津子は思っていた。
「それにしてもチョコ大福か、いちご大福もあるし洋物の大福もありかも」
「またお前はそういう」
「いいじゃん、洋菓子も最近は作れるようになってきたし」
「だから洋物の大福を作ろうってか?試食だけで太りそうなのは勘弁してくれ」
「今は成長期なんだから、きちんと食べて動けばへーきへーき」
そういうところは理津子らしさでもある。
こっちの世界では理津子の世界では見られなかった料理もちょくちょく見られる。
それもあってなのか理津子のアンテナがビンビン反応しているらしい。
「さて、それじゃまたご飯は一人分減らして作らなきゃね」
「帝も結構食べてたからな」
「あれであのスタイルは卑怯だよねぇ」
「お前は寧ろ少しは体型を気にしろ」
「少年も男の子だね、健全で実によろしい」
そんなやり取りも慣れたものである。
とはいえ理津子も性的な事には割とオープンな性格でもある。
年頃の男の子には何かと大変である。
「さて、夕飯のお買い物に行ってくるから」
「買い溜めすればいいだろ」
「鮮度って大切なんだよ?それじゃ一時間ぐらいで帰るから」
そんな帝とエミールの関係は理解者だからこその関係なのだろう。
ロザリオも自分の都合で召喚した理津子に逆に主導権を握られている。
とはいえ仕事はしているのだから、それならいいとしている。
関係は良好なのが一番である。




