かぼちゃは食べるもの
こっちの世界にはすっかり馴染んだ様子の理津子。
そんな中イベント事などは世界の違いを感じていた。
元々仮装したりはしないので、主に食べる事がメインではあるが。
なので作ったようである。
「なんかりっちんかぼちゃをたくさん買ってきてたね」
「あいつまた何かやる気なのか」
「世界の違いとかじゃないの」
そうしていると理津子がかぼちゃのお菓子を持ってくる。
アノットに教わっていた事もあり、洋菓子の腕前もかなり上がったようである。
「かぼちゃのお菓子ねぇ、りっちんすっかり洋菓子も得意になりおって」
「料理は元々得意なのとアノットの教えが上手なおかげだよ」
「しかし上達が早いな、教えが上手いのか本人の飲み込みが早いのか」
「それより食べようよ」
「美味しそう、何から食べようかな」
なんでこんなにかぼちゃのお菓子を用意したかといえば。
理津子の世界だとハロウィンだったがこっちではそんなイベントもないわけで。
それもあってかかぼちゃをついたくさん買ってしまったのでお菓子で処理する事に。
「んー、んまいっ、にしてもなんでかぼちゃ?」
「あたしの世界だとハロウィンだったけど、こっちだとそんな事もないからつい」
「ハロウィン?何かのイベントなのか?」
「子供が仮装して近所の家を巡ってトリックオアトリート」
「トリックオアトリート?」
簡潔にハロウィンについて説明する。
それについては世界の違いでもあるようで。
こっちの世界にはないイベントである。
「ふーん、つまりお菓子をくれなきゃいたずらするぞって事ね」
「うん、まあ本来は外国のお盆みたいな感じなんだけどね」
「それがなんでお菓子といたずらのイベントになったんだ」
「外国でも一応そんな感じ?らしいけど、基本的にあたしの国独特ではある」
「そういうイベントがあるなんて楽しそうだね」
そんな理由でハロウィンのノリだった様子。
とはいえ理津子の家だと仮装とかよりも食べる事がメインだったようではある。
それもあってそのノリでかぼちゃをたくさん買ってしまった様子。
「にしてもそんなイベントがあったからそのノリってか」
「うん、まああたしの家だと食べる方がメインだったから」
「お前の家は食べてばかりだな」
「お父さんもお母さんも基本的に料理が好きな人だからね」
「お父さんは元ホテルの料理人でお母さんは和菓子が得意な人だっけ」
そんな事もあるからなのかハロウィンはかぼちゃをいただく日だったらしい。
なのでハロウィンはかぼちゃ料理が食卓にたくさん並んでいた。
そんなハロウィンの理津子の家の話である。
「でもなんでそのハロウィンはかぼちゃなん?」
「えっと、ジャックオーランタンっていうかぼちゃのお化けの事かも」
「ふーん、お前の世界にはそういうのもあるんだな」
「こっちの世界で言う精霊とか魔界人の幽霊なんかがそれかな」
「つまり幽霊とか精霊がイベントで呼び出されるのかな」
ハロウィンについては上手く説明しづらくはある。
簡単に言うならご先祖様が帰ってくる日、とでも言うか。
日本で言うお盆なので、そんな感じではあるだろう。
「ハロウィンってのも奇っ怪なイベントだねぇ」
「あたしの国で言うお盆だからね、ご先祖様が帰ってくる日みたいな感じだよ」
「つまり亡くなった人が現世に下りてくるみたいな感じか」
「ただこっちの世界だと幽霊とか精霊が普通だから実感は薄いけど」
「霊っていうものについての認識がそもそも違うんだね」
理津子の世界だと幽霊にしても精霊にしても神秘的なものである。
こっちの世界だとそれは魔界や霊界の住民である。
なので別に死者でもないし、亡くなった人という認識も薄いのだ。
「世界にもよるけど、人界だと幽霊は死んだ人みたいな認識だよね」
「魔界とか霊界だとそれは普通にその世界の種族なんだよね」
「ああ、こっちでも世界による認識の違いはあるぞ」
「幽霊とか精霊が普通だとハロウィンもやる意味がなさそうだね、納得」
「別に特別な存在でもないからね」
そんな幽霊や精霊への認識の違いが世界の違いだ。
なのでハロウィン自体やったとしても認識の問題もあり意味は薄いのだろう。
それがハロウィンなんてものがない理由なのだと感じた。
「んまかったぜぇ」
「上達したって分かるね、また機会があれば作るから」
「教えが上手いのか本人の飲み込みが早いのかは分からないな」
「元々のセンスなんじゃない」
そんなかぼちゃづくしのお菓子だった。
ハロウィンについては考え方や種族というものの違いだろう。
なのでハロウィンをやる意味自体が特にないという事だと思われる。
世界の違いというものを文化や種族から感じた話だった。




