本物の神様
エミールに連れられて神社にやってきた理津子とロザリオ。
神様に会うと言われると流石に緊張もするものだ。
とはいえこの世界の感覚では神様も世界の住人に過ぎないという。
そんな神様とはどんなお人なのか。
「失礼しマス、帝様、お客様を連れて来マシタ」
「エミールですか、中へどうぞ」
「では中へ入ってクダサイ」
そうして部屋の中へ案内される。
そこには赤い和装に身を包んだ美しい女性がいた。
「この人達は?」
「ご主人様のお友達になれないかなと思って」
「あ、えっと、香川理津子です」
「ロザリオ…です」
「私は天津綾音姫帝、帝で構いませんよ」
その名前は流石は神様といった感じか。
理津子もその名前には特に違和感は感じない様子。
ただロザリオは覚えにくそうな顔をしているが。
「それにしても友達になってくれそうな人とは、エミールも世話焼きなんですから」
「ご主人様は外にはあまり出ないんデス、なら話が出来る相手ぐらいはいいデスよね」
「そうですね、あとそんな硬くならなくて構いませんよ」
「そうは言われても神様なんですよね?」
「この世界では住人の一人に過ぎないと言われても、やっぱり…」
確かに神様と言われると緊張してしまうのも無理はない。
だがこの世界において神様は特別な存在というわけではないのだ。
神界の住人の一人であり、自由も普通にある。
だからこそ無礼という考えはないのだ。
とはいえ神界は身分制度があり、神様や神族にもその身分はある。
なので身分が大きな意味を持つ神界の神様は位という位置づけがされる。
ただしそれは身分格差などではなく、役割を与えられる事を意味する。
帝は少し事情があってこちらの世界で暮らしているらしいが。
「ですが外の人とお話が出来るのは私としても嬉しいです」
「それなら今度から時間のある時に遊びに来ていい?」
「もちろんデス、仲良くしてあげて欲しいデスよ」
「まあ僕にそんな話せる事もないけど、それでもいいなら」
「ありがとうございます、理津子さん、ロザリオさん」
それにしてもその美しさには目を見張るものがある。
理津子も帝の美しさには見とれてしまっているようで。
「神様ってだけあって、凄く美人だな、羨ましいよ」
「理津子さんだって綺麗ではないですか」
「あたしは帝に比べたら全然だよ」
「僕は美人だと思うけどな」
「そうデスよ、それで美人じゃないなら世の女性は泣いてしまいマス」
理津子はそもそもギャルメイクなんかをしているのも可愛いからだ。
とはいえロザリオはすっぴんを見ているので、そこまでとも思ってないらしい。
だからこそそこは素直に言うのだろう。
「私と理津子さんでは美しさの方向が違うのでは?」
「理津子は可愛いの系統で、帝はビューティーの方向だと思うよ」
「おー、ロザリオサン、言いマスね」
「そう言われるとそうなんだけどさ」
「美しさは一つではありませんからね」
そんな帝の言葉はやはり神様なのだろう。
この世界の住人の一人に過ぎないと言いつつも、その気品さは本物だ。
その眩しさにだけは理津子も勝てそうにないと思っていた。
「あの、そろそろ失礼していいですか」
「あら、すみません、エミール、送って差し上げてください」
「ハイ、ではそこまでお見送りしマス」
「また遊びに来てくださいね」
「はい、では失礼します」
そうして神社の入口まで見送ってもらう。
そこで挨拶をして神社をあとにする。
「なんか眩しい人だったなぁ」
「この世界の住人の一人って言われてもね」
「神様、この世界だとそれもあたしの世界とは違うね」
「緊張するよ、本当に」
そんなわけだが、時間はまだある。
せっかくなので他にも街を見て回る事にした。
「他にも見て回ろうか、行くよ」
「あ、待てって!」
思わぬ知り合いが出来た今日の出会い。
とはいえ時間はまだあるので、他にも見て回る事にした。
この街や世界の出会いはとても新鮮なものだ。
理津子は意外と楽観的にこの生活を楽しんでいるようである。