素晴らしい家電
相変わらずのドカ盛り飯を作っている理津子。
そんなこっちの世界も秋模様が見え始めているようである。
とはいえ食材の旬はこっちの世界と理津子の世界では違ってくる。
なので秋の旬の料理を考えてみる事に。
「りっちんも秋のメニュー考えてんのかね」
「もう夏は過ぎたと言っていいだろ」
「明らかに涼しくなってるもんね」
そんな話をしていると理津子が何やら持ってくる。
それは新しい家電のカタログのようだが。
「りっちん、家電のカタログなんて持ってどったの」
「こっちの世界の家電はあたしの世界に比べると高性能だけど利便性がどうにもね」
「まさか新しく買い替えるとか言わないよな」
「流石にそんな短期間で買い替えたりはしないからね」
「それで利便性がどうしたって話だよね」
理津子の言う利便性とは食材をぶち込むだけで料理が出来る的なあれである。
実際理津子も一人暮らしにも関わらずそういう家電は置いていた。
面倒な時にお世話になっていたとの事だが。
「でもそんな便利でなくてもよくね?」
「あたしの世界だと食材を入れてあとは放置するだけみたいな調理家電があってね」
「は?それは流石に冗談だろう」
「本当だよ、あとは適当にカットした野菜と冷凍肉入れてスイッチポンのオーブンとか」
「リツコの世界の人って怠け者だったりするの?」
怠け者かと言われればそうでもないと思う。
ただ効率や利便性を求めた結果生まれたのがそういった家電なのだろう。
まさに適当にやって美味しい食事が出来る奇跡である。
「でもなんでそんな恐ろしいオーブンなんか生み出したのさ」
「普段はきちんと作ってたけど、疲れてる時とかはお世話になってたよ」
「お前の世界の技術力ってどうなってるんだ」
「こっちの世界の方がレベルは明らかに上なんだけど?」
「放置してるだけで料理が出来る調理家電を作る人のいる世界に言われたくないよね」
なんにしてもそういう家電が理津子の世界にはあったという事だ。
理津子の父親もそうして文明の利器はありがたく使えと言っていた。
技術とは使って意味があるとは理津子の父親の教えだ。
「にしても放置してるだけで料理が出来るとは恐ろしいもんを作るね」
「それなりに高いけどね、まあ値段相応に便利ではあるよ」
「でもそれってどういう仕組みなんだ、さっぱり分からん」
「オーブンにしても焼くのも蒸すのも炒めるのも出来ちゃうからね」
「オーブンなのに炒めものまで出来るの?それ凄くない?」
こっちの世界には高性能な家電はこれでもかとある。
ただそれのような便利な家電は意外と少なかったりする。
それもあってなのか理津子は少し不便さを感じているらしい。
「でも便利って言われると確かにそういうのはこっちは珍しいよね」
「そうなんだよね、高性能なものはたくさんあるのに」
「まあ機界人が元々機能をゴテゴテつけるのを嫌う種族でもあるからなんだろうな」
「機界人の協力でそういうのが作られてるんだっけ」
「そうだよ、機界人は機能が多いと調整が面倒になるからってよく言ってる」
要するにこちらの世界の機械類は性能は高いが機能は必要最低限という事だ。
家電にしても兵器にしてもそうだが、シンプルに性能を求める感じらしい。
なので理津子の言うような家電は機界人の考えとは真逆の代物という事である。
「でもそういう便利なもんがあれば子持ちの家庭とかは助かりそうだけどね」
「そうなんだよね、実際作ってる時間でやりたい事が出来るわけだし」
「確かに便利だし、助かるとは思うが機界人の性質的に難しいと思うぞ」
「サインに相談したら作ってくれたりしないかな」
「一応工学なんかも修めてたとは思うけど、作ってくれるかな」
結局はこっちの世界の電化製品全般は機界人の気質がそのまま形になっている。
機能ではなく性能を求める気質なのが機界人である。
スマホではなくガラケーが上位機種なのも今になって分かった気がした。
「まあそういうのは諦めるしかないかな、それじゃ買い物行ってくるね」
「りっちんの世界は性能はもちろんだけど、機能をやたらつけたがるのかな?」
「話を聞く限りそんな感じに聞こえるよな」
「まさにこの世界の技術を支える機界人とは真逆ってわけか」
家電などを見てその理由も理解した理津子。
機界人の性質は機能の多さではなく性能の向上を突き詰める事。
それにより高性能かつシンプルなものが多い。
世界の違いを改めて肌で感じ取るのだった。




