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牛肉を煮る

こっちの世界にもすっかり馴染んできている理津子。

とはいえ食べ物の旬に関してはたまに間違えて買ってしまう模様。

それについては自分の世界の感覚が抜けきっていないのだろう。

だが旬が特にないものに関しては少しお高いものも買ったりしている様子。


「りっちんっていろいろ試作したりするけど、普通に美味いよね」


「なんか牛肉を買ってきてたみたいだけど、何を作ってるんだ」


「なんか甘い匂いがするよね」


そうしていると完成品を理津子が持ってくる。


何やら牛肉の煮込みのようだが。


「美味そうじゃん、これなに」


「牛肉の大和煮としぐれ煮だよ、牛肉が安かったからたくさん買ったしね」


「大和煮?しぐれ煮?」


「簡単に言うと甘めの味付けで煮込んだ牛肉だね」


「ふーん、とりあえず食べようよ」


牛肉の大和煮としぐれ煮、こういうものが作れるのも理津子らしさ。

父親に仕込まれたというのも伊達ではないのだろう。


こういう時間のかかるものも作れるのは経験の成せる技か。


「ん、これ美味いね、ワインに合いそうだね」


「よかった、煮込む時間が長いから簡単に作れるものでもないしね」


「でもこういうのも作れるって凄いな」


「肉を煮込む料理って柔らかくなるまでやるから、時間がかかるんだよね」


「そんなに長く煮込むんだ」


とはいえ理津子にとって大和煮やしぐれ煮は缶詰というイメージも強い。

実際はじめて食べたのは父親の酒の肴の缶詰だった。


普段はお酒は飲まない父親だが客が来た時などに限っては飲むらしい。


「あたしにゃ煮込み料理なんて無理だわ、我慢がプッチンしちまうし」


「でも大和煮もしぐれ煮もあたしには缶詰のイメージなんだよね」


「缶詰なのか?お前の世界ってこれを缶詰にしてるのか」


「うん、だからお父さんに聞いて作り方を覚えたんだけど」


「リツコの世界の缶詰ってどんなのがあるの?」


理津子の世界の缶詰は珍しいものもあったりして面白さはある。

実際父親の知り合いかららしく、缶詰がちょくちょく送られてきていた。


理津子もそれには興味を示していたわけで。


「缶詰って非常食のイメージなんだけど、どうなんよ」


「うーん、普段食べるようなのだと焼き鳥とかコンビーフ、あとは貝類とか」


「コンビーフってなんだ?牛肉なのは分かるけど」


「コンビーフっていうのはミンチ肉みたいなやつだよ、そのままでも美味しいんだよね」


「一応加工品なんだね、でもそのままでも食べられるんだ」


理津子が言うにはコンビーフが好きで、こっそり食べたりしていたとか。

料理にもよく使っていたそうで、炒めものなんかによく使っていたそうな。


こっちの世界だと自分の世界では当たり前のものでも手に入らないものもあるのだ。


「コンビーフねぇ、でも缶詰の牛肉ってなんか意外な気がするわ」


「面白いものだとおでん缶とかたこ焼きの缶詰とかもあったっけ」


「それ美味しいのか?お前の世界は食べ物で遊ぶような国なのか?」


「考える方はたぶん凄く真面目だと思うよ、あたしにはよく分からない世界だけど」


「うーん、リツコの世界ってよく分かんないよね」


なんにせよ缶詰に関してはたまに珍しいものがあるのが理津子の世界。

こっちの世界でも非常食のイメージが強いのは変わらない様子。


そう考えると中身の違いだけで文化はそこまで変わらないようである。


「缶詰って料理に使ったりも出来るし、非常食でなくても美味いよね」


「一番凄いのは空気の缶詰かなぁ、アイドルの部屋の空気の缶詰みたいなやつ」


「それ要するに空っぽの缶を売ってるって事だよな?詐欺で訴えていいんじゃ」


「まあ世の中にはそれでも買う人はいるし、考える人もいるんだよ」


「世界ってよく分からないね」


空気の缶詰は別の意味で斬新な発想である。

とはいえそれでも買う人はいるのだ。


世界は広いと実感する話だと思ってしまう。


「でもこの牛肉の大和煮としぐれ煮は美味いからあとで酒の肴にしよ」


「それはよかった、言ってくれれば作るけど、早めに言ってね」


「こいつの世界がよく分からないんだが」


「リツコの世界って変な人が多いのかな」


そんな牛肉の大和煮としぐれ煮。

肉料理の煮込み時間としては20から30分程度だが、料理としては長め。


調理時間の長い料理は何かとあるが、煮込み系は大体時間がかかる。


それでも好評なら嬉しい限りである。

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