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うなー!

こっちもすっかり夏の暑さを感じるようになった。

土地柄雨が多いものの、晴れた日の暑さはなかなか堪える。

それでも日本の夏に比べたら快適だと理津子は言う。

そんな中買い物で思わぬものを見つけて買ってきた様子。


「なんかいい匂いが漂ってくんね」


「今回は何をやってるんだ、何か焼いてるみたいだけど」


「リツコは基本的に不味いものは出さないから信頼出来るよ」


そんな話をしていると昼食が運ばれてくる。


運ばれてきたそれはうな丼である。


「焼いてたのってうなぎだったんか」


「うん、安かったから買ってきて捌いて焼いたの」


「きちんと捌けるのか、魚も捌けるし意外とそういうのに抵抗ないよな」


「お父さんに魚とかうなぎとか捌き方は教わってるから、なんてことはないかな」


「いい匂い、いい感じに焼けてるね」


とりあえずうな丼をいただく事に。

ちなみにタレは簡単なものではあるが、理津子が自作したらしい。


山椒とお新香もきちんと用意してある辺り、分かっている。


「うなぎって美味しいけど、別に贅沢品でもないよね」


「あたしの世界だとうなぎって高いんだよね、だから驚いたよ」


「そうなのか?世界が変わるとそういうのも変わるんだな」


「松茸もそうだったけど、世界や国が変わると価値も変わるものだよね」


「うなぎは調理法がそんなに多くないから安いって聞いたよ」


どうやらうなぎが安い理由は使い道が少ないかららしい。

ついでにうなぎそのものの価値も大して高くない事が重なっているとか。


うなぎを食べるのは海や川沿いに住んでいる国の人ぐらいなのだそう。


「うなぎって人気があるわけでもないしねぇ、不味くはないと思うけどさ」


「それは美味しいものを知らない人の言葉だよね、白焼きにしたうなぎは凄く美味しいのに」


「そもそもうなぎの旬は春だぞ?夏のうなぎなんてパサパサで美味しくないし」


「あー、そういえばあたしの世界とは旬も違うのか」


「確かにパサパサだけどタレが染みてるから不味くはないよ」


理津子の世界とは旬も違うこちらの世界の食べ物。

食べ物自体はほぼ同じものを見受けるが、旬が違うという事が多い。


そもそも理津子の世界でもうなぎの本来の旬は冬なのだが。


「でもタレやお新香は美味しいぜ、このお新香りっちんのお手製かな」


「うん、漬物はお父さんに教わってるから一通りは作れるよ」


「野菜はそんな好きな方でもないけど、このお新香は美味しいな」


「少年は漬物は意外と好きだよね、漬物だけは美味しそうに食べるし」


「理津子はお母さんの味じゃなくてお父さんの味で育ったんだもんね」


お新香とうなぎのタレの評判はいいようではある。

ただうなぎそのものは旬を外しているので、タレの味がメインになっている。


こちらの世界でも旬に食べる食べ物は美味しいと理津子は分かってはいるが。


「でもなしてうなぎ?旬でもないし」


「あたしの世界だと夏はうなぎを食べて乗り切ろうみたいなのがあるんだよ」


「よく分からない風習だな、なんでうなぎを食べるんだ?」


「昔の人が考えた風習らしいよ、ちなみにあたしの世界のうなぎの旬は冬だけど」


「それなのに夏にうなぎを食べるんだ、リツコの世界って少し変じゃない?」


そもそも土用の丑の日が出来るまではうなぎも高いものでもなかった。

要するに土用の丑の日やうなぎが高級品になったのは平賀源内が大体悪い。


そのせいでうなぎが絶滅しそうになっているのだから人の業を感じてしまう。


「まあやっすいうなぎでもこうして美味しく食べられるなら構わんけどね」


「本当に安くて驚いたよ、旬ならもう少し高いんだろうけど」


「なんにせようなぎは食べる奴の方が珍しい程度にはそんな扱いだぞ」


「本当だよ、丸々一匹買ってもあたしの世界より遥かに安いんだもん」


「世界や国が変わると価値変わるって勉強になってるよね」


こっちの世界のうなぎの旬は春。

夏のうなぎは大して脂も乗っていないパサパサのものである。


なのでタレでごまかしているものの、不味いとまではならなかった様子。


「今回はうなぎよりお新香が美味しかったっす」


「うん、旬については確認しておくから」


「不味くはなかった、ただ旬を逃すとこんなものだとは分かっただろ」


「凄く勉強になったよ、脂の乗ったプリプリのうなぎ、絶対食べてやる」


「変なスイッチが入ったかな」


うなぎ自体はなんとか食べられたものの、また一つ勉強になった。

旬の食べ物の美味しさも改めて理解した。


それは一つの決意もさせたようで。


「それじゃ片付けるね、お新香は希望があればまた作るから」


「りっちんも大変だねぇ」


「食べ物の旬はまだ完全に覚えてないしな」


「うなぎも悪くはなかったけどね」


そうしてこっちの世界のうなぎ事情を勉強した理津子。

理津子の世界とは食べ物の旬が違うものは多い。


そしてどっちの世界でもうなぎの旬は夏ではないという事。


美味しいうなぎを食べると理津子はその胸に誓った。

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