最速を求める
先日花壇で見つけた機界人の事でようやくサインが来てくれる事になった。
彼女を屋敷で預かっているうちに花壇の事もいろいろ進展した。
とりあえず秋に向けて植えられそうな花の種や球根を確保した理津子。
晴れている日にでも植えておこうという事になった。
「待たせました」
「あ、サイン、待ってたよ」
「とりあえずその機界人というのを見せていただきますね」
そのままその機界人を寝かせてある部屋に通す。
そこで様子を見てもらう事に。
「どうかな」
「ふむ、やはりこれはエネルギー切れですね」
「機界人は食べ物でもエネルギーには出来るんだよな」
「はい、ただ機能停止してしまうと食べ物は入らなくなります」
「ならやっぱり機界人のエネルギーじゃないと駄目なんだね」
とりあえずサインがエネルギーの水晶を取り出す。
それを彼女の腹部に当てるとそれが吸収されていく。
それから少しして意識を取り戻した様子。
「ここは…そうだ、飛んでたらエネルギーが切れて…」
「意識などは大丈夫ですね」
「あ、はい、大丈夫です」
「とりあえずは安心かな、動ける?」
「はい、なんとか」
そのままリビングに移動する。
そこで簡単なお茶などを出して話を聞く事に。
ついでに名前も聞いておく事に。
「あなたのお名前を聞いてもいいですか」
「コードΩ66、セテラです」
「コード?セルベーラとは違う感じなんだ」
「機界人にも様々ですよ、開発者の趣味が反映されるケースは多いです」
「趣味なのか」
名前はとりあえずセテラというらしい。
機界人のアンドロイドやロボットの名前は開発者の趣味がよく反映されるらしい。
セルベーラが人らしい名前に対し、セテラの名前がロボットらしいのはそういう事だ。
「それでなぜエネルギー切れでこの屋敷の花壇に?」
「えっと、空を飛んでいたらそのまま」
「空を飛べるんだ、流石は機界人」
「それに私は最速を求めてこの世界の空を飛んでいますから」
「最速って、なんでまた」
どうやら彼女曰く最速になりたいという事らしい。
それで常日頃から空を飛んでいるらしいとの事。
その結果想定ミスによりエネルギー切れで屋敷の花壇に落ちたらしい。
「ふむ、空戦型ですか、珍しいタイプですね」
「メカニカルウィングを搭載した人型のアンドロイドはまだ少ないですから」
「人型で空を飛べるって珍しいんだね」
「はい、空を飛ぶ技術自体は一般化されていますが」
「人を飛ばすのと乗り物を飛ばすのだといろいろ違ってくるのかもな」
セテラとサイン曰く人型で空を飛べるタイプは珍しいという。
この世界にも提供している航空機などはそれとは異なる技術とのこと。
なので空を飛ぶというのは人と物では別のジャンルになってくるらしい。
「それでこれからどうしますか?」
「また飛びに行きます、私は最速になりたいので」
「それはいいんだけど、家とかはあるの?」
「家、ですか、今はありません」
「家なしだったのか」
セテラはどうやら家がないとの事。
屋敷で面倒を見てもいいが、人も増えてきている。
それならとサインが自分の研究室で助手として面倒を見てくれる事に。
「とりあえずセテラさんは私の研究所に助手として来てもらいます、構いませんか」
「それは構いません、助けていただいたお礼に助手でもなんでもします」
「とりあえず話はまとまったかな」
「はい、まとまりました」
「ならよかったんだけど」
セテラはサインの研究室で面倒を見てくれる事になった。
機界人は誰かに従う事も多い種族だ。
特にロボットやアンドロイドは自立した意思もあるが、基本誰かに従うものという。
「とりあえず帰る前に触診をしておきます、いいですね」
「分かりました」
「アンドロイドでも触診をするのか」
「機界人の研究者はそういう独特の感覚を備えているんですよ」
「ふーん、面白いな」
その場でサインがセテラの触診を済ませる。
特に問題もなく終わったようで、この一件は解決だ。
セテラはサインに任せる事になる。
「では失礼しました」
「お世話になりました、それでは」
「最速になりたい、夢はそれぞれって感じかな」
「機界人らしい夢とも言えるけどな」
そうしてセテラは無事に回復した。
サインもやはり機界人としても優秀なのだろう。
機界人の人間は基本的に科学者や技術者だという事もある。
手先が器用なのは世界柄なのかもしれない。




