表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/343

和菓子は芸術

こちらの世界もすっかり夏模様になった様子。

とはいえ夏は雨が多くなるとロザリオは言う。

そんな夏なので少し清涼感が欲しいと思う次第。

そこで暇を持て余したプロの犯行が始まる。


「りっちん、何作ってんだろ」


「暑いから清涼感のあるものを作るって言ってたぞ」


「雨が多いとはいえ月の半分は晴れるもんね、ここも」


そんな話をしていると理津子が出来上がったものを持ってくる。


何を作っていたかと思えば、どうやら和菓子だったようで。


「りっちんさ、これで洋菓子が苦手とか嘘言うんじゃねーよ!」


「いや、和菓子はお母さんが得意だったから得意になっただけだからね」


「にしても凄いな、どうなってんだこれ」


「お母さんに教わって覚えた夏の和菓子だけど」


「これお菓子っていうより美術品みたいなんだけど」


理津子が作ったものは透明な寒天の中が海のようになっているもの。

青い鳥のアプリなどで何度か見ていたらしく、それを母親に聞いたのだとか。


要するにプロ直伝の一品である。


「これ食べられるんだよね?」


「食べられるよ、あくまでも和菓子だからこれ」


「食べるのがもったいないな、でも母親が得意っていうのは影響するものなんだな」


「お母さんはプロの職人ってわけじゃないんだけどね」


「でもこんなものを作れるなんて、リツコのお母さんって凄いんだね」


理津子の母親は和菓子職人というわけではない。

ただ和菓子作りの教室を開く程度には腕はあるらしい。


本人が言うには和菓子は母親、つまりお婆ちゃんに教わったと言っていた。


「なんでこんなプロの犯行が出来る人が洋菓子苦手なの?嘘でしょうよ」


「食べていいよ、そのために作ったんだから」


「ん、美味しいな、透明だからと思ってたけど普通に甘い」


「そりゃ和菓子なんだからね」


「美味しいけど、なんか違うっていうか」


こういうところは血は争えないとでも言うのか。

料理が好きで和菓子作りも得意というのは、両親の血を引いている証拠か。


洋菓子が苦手なのは家ではそんなに作らなかったからなのだろう。


「なんでこれが作れるのに洋菓子はクッキーとビスケット程度なのよ」


「家で作る機会が少なかったからね、お父さんはお菓子はそんな作らないし」


「つまり作る機会が少ないから洋菓子だけ微妙なままなのか」


「そういう事、だから洋菓子だけ上達しなかったんだなって思う」


「人って分からないなぁって思うんだけど、これ見てると不思議な感じかも」


洋菓子は作る機会がそんなになく、勉強し始めたのは数年前と本人は言う。

そこから勉強してクッキーとビスケットはそこそこ上手くなったのだとか。


ショコラクッキーが得意なのは、チョコレートが好きだったからというのもある。


「りっちんのママさんって和菓子作りが得意なんだなって分かるけどさ」


「そもそもあたしが料理が得意なのもお父さんの影響だと思ってるし」


「美味しかったけど、あれはお菓子じゃなくて芸術でいいんじゃないか」


「でもお菓子って和洋関係なく芸術みたいな感じはあるでしょ」


「そういえばお菓子職人のコンテストとかそんな感じだね」


和菓子も洋菓子も芸術品みたいな部分はある。

お菓子職人のコンテストはそんな感じのものがよく見られる。


とはいえ食べるものではあるので、もったいないというのも分かる。


「にしても美味しかったね、流石はりっちんのママン直伝だわ」


「一応教室を開けるぐらいには上手いからね、お母さん」


「教室までやってるんだな、凄いじゃないか」


「お父さんは料理教室やってるしね、家庭でも作れる簡単な本格派なんだって」


「お父さんもお母さんも料理上手なんだね、リツコの家って」


ただ理津子曰く母親は料理はそこまででもないらしい。

簡単なものなら作れるが、父親のような本格的なものは無理なのだと。


家では台所を預かるのは基本的に父親なのが理津子の家だったと。


「でも男の人が台所を預かるっていうのも珍しくね?」


「それ言うならプロの料理人の有名人だって大体は男の人なんだけど」


「それはたぶん一つの事を突き詰めるのが男に多いからだと思うぞ」


「そうだね、大学でそっちの方の先生に聞いたけど、学者脳が男の人には多いって」


「プロの人に男の人が多い理由なのかな」


プロは男が多いという理由。

理津子が大学で聞いた事があるようで、学者脳が男に多いかららしい。


一つの事を突き詰める、それが学者脳だとか。


「それじゃ片付けるね、夜のリクエスト決めておいてね」


「りっちんの家庭環境って何気に凄くね?」


「親の影響受けまくりだよな」


「でも美味しいからいいよね」


ロザリオ達も理津子の家庭環境が垣間見えているようではある。

ギャルスタイルなのはただの背伸びだと本人も言う。


料理が得意で和菓子も得意だが洋菓子はそうでもない。


それは環境がそうさせたのだという事である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ