雨の日は引きこもる
こっちの世界も夏が始まっているので、当然暑くなる。
それと同時に夏は雨が増えやすい季節だとロザリオは言う。
どうやら立地が関係しているようで、夏は雨の多い土地らしい。
そんな今日も雨なので、外には出たくないと言っているようだ。
「すっかり外は雨だねぇ、ねむ」
「こんな雨の日でもあいつは元気だな」
「でも雨の日だからゆっくりお茶とお菓子もいいと思うよ」
そんな理津子はアノットに教わって洋菓子も勉強中。
それの試作品を作っているようだが。
「お、出来たっぽいね」
「はい、とりあえずガトーショコラの試作品なんだけど」
「いきなりガトーショコラとか教えたのか」
「一応レシピは守って作ったから、そこまでおかしい味にはなってないと思うよ」
「すんすん、匂いは普通にチョコレートだから、たぶん平気だね」
とりあえずそのガトーショコラを切り分ける。
見た目は普通に美味しそうなガトーショコラだ。
いきなりガトーショコラを教えるアノットもあれだが。
「んー、これなら普通に人前に出せる味だね、先生の教えがいい証拠よ」
「よかった、でも夏なのに雨が多いんだね、こういうのが捗るよ」
「ここは土地の問題もあるんだよ、雨雲が風に流されてよく上に来るんだ」
「確か高い山があると雨雲はそこで消えるから、雨は少なくなるんだっけ?」
「ここは港町なのもそうなんだけど、高い山は遠いんだよね」
高い山は雲を遮るもの。
つまり高い山に遮られた土地は雨が少なく、雪も少ない土地になる。
ここは平地に加え港町なので、雨雲が消えずに風によく流されてくるとか。
「実際夏なのに雨が多いよね、この辺」
「あたしの国も夏は台風がたくさん来るし、スライダーみたいにカーブして来るから」
「リツコの国は夏は大変なんだな」
「あたしの住んでた国は自然災害大国だから、水害に火山、地震とかいろいろだよ」
「自然災害大国なんて凄いね、それでも人が暮らせてるのも凄いかも」
理津子の住んでいた国はそれこそ季節を問わない自然災害大国だ。
もはや台風程度では動じないし、本当の意味での大地震が来ない限り動じない。
大きな揺れが来ても平然とネットを確認するような国である。
「りっちん、過酷な環境で生きてたんだねぇ」
「ここは地震とか来ないの?」
「地震自体は起きる国もあるな、ただここはあるにはあるが少ない方だと思う」
「まあ震度5ぐらいなら動じないから、あと台風とかは来ないのかな?」
「台風?ハリケーンの事でいいのかな?」
こっちではどうやらハリケーンと呼んでいるようだ。
そこは世界や国の違いになる。
雨雲が西から風で流されるという事はそういう事もあるのではと思う。
「一応来るよね?ハリケーンは偏西風でよく流されるし」
「あ、一応来るんだね、あたしの世界でも台風は野球の変化球みたいに曲がってたし」
「でもハリケーンはそんな発生しないよな、湿度がそんな高くないからだとは思うけど」
「そういえば港町なのに湿度は思ってるより低いよね、ここ」
「ハリケーン自体は夏には来るけど、そこまで多くないって感じかもね」
理津子の世界だと凄い時には台風が複数同時発生したりもする。
発生する理由として海水の温度が言われている。
ここは港町の割には湿度が思っているよりも低いので、そこまで発生しないのか。
「その話を聞く限りだとりっちんって多湿な環境で生活してた?」
「うん、凄い時だと湿度が80%とかも普通にあったかも」
「は?そんな湿度の高い土地なのか、お前の住んでた国って」
「だから夜はとにかく辛いんだよ、湿度のせいで熱帯夜なんてものもあるし」
「湿度が高いから気温が下がらないって事だね、リツコの国って過酷すぎない?」
実際熱帯地域に熱帯夜なんていう言葉はないという。
理津子の住んでいた国は湿度のせいで夜でも気温が下がらない。
それにより湿度が運んでくる不快感との共存なのだ。
「高温多湿、そんな環境で普通に生きてるりっちんの国の人は逞しすぎんね」
「こっちに来てそれを実感してる、湿度が下がっただけでこんな快適とか」
「港町だから世界で見たらこれでも湿度は高い方なんだけどな」
「いや、本当にもう湿度が低いって素晴らしいってあたしは思ってるからね」
「リツコが活き活きしてる理由が分かった気がする」
湿度はそれだけ大切だという事。
理津子が活き活きしてるのは自分の国より湿度が低いから。
それは人を変えるには充分すぎた。
「さて、夜のリクエストとかあったら決めておいてね」
「あいよ」
「食材は大体は買い込んであるんだな」
「この季節は雨が多くなるからね」
そんなこの港町がある土地の事情。
雨雲は来るが台風は思ったよりも発生しない環境。
やはり湿度はそれだけのものだと感じる。
湿度が下がっただけで理津子は元気になった。




