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お婆さんは凄い人

家の方の増設なども一段落した様子。

そんな理津子は今度は何を作ろうかと考えていた。

ちなみに今回は趣味のクッキー作りの材料も買った帰りだ。

そんな帰り道で一人のお婆さんが目に入る。


「さて、クッキーの材料は買ったし、あとはビスケットもついでに焼こうかな」


「ん?あれなんだろう」


「少し見に行ってみようかな」


人だかりが出来ているようで理津子も見に行ってみる。


どうやらお婆さんがテンプレのようなワルに絡まれているようだ。


「それを返してください」


「いや、家まで運んでやるって」


「何してんの?」


「んー、あのお婆さんが不良っぽい子に絡まれててね」


「ふーん…」


とりあえず理津子が話を聞きに行く。

様子を見る限り暴力を振るっているようには見えない。


少し違和感もあるので、間に入る。


「ねえ、キミ、もしかしてお婆さんを助けようとしてる?」


「そうだよ、荷物が重そうだから持ってやるって言ったんだけど」


「やっぱりか、お婆さんは悪いからって事だよね?」


「はい、見ず知らずの人にそこまでしてもらうのも…」


「仕方ないね、ならあたしも手伝うから、それで手打ちにしてくれる」


明らかにお婆さんが持つ荷物の量ではないというのは分かる。

理津子とその不良で荷物を家まで運んであげる事に。


お婆さんもそれでとりあえずは納得してくれた。


「ここが婆さんちか、家の中まで運んでやるよ」


「すみません、本当なら平気なんですが」


「お婆ちゃん、そんな力があるようにも見えないのに」


「とりあえず玄関に置いていただければいいですよ」


「おうよ!任せとけ!」


そのまま家に荷物を運び入れる。

不良はお礼はいらないと、名前も名乗らずに去っていった。


不良なのにかっこいいじゃんと理津子は思ってしまった。


「それじゃあたしもそろそろ」


「あの、その荷物、あなたお菓子作りをするんですか?」


「これ?お菓子はクッキーとビスケットぐらいかな、あとはそこまで得意でもないよ」


「なるほど、あの、少し中でいいですか?」


「なんかあるのかな、なら少しだけ」


何かあるのか、お婆さんは理津子を家に入れてくれた。

そのままキッチンに通される。


そのキッチンは見るからにお菓子作りのための設備があった。


「この設備って…」


「ええ、私は数年前までお菓子屋をしていたんです」


「それが今は引退したって事?」


「はい、体がもう限界でして、悔しいものです、それで泣く泣く引退しました」


「なるほど、歳には勝てない、か」


そのまま話を続ける。

お婆さんはお菓子屋をしていた一方で貧しい子供にクッキーを配っていたという。


それはお婆さんが勝手にやっていた事で、報酬は一切受け取っていなかったという。


「私も若い時、それこそ20歳から60年も続けていたんですよ」


「はぁ~、それは凄いな」


「それでですね、これをあなたになら託してもいいと思いまして」


「これってお婆さんのクッキーのレシピ…こんなの受け取れないよ」


「いいえ、あなたに託したいんです、あなたからはどこか信じていいという感じがして」


それは理津子がこの世界の人間でないからこそ感じられるものなのか。

元々人はいい上に、世話焼きな一面もある理津子。


異世界の人間から感じられる何かがあるのかとも思った。


「本当にいいんですか?」


「はい、私の味を残したいのもありますが、あなたがクッキーとビスケットぐらいと」


「うん、お菓子はクッキーとビスケットとかそんな難しくないものぐらいかな」


「ならその方がいいと思いましたから」


「うーん、まあ上手く作れるっていう保証はないけど、それでもいいなら」


この世界に来てから理津子は不思議な反応をされる事がたまにある。

それは理津子が異世界から来た人だからこその特別な何かがあるのか。


このお婆さんも理津子にそれを感じたのだろう。


「それじゃこれは受け取っておくね」


「はい、あと私の事は内緒で頼みますね」


「お婆ちゃんが60年もお菓子屋をしてた凄い人だって事かな」


「まあそんなところです」


「分かった、それじゃお婆ちゃんも元気でね」


そうして理津子は家をあとにする。

ちなみにお婆さんは、店を続ける体力はないがお菓子作りは今もしているそうな。


家を訪ねてくる息子にクッキーをあげるのが今でも楽しみなのだという。


「クッキーのレシピかぁ、あたしもお菓子作りもやってみようかな」


「和菓子ならお母さん仕込みで作れるんだけど、洋菓子はどうにもね」


「洋菓子作りも勉強しよう、帰ったらまずは簡単なものから!」


そうして思わぬ形でそれを受け取った理津子。

本人は洋菓子はクッキーとビスケットぐらいしか得意でないという。


これもいい機会だという思い、洋菓子作りもやってみる事に。


そうして理津子の洋菓子作りはアノットに聞くところから始まる。

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