ナンだこれは
ピザ窯が完成してから時折ピザを焼いている理津子。
そんな中兼ねてから試そうと思っていたナンを焼く事に。
ついでにカレーも作ってお昼はナンでカレーにする事にした。
理津子もお金が使えるのをいい事に、いろいろやっているようではある。
「お昼はカレーにするってりっちん言ってたね」
「あいつスパイスから作る本格派だからな、そこまで求めてない」
「でも美味しいならいいじゃん」
そんな話をしているとそのナンとカレーが運ばれてくる。
理津子の世界で言うインドカレーだが、インドではあまり食べないものだ。
「こいつがナンってやつなんか、つまりパンだよね」
「こっちだとナンってないの?」
「いや、似たものはある、たぶんリツコの世界と名前が違うからだと思う」
「なるほど、同じ名前のものもあるしそうでないものもあるのか」
「それより食べようよ」
とりあえずはナンでカレーをいただく事に。
今回はそんな感じもあってなのか、カレーはサラサラのタイプだ。
味はカレーライスの時と差はないらしい。
「ん、意外と美味いじゃん」
「よかった、ナンはあまり焼いた事がなかったから」
「経験自体はあるんだな」
「うん、まあ作り方こそ覚えたけど基本的には見様見真似かな」
「でもナンって大きいんだね」
理津子もインドカレー屋で食べたナンが大きかったのは覚えている。
それと同じぐらいのサイズで焼いたつもりではある。
なのでやはり大きくなってしまった。
「にしてもナンってこんな大きいもんなんだ、ナンだけにナンだこれは、ってか」
「それ定番のギャグだよね、アノットってたまにおっさん臭いっていうか」
「こいつのギャグのセンスは時間が止まってるのかと思うな」
「少年、結構辛辣だよね」
「でも美味しいからいいんじゃない?」
定番のギャグはともかく、割と好評なようではある。
普段はドカ盛りの食事が基本だが、こういうのも悪くはない。
ナンで食べるカレーも乙なものである。
「それにしてもスパイスから作るカレーって美味いんね」
「一応お父さんに教えてもらって自分の配合を作ったから」
「料理人に教えてもらったなら間違いないとは思うけど」
「あたしのカレーは辛さは程々の痺れカレーだから」
「確かに刺激的というよりピリッとした感じの辛さだよね」
理津子のカレーは辛さ自体は程々なのだが、舌が痺れるような味がする。
要するに麻婆豆腐のような辛さのカレーなのだと。
それは理津子のアレンジレシピの一つでもあるそうで。
「あたしも料理は得意だけど、りっちんみたいなカレーは思いつかんわ」
「カレーなんだけど、辛さは麻婆豆腐を意識してるんだよね、だからだと思う」
「普通のカレーは辛いものだと純粋に刺激が来るけど、これはそうでもないからな」
「あたしの世界だとカレーと麻婆豆腐を混ぜたマーボーカレーなんてのもあるから」
「つまりカレーの味の中に麻婆豆腐の辛さを混ぜた感じなのかな」
理津子が言うにはそのマーボーカレーは意識しているそうな。
見た目や色はカレーなのだが、辛さは麻婆豆腐のような辛さが来る。
普通のスパイスに花椒を混ぜているのは確定の辛さだ。
「こういうアレンジが出来るのは料理人の娘って感じだよね」
「麻婆豆腐の辛さって花椒なんだよ、東洋のスパイスで痺れる辛さなの」
「それでカレーも痺れるような辛さになってるのか」
「さて、ラッシーも作ったから少し待ってて」
「ラッシー、待ってました」
そんなわけでラッシーを持ってくる。
店のものとは少し違うが、理津子が自分でブレンドしたもの。
夏も近くなっているので、冷たいラッシーは美味しい季節だ。
「ん、こいつぁ美味いね、神の飲み物っていうのも分かるわ」
「でしょ?これお店の人に教えてもらったんだよ」
「そりゃ美味しいわけだな」
「カレーも満足してくれたみたいで何よりかな」
「うん、美味しかったよ」
そんなカレーもラッシーも満足してくれた様子。
理津子のカレーの秘密も少し見えたお昼時。
麻婆豆腐の辛さを意識したカレーは意外と美味しいようだ。
「それじゃ片付けてくるね」
「あたしお昼寝しよっと」
「お前、少しは働け」
「私もお昼寝~」
そんなピザ窯で焼いたナンは意外と好評だった様子。
ナンだけにナンだこれは、というサイズだったのは言わずもがな。
ナンは大きいものという偏見は確かにあるようではある。
それが無料で追加されるインドカレー屋は凄いと思う限りの理津子だった。




