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ロザリオと学校

お花見はすっかり満足した結果に終わった。

そんな中、理津子は少し気になっている事がある。

それは掃除の最中などに見るロザリオの学生服。

ロザリオは学生ぐらいの年齢のはずなので、それについても聞いてみる事に。


「ねえ、少年、少しいい」


「なんだよ、神妙な顔をして」


「掃除してる時に学生服とかの一式を見たんだけどさ、学校に行ってないの?」


その質問にロザリオも顔を曇らせる。


もちろん無理矢理聞き出そうという事では決してない。


「あれか、僕が不登校だって言ったらお前は説教でもするのか」


「説教はしないけどさ、学校は行かないと青春コンプレックスが酷くなるよ」


「青春とかくだらない、そんなの建前で本当は遊びたいだけだろ」


「あー、こりゃひねくれてるし、結構こじらせてるタイプか」


「なんだよ、お前も僕に学校に行けっていうのか」


理津子は別に学校に行けというつもりはない。

実際理津子も大学では大勢で群れるようなタイプではなかった。


空気というか、ノリが合わなかったというのはその通りなのだ。


「あたしもさ、夢を見て大学に行って理想と違うなぁって思ったわけだよ」


「それはお前が空気を読まないからじゃないのか」


「あたしはなんていうか、こう勉強したかったんだよ、なのに周りは遊んでばかりだし」


「そこは僕とそんなに変わらないんだな」


「少年もそんな感じだよね?屋敷で勉強してるのは知ってるし」


つまりは理津子もロザリオも勉強がしたくて学校に行っていた。

だが現実は理想より遥かにつまらなかったのだろう。


だからこそこの世界で不思議と二人は気が合っているのか。


「それで学校はつまらなかった?それだけ聞きたくてさ」


「つまらなかった、勉強のレベルは低いし、周りはうるさいだけで馬鹿しかいないし」


「それで不登校か、卒業とかはどうするの?」


「卒業なんて勝手にすればいいよ、あんな低レベルの卒業なんて願い下げだし」


「そっか、なら別にいいんだけどさ」


その反応にロザリオは意外そうな顔をする。

学校に行けと言わなかった事が驚きのようだ。


そこも理津子の懐の大きさなのだろうか。


「今までも家政婦は何人か雇ったんだよ、でもみんな学校に行けって言うから」


「それでわざわざ異世界召喚で家政婦を呼んだと」


「お前は今までの奴らとは違う、空気は読めないしベタベタしてくるし」


「あー、それはなんていうかさ、親に困ってる人には親身になれって言われてたから」


「お前の親はどれだけ徳を積んだ人間なんだ?毎回思うが」


理津子の親はそれだけ愛情を注いでいたのだろう。

だからこそ背伸びをしてギャルファッションになっても根本はそのままだった。


まさに教育の賜物である。


「だからあたしは無理に学校に行けなんて言わないよ、嫌なら嫌でいいよ」


「本当にどこまでも癪に障る奴だな、お前」


「嫌なら逃げていいんだよ、でも逃げ続けてたらいつかは崖に辿り着く、それだけ」


「逃げてもいい、でも逃げ続けてたらいつかは崖に辿り着く…」


「少年はきちんと勉強してるでしょ?それは勉強が嫌なんじゃなくて学校が嫌って事だし」


確かにそれは当たっている。

ロザリオが嫌なのはあくまでも学校という環境だ。


勉強自体は好きで、こうして独学で様々な事を学んでいる。


「あたしもさ、学校に理想を求めすぎてたとこはあるもん、だから今は凄く楽しいよ」


「僕の都合で呼んでおきながら、お前はこっちに馴染んでるもんな」


「理想とか期待値っていうのかな?それが高くなりすぎるほど反動は大きいの、失望とか」


「僕もお前も理想を高く見すぎてたって事か、なんとなく納得だな」


「だから学校に行く事を無理には勧めない、勉強する手段なんていくらでもあるからね」


理津子は普段は空気を読まないくせに、こういうところは懐が深い。

それはロザリオが言って欲しかった言葉なのか。


ロザリオも理津子も理想を高く見ていた事からの脱却なのだろう。


「あたしも少年も勉強する事は好きでしょ?ならそれでいいんだよ」


「そうだな、現実に立ち返ればこうも楽になれたんだし」


「だからお互い勉強、それでいいよ」


「お互い様、そういう事だな」


ロザリオの事情もある程度は汲み取る理津子。

自分も学校に対して理想を高く見すぎていたからこそ分かる気持ち。


ロザリオも理津子でよかったとどこかでは思っている。


学校に夢を見て夢破れたからこその二人なのかもしれない。

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