桜舞うお花見~後編~
お花見も始まり、各自料理に手を付け始める。
天気は良好であり、いい花見日和だ。
ロザリオも乗り気でなかったものの、なんだかんだでついてきている。
そんな晴天の中、理津子も満足げだ。
「ん、自分で言うのもあれだけど美味しいね」
「ハイ、流石はリツコサンデスね」
「やっぱ花より団子よねぇ」
アノットは花より団子なのは言うまでもない。
とはいえエミールの料理もなかなかに美味しいようで。
「このエミールのつくね串も美味しいね」
「ハイ、料理は得意デスから」
「流石は帝の世話係ってところかな」
「エミールってなんで帝の世話係になったん?」
「それは少し気になるかも」
エミールが帝の世話係になった理由。
それは仕事を探していたからというのもあるらしい。
こちらの世界に来た際に偶然その仕事を見つけたからと言うが。
「帝様は家庭的な事が苦手デスから、私がなんとかしてあげようと思ったのデス」
「でもさ、エミールってそこそこいい身分なんでない?」
「ハイ、獣界だとそれなりにいい身分デスよ」
「そんな人がよく世話係になろうと思ったね」
「元々誰かの世話を焼くのが好きなのデスよ」
世話焼きなのは元々なのだという。
だからこの仕事を見つけた時、これだと思ったのだそうだ。
本人にとっては天職だったのだろう。
「それに今日みたいに帝様が楽しそうにしていると私も嬉しいデスから」
「なんか分かるかも、あたしも作った料理を美味しいって言ってもらえると嬉しいし」
「リツコサンは料理が得意で羨ましいデスよ」
「エミールだってこんな美味しいもん作れるんだから、大したもんでないのよ」
「料理は元々出来たのデスが、本格的に覚えたのはこっちに来てからデスよ」
そんな話に花を咲かせる一方で、ロザリオ達も料理をつまみながら話をしている。
ロザリオ達はそれはそれで話は合うのだろう。
似た者同士というか、そんな感じで。
「帝はなんで絵を描こうと思ったんだ」
「元々外に出る事があまりなかったので、家の中で出来るものを考えてたらこれに」
「なんか分かるかも、僕も外で遊ぶとか昔から苦手だったなぁ」
「つまり二人とも外で遊ぶのが苦手な人なんだ」
「そう言われると僕達って意外と似た者同士なのかな」
ロザリオも帝も外で遊ぶようなのは苦手なのだ。
帝は事情もあるが、ロザリオは年齢的に遊んで生きるような年齢だ。
だが理津子も見た目がギャルなだけの陰キャなので、意外とそんなものかと思ったり。
「そういえばロザリオさんは学校には行ってないんですか」
「学校なんて楽しくない、勉強自体は家でしてるんだけど」
「サボってるってわけでもないんでしょうか」
「そういえばロザリオの部屋に学生服とかあったよ」
「だとしたら学校自体は籍をおいてたりするんですか?」
セルベーラが見たというロザリオの学生服などの一式。
それはロザリオが学生であるという事を示唆している。
本人は言いたがらないが、ロザリオは学校をよく思っていないのだと感じる。
「無理に言わなくていいですけど、学校は嫌いですか?」
「嫌いだ、人にいちいち干渉してくるのは教師も生徒もそうなんだから」
「なるほど、確かに学校というのはクラスメイトや教師の当たり外れはありますし」
「私の世界だと勉強は基本的に通信でやるから、学校って概念はないなぁ」
「セルベーラさんの世界って凄いんですね」
学校、言葉はあれだが、言うなればクラスメイトと教師のガチャだ。
それで外れを引いてしまうとそれこそ人生にまで影響する。
ロザリオが学校に行かなくなった理由については優しさなのか、聞かないが。
「でも学校って集団生活を学ぶ場所では?」
「僕はルールを守れないような奴が大嫌いなんだ、だから学校も好きじゃない」
「年齢的にそんな感じの年頃ですから、それは仕方ないのでは」
「ロザリオは結構生真面目で堅物だもんね」
「とりあえず今日は食べましょう、食べてスカッとしましょうか」
ロザリオにも事情があるという事を感じた帝。
お花見はそのまま楽しい時間として終わっていった。
理津子もロザリオの学生服などは部屋の掃除の際に見ている。
それについて深く言及してこないのは、何か感じているからなのだろう。
とはいえ帝とは意外と仲良くなれそうだと、ロザリオは感じていたのは間違いない。
帝もロザリオとは仲良く出来そうだと感じていた。




