桜舞うお花見~前編~
エミールに誘われるままお花見の約束をした理津子。
今日はそんなお花見のため神社を訪れていた。
アノットとセルベーラもなんだかんだで一緒である。
神社には桜が綺麗に咲いていたようで。
「お待たせ」
「お待ちしていマシタ、こちらに来てもらえマスか」
「本当に綺麗に咲いてるんだな」
とりあえずエミールについていく。
食材などはエミールが用意してくれているようだ。
「とりあえずリツコサンは私を手伝ってクダサイ」
「分かった」
「ロザリオサン達は少し待っていてクダサイね」
「はいよ」
「ああ」
理津子はお花見で食べる料理を作るためにエミールと厨房へ。
ロザリオ達はそれを少し待つ事に。
神社の庭には桜が綺麗に咲いている。
「あ、帝さんだっけ」
「あ、ロザリオさんと…」
「アノットだよ、シクヨロ」
「はい、よろしくお願いします」
「セルベーラだよ、よろしくね」
帝は普段は外にはあまり出ないので、こういう時は貴重でもある。
料理が出来るまで少し話でもする事にした。
帝と改めて話すのも何かと緊張する様子。
「えっと、帝は神界の神様なんだっけ」
「はい、まあ神様と言っても人界でイメージされるようなものとは違いますが」
「人界だと神様って創作とか宗教ってイメージだしねぇ」
「でも私はそんな高貴な存在でもなくて、普通にただの一人の女性ですよ」
「神様って特別な力とか使えたりするの」
帝が言うには神様は神通力なら使えるという。
他の種族で言う魔法とそこまで大きな違いもない様子。
神様とは言うが、人界でイメージされるものとはだいぶ違うとの事。
「帝って普通に美人だな…」
「そうですか?外にはあまり出ないので、そういう評価はよく分かりませんが」
「やっぱ神様ってのはそういうもんなん?」
「でも私は結構ズボラな性格ですから」
「ん?それ何かな」
帝が持っているのはお絵かき用のタブレットの様子。
ガラケーが最新機種のこの世界でも、そういうものはある。
ちなみに絵を描く以外の使い道はない。
「帝って絵を描いたりするんだ」
「はい、ネットにアップしたりしてます」
「見せてよ」
「こんなものですが」
「おー、というか上手いね」
帝の描いた絵は普通にプロのそれだった。
別に本人は絵描きとかそういうものを名乗るつもりはないという。
ただ趣味の範囲でやっているだけなのは、外にあまり出ないからなのだろう。
「帝の絵がこんなに上手いなんて知らなかった」
「ただの趣味ですから、でもたまに外から依頼される事はあります」
「そりゃこんだけ上手けりゃ依頼の一つでも舞い込むよね」
「でも全部断ってるんです、あまり有名にはなりたくなくて」
「ここから外にあまり出ない理由かな」
帝が引きこもりなのにも理由はあるのだろう。
だからこそエミールがいるし、その理由なのだとロザリオは感じる。
帝には何か秘密がある、それはエミールも言わないだけで臭わせていたのだから。
「にしても帝は部屋の中で出来る趣味とかはきちんとやってるんだな」
「はい、あとネット小説も書いてますし、ドット打ちとかも出来ます」
「何気に多芸な人だね、帝ちん」
「外にはあまり出られないので、自然とこういう趣味になったんですよ」
「外に出られないからこその趣味か」
帝の趣味は外に出られないからこそのものなのだろう。
別に出られないという事ではないのだろうが、理由があるのだと。
その理由もあってなのか、今ではすっかり有名なハンドルネームになっている様子。
「本名は流石に出してないよな?」
「はい、まあハンドルネームでは有名人ですけど」
「そりゃこんな上手い絵を見せられちゃねぇ」
「本人が特定されないように気を配っているんですが」
「ネットはそういうのが危険だもんね」
そんな話をしていると料理が出来た様子。
アノットに運ぶのを手伝ってくれと呼ばれる。
アノットも料理を運ぶのを手伝いに行く。
「はい、出来たよー」
「今日はたくさん食べていいデスよ」
「花より団子だぜぇ、今日は食おうや」
「すみません、エミール」
「お気になさらず、ではお花見を始めマスか」
料理も運ばれてきたためお花見を始める事に。
理津子とエミールの料理はやはり美味しそうである。
そして肉類が多いのはお約束。
桜が咲き誇りすっかり春模様なのだから。




