カレーのこだわり
こっちの世界にもすっかり馴染んでいる理津子。
好きな料理も変わらずに出来ている事も大きいのだろう。
そんな今日はカレーを作っている様子。
だが当然そこにはこだわりもあるようで。
「はい、カレー出来たよ」
「相変わらずのドカ盛りなのか」
「でも美味しそうだね」
アノットは以前のご主人様に呼び出されたため少し外に出ている。
とりあえず今は三人でいただく事に。
「それじゃ食べようか」
「それにしてもいい匂いだな」
「スパイスの配合からやってるからね」
「リツコってスパイスの配合まで出来るの?」
「出来るよ、こっちも似たようなのはあるから」
まさかのスパイスの配合からやっているという理津子。
ちなみにこっちの世界にもカレールーは存在する。
とはいえそこは父親が元ホテルのシェフと言うだけの事はあるのか。
「カレーのスパイスの配合って楽しいんだよね、自分にピッタリのものを考えるのが」
「カレールーっていう便利なものがある今のご時世にそこまでやるのか」
「確かにカレールーは便利だけどね、でも料理が好きだとつい」
「でもこのカレー凄く美味しいよ、リツコの配合がきちんと出来てるよね」
「セルベーラって意外となんでも食べるよね」
スパイスの配合はスパイスの専門店でそれを購入してから始める。
こっちの世界にもそういった店はきちんと存在する。
なおスパイスの知識は竜界の竜族が詳しいらしく、そこに聞いたそうな。
「こっちの世界はいろんな種族がいるから、それぞれの得意なものとかあるし」
「確かスパイスの知識は竜族が豊富なんだったか」
「そうらしいね、竜族のスパイス専門店が何軒かあったから」
「竜族って辛いものが好きなんだよね、だからこういうものが好きなんだよ」
「種族によって得意なものが違うっていうのは多種族だからこそだよね」
理津子がこっちで感じているのは、種族によって得意不得意がはっきりしている事。
手先が器用な種族がいれば、その一方で魔法が得意な種族もいる。
その種族の出身の世界の知識がそのままこの人界に活かされている感じだ。
「それで、味はどうかな、少年」
「悪くない、確かに辛味はあるんだけど、辛すぎないし」
「あたしも辛いものはイケるんだけど、激辛までは流石にキツイからさ」
「激辛ってあれはただのマゾプレイだよね」
「辛さは痛覚っていうもんね、本当の激辛は痛みを感じるんだよ」
理津子自身は親の影響もあるのか、好き嫌い自体はそこまで多くない。
苦手な食べ物はあるものの、食べられないというものは少ない。
ロザリオが理津子の苦手な食べ物について聞いてきた。
「そういえばリツコって食べ物は何が苦手なんだ?」
「あたしの苦手な食べ物?うーん、しいて言うなら骨付きチキンかなぁ」
「骨付きチキンってまたずいぶんとピンポイントな食べ物だね」
「あれ凄く食べにくいじゃん、綺麗に食べるのも意外と難しいし」
「言いたい事は分からなくはない」
理津子は骨付きチキンが苦手なのだという。
確かに好き嫌いはほとんどない理津子だが、骨付きチキンは食卓に出さない。
本人曰く食べにくいし、綺麗に食べるのも難しいからなのだとか。
「骨付きチキンってあれ、ワイルドぶりたい人が食べるやつでしょ」
「お前、何気に偏見とか持ってるよな」
「まあスープを作る時には骨にはお世話になるんだけどさ」
「でも骨付きチキンが苦手っていうのもなんか意外だったかも」
「あれ手はベタベタになるし、綺麗に食べるのも面倒だし、ストレスなだけなんだもん」
理津子も結構厳しく言ってくる。
とはいえ骨付きチキンが苦手な理由は分からなくもない様子のロザリオ。
理津子曰く骨付きチキンはワイルドぶりたい人が食べるものらしい。
「なんにしてもあたしは骨付きチキンは苦手かなぁ、嫌いではないけど」
「つまり食べられるけど、処理とかが面倒だから好きじゃないって事か」
「理由についてはなんとなく分かるけどね」
カレーのスパイスのようなこだわりがある一方で、そういう考えもある理津子。
骨付きチキンが苦手な理由もきちんとしたものがある。
だから自分の世界でもチキンおじさんのお店にはあまり行かなかったという。
理津子の意外な好みと苦手が分かったロザリオなのだった。




