便利は使え
いつものように食材の買い出しに行く理津子。
そんな中店であるものに目が留まる。
そういえばという事もあってか、予定を変更してそれをまとめて買い漁る。
便利なものは試してみたくなるものだ。
「よいしょっと」
「りっちん、冷凍食品そんなに買い込んでどったの?」
「こっちの世界の冷凍食品も気になったから、予定変更してついね」
買い込んできたものはこっちの世界の冷凍食品。
味なども気になったとかで予定変更でまとめ買いである。
「おい、また何かやるつもりなのか」
「こっちの世界の冷凍食品が気になっただけだよ」
「まーたまにはええやん、りっちんは興味があったから買ってきたんよ」
「そう、これもこっちの世界の勉強なんだから」
「はいはい、まあたまにはいいと思うぞ」
とりあえず昼食に出来そうなものをレンジで解凍していく事にした。
今日の食事は昼も夕食も冷凍食品になりそうである。
「さて、お昼にしようか」
「にしても冷凍食品ね、りっちんの世界にももちろんあるんだよね?」
「あるよ、技術の進歩で下手なお店で食べるより美味しいぐらいだし」
「リツコの世界の冷凍食品ってそんなに美味しいのか」
「うちの親が言うには冷凍食品の進化は本当に素晴らしいって言ってた」
確かに理津子の世界の冷凍食品は美味しい。
それでも美味しくなったのは比較的近年だった。
技術が進歩したからこそ美味しくなったのだと理津子の親は言っていたという。
「冷凍食品って便利だよね、お弁当のおかずとかダルい時とかいろいろと」
「そうさねぇ、こういうのって主婦の味方だと思うわよ、特に子持ちの母親とか」
「凄く分かる、手作りのお弁当をやろうとするとコストと時間が凄いもん」
「便利なものはどんどん使っていくべきって事なのか?」
「子供はこういうものの方が美味しいって言ってくれるってお母さんの友人は言ってたよ」
確かに手作りは素晴らしいとは思う。
だが便利なものはどんどん使っていくべきと理津子の母親は言っていたという。
元シェフを自称する父親も楽が出来るならそれは素晴らしい事だと言っていたそうな。
「あたしのお父さんは元シェフを自称してるけど、冷凍食品は素晴らしいって言ってたし」
「元シェフの人ですらそんな事言うんかいな」
「お父さん曰く、プロの料理人はそうもいかないけど、便利なものはどんどん使えって」
「確かにプロが冷凍を使うのはどうかとは思うな」
「料理だって楽が出来るならそれはどんどん取り入れるべきって言ってた」
実際それによって料理というものは大きく変わったも事実だ。
理津子の父親は元シェフだからこそ冷凍食品の素晴らしさを誰よりも理解していた。
プロはそうもいかないが、時間を一気に短縮出来るというのはありがたいのだと。
「実際に冷凍食品には愛情がないとか言う人っているらしいし」
「愛情ねぇ、隠し味は愛情ですってか?」
「あたしからしたらお父さんの言う事には全面的に賛成なんだよね」
「料理好きな理津子でも冷凍食品には肯定的なんだな」
「そりゃあたしは料理を作るのは好きだよ、でも冷凍食品の素晴らしさも理解してる」
冷凍食品は一人暮らしや子持ちの母親などにはとてもありがたいもの。
手作り至上主義などロクでもない事も知っている。
便利なものはどんどん使っていくべき、理津子の父親の言っている事はきっと正しいのだと。
「確かに手作りも素晴らしいけど、忙しいお母さんには強い味方なんだよね」
「男の方の主夫でも冷凍食品でお弁当作るなんて普通だしねぇ」
「流石にアノットはあまり使わいのかな?」
「普段は使わないけど、冷凍のビスケットとか食ってるぞ」
「そうなんだ、ふーん」
アノットもそうだが、楽をしたいという気持ちは何もおかしくはない。
冷凍食品とはまさにその楽をするためにある。
理津子が父親に教わったのはそういう考え方なのだろう。
「さて、買ってきたからには食べないとね」
「あたしピラフね」
「僕はグラタンにしてくれ」
理津子の父親は料理人だからこそ料理に関する事には様々触れているのだろう。
プロの料理人である父親もその娘も便利なものは使うべきと言う。
手作りのよさを理解しつつも、便利なものはどんどん使え。
それは料理人だからこそ出来る教育なのだろう。




