こっちも新年
こっちの世界でも新年になった様子。
理津子も自分の世界の料理などを作ってこっちの正月を過ごしている模様。
流石に正月だからなのか、ドカ盛り飯は作っていないようだが。
それでもこちらの世界をしっかり満喫しているようではある。
「ふぅ、こういう時はゆっくり休めそうだね」
「セルベーラはもう寝ちゃったんだな」
「あの子、あれでも子供なんだよねぇ」
そんなお正月の夜はこっちのテレビもやはり特番が多いようである。
酒の肴も作ったのか、アノットはお酒も飲んでいるようで。
「でもこっちの世界もあたしの世界とそんな変わらないんだね」
「リツコの世界でもこんな感じなのか」
「うん、まあこっちは西洋風だからあたしの国とは違うけどね」
「そういやりっちんの国って東の国なんだっけ」
「そうそう、だから神社なんかでやってるのはあたしの国に近いかな」
この港町は西洋のそれに近いので、正月もそっちの感じだ。
とはいえ神社なんかもあるので東洋風の正月の景色も見られる。
なんというか東の文化と西の文化が混ざった光景が見られるのだ。
「それにしてもあたしがお酒を飲んでるとは」
「りっちんの作ったチャーシュー美味しいね、これは酒が進むわぁ~」
「それ昔から好きだったから、レシピ覚えたんだよ」
「でも本当に変に器用だよな」
「家の仕事とか手伝ってたのもあるからかもね」
理津子の料理スキルは家庭環境から身についたものだというのは明白である。
ついでにドカ盛り飯も家庭環境から身についたものだというのは明白である。
家が大衆食堂だった事や、父親が料理人という事は確実に影響を与えている。
「あたしからしたら美味しそうに食べてくれるのを見るのが何より嬉しいからね」
「りっちん、完全に料理人だよね、スペックはやたら高いし、親は偉大だわ」
「影響を受けてないって言われれば嘘になるよね」
「ただ毎度のようにドカ盛り飯出される方の身にもなって欲しいけどな」
「少年は成長期でしょ、たくさん食べなきゃ大きくなれないよ」
母親の貫禄まで出し始めた理津子。
理津子の母親が包容力のある女性だったのだろうとアノットは感じていた。
この若さで母親の貫禄が出始めるというのも大概である、その両親も大概ではあるが。
「うちはどっちの親も人が相当に出来てたなぁと思うよ、今でも」
「りっちんの両親って本当に凄くない?親の福引き特賞ものでしょ」
「ただ確実に影響は受けてるなとは感じる、都会に出てこういう格好した理由もそれだし」
「お前、そのままでも普通にいい女なのに何をそんなに感じてるんだ」
「うーん、田舎特有のコンプレックスなのかな」
双方の親のいいとこ取りみたいな性格に育ったのは言うまでもない。
正月料理も親から教わったものだと理津子は言う。
そういう環境はロザリオも少し羨ましいとは感じているようだ。
「あ、でも少年は親はもういないんだっけ」
「別に親の話をするのはいいさ、よその親っていうのも興味あるし」
「少年、変なところで大人だよね」
「りっちんさ、もう少年と結婚したら?こっちの世界は結婚の年齢とか制限ないし」
「それは…遠慮しとく」
流石に結婚はする気はない様子。
とはいえこっちの世界は結婚の年齢制限みたいなのはないという事らしい。
それも興味深い話だが、今は聞かないでおく。
「でもあたしの料理で美味しいって言ってくれると嬉しいかな」
「りっちんさ、あたしよりメイドしてるよね、本職のあたしが泣きそう」
「こういうのは好きだからかな、家事とかは昔から好きだったし」
「本当に背伸びする理由ないだろ」
「若気の至りだったのかな、今思うと」
なんにしても正月料理は気に入ってもらえたようではある。
こっちのお正月は和洋入り乱れたなかなかに混沌としたものではあった。
やはり異世界なのだなと感じた理津子である。
「さて、またいつもの生活だからシャンとしてよね」
「へーい、また働くのね」
「アノットは真面目に働け」
そんな話をしながらいつもの生活に戻っていく。
お餅が余ったようで、それを処理する事にもなりそうだが。
やはり休みがあるのは大切という事である。
こっちのお正月も悪くないと思う理津子なのだった。




