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付喪神の話

季節は秋へと変わり港町も涼しさがやってきた。

本格的に涼しくなるのはもう少し先だが、海風の存在はやはり大きい様子。

そんな中サインから家の掃除を手伝ってくれないかと頼まれる。

片付けが苦手という事ではないようなのだが。


「うわ、確かに結構荒れてる」


「すみません、定期的に掃除や片づけをしてても気づいたらこうなってて」


「研究者ってそういう人が多いのかな、まあとりあえず掃除するよ」


そんなわけで掃除に着手する事に。


一応本人確認を取った上で物を整理していく事にした。


「これは?処分の方に入れていい?」


「それは処分して構いません、とりあえず5年以上前のものは処分に入れてください」


「分かった、5年以上前のものは処分に入れるのね」


「ただよほど明確に壊れていないものは一応確認してもらっていいですか」


「はいよ、とりあえずこの辺は処分してよさそうなものかな」


そんな感じに最低でも5年以上前のものは処分する方向で片付けていく。

サイン曰く片付けや掃除していても気づくと荒れてしまうとかなんとか。


やはり研究者という職業における職業病のようなものなのか。


「それにしても使ってる道具は結構年季が入ってるな、意外と壊れないのかな」


「意外と壊れないんですよね、壊れた時のために予備のストックは買ってあるんですが」


「でもここまで年季の入った道具を見ると、付喪神の話を思い出すな」


「付喪神?何か神様の一種ですか?」


「あたしの世界の、日本の妖怪の一種で、愛着のある道具が変化した妖怪の事ね」


年季の入った道具を見ると付喪神の事を思い出すという理津子。

付喪神は長く使い愛着のある道具が変化した妖怪である。


妖怪とは言うものの悪い妖怪ではないのが付喪神だ。


「付喪神が生まれそうな年季の入りっぷり、道具を大切にしてるんだなぁ」


「付喪神というのは愛着のある道具が変化するものなんですか?」


「うん、長く使って愛着のあるものね、要するに同じ道具を長く使い続ける事かな」


「そういう話は興味深いですね、機界はそういうスピリチュアルな話とは縁がないので」


「実際日本の道具って本当に壊れないからなぁ、そりゃ付喪神も生まれるよねぇ」


日本製のものはとにかく壊れない事でも有名だったりする。

海外で中古の日本車が今でも現役で走っているなんて話は珍しくない。


また昔の家電なんかも気がついたら20年現役で動いているとかあるぐらいだ。


「日本製の道具ってとにかく壊れないっていう事で有名なんだよ、特に昔のは」


「そんなに壊れないものなんですか?どれだけ頑丈なんですかね」


「実際20年とか30年稼働してる家電とか見た事があるぐらいだし」


「20年や30年は流石に凄いですね、壊れなさすぎでは」


「あとワンコインショップで買ったコップが気がついたら10年使ってたとかあるし」


実際日本の製品は安いものでもやたら壊れなかったりする。

100均で買ったコップや財布が気がついたら20年使ってるとか普通にある。


それもあり日本は買い替えるまでに新製品がたくさん出る国だったりする。


「実際新しい家電が出ても、今使ってるのがまだ動くから買い替えないとか普通にあったな」


「付喪神なんて存在が生まれる理由が分かった気がします、壊れないんですから」


「そうなんだよねぇ、日本製って今のは昔より壊れやすくなったけど」


「昔に比べたらなんですね、それでも他国のものに比べたら頑丈だと」


「少なくともそれはあると思う、昔より壊れやすくなってもそれでもまだ頑丈だし」


昔の日本製のものが壊れないのは海外ですらそれが証明されている。

今の日本製品は昔より壊れやすくなってもなお頑丈なのだ。


それだけ壊れないという凄さがあるのは確かである。


「実際に空爆を受けても動いたゲーム機とかあったような国なんだし」


「空爆を受けても動いたゲーム機って、割ととんでもない話なのでは」


「表向きは空爆で焼けただれてたのに、画面は普通に動いてたゲーム機があったんだよね」


「どうやったらそんな頑丈なものが作れるんでしょうか」


「子供が乱暴に扱う事を想定した上で頑丈に作ってたみたいな話は聞いたかも」


そのゲーム機の話はターゲット層を意識した上で頑丈に作ったという説。

その結果空爆を受けても動くゲーム機が生まれたという事なのだろう。


壊れないというのは日本製品への信頼にもなっているようではある。


「サインの道具つて年季が入ってるけど、サインの年齢からしても何年使ってるの?」


「10年以上は確定ですかね、まあ意外と壊れないものなんですよ」


「道具って結構そういうものなんだよね、よほど雑に使わなければ壊れないんだよ」


「私の道具達も付喪神になったりするんでしょうか」


「それは分からないけど、付喪神の条件の一つが愛着があって長く使ってる事だからね」


付喪神の話は日本らしさの象徴とも言える話なのかもしれない。

それだけ物を大切にするというのが日本人なのだろう。


壊れない頑丈さもまたそうした精神性から来るのかもしれない。


「さて、まだかかりそうだけど、夕方までには終わらせるからね」


「はい、では手短に終わらせましょう」


「うん、とりあえず5年以上前のものは処分に入れればいいかな」


そんなサインの家の掃除を手伝い夕方になる前には終わらせた様子。

普段はサイン一人で掃除していたが今回は流石に相当荒れていたようだ。


掃除のスキルがそれなりに高いのも理津子らしさ。


研究者は定期的に掃除をしても気がつくと汚れていくらしい。

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