便利さと値段
夏の暑さも落ち着いてきた様子だが、まだ暑い日は続く。
そんな中買い物に行くのもすっかり慣れた様子の理津子。
買い物をしているとこっちの世界にはないものとその便利さを感じさせる。
異世界にはコンビニがないのである。
「それにしてもエミールに会うとは、生活圏内にスーパーがあるから仕方ないのか」
「そうデスね、それにスーパーマーケットはライフラインデスよ」
「でもエミールもすっかり帝のお世話が板についてるんだなぁ」
買い物帰りにエミールに遭遇し、少し話していく事にした様子。
異世界ではスーパーマーケットはライフラインの一つでもある。
「それにしてもやっぱりスーパーは便利だわ、改めて実感するよ」
「リツコサンの世界にもスーパーマーケットはあるんデスね」
「まあ便利さならコンビニなんだけど、コンビニは高いって知ってるからなぁ」
「コンビニ?それもお店なのデスか?」
「うん、24時間営業の割と何でも扱ってる小さなスーパーみたいなお店だね」
コンビニは24時間営業の小さなスーパーみたいなお店。
その表現は恐らく間違いではないのだろう。
なお理津子は日本で暮らしていた時は生活圏内にどちらもあったようだが。
「コンビニって便利なんだけど、値段は少し高いんだよね、便利さの代償なのかな」
「つまりそのコンビニというお店は、一日中開いている代わりに少し高いのデスね」
「うん、だからあたしはスーパーに行く事の方が多くなってたな、気づいたら」
「スーパーはコンビニより安いという事デスよね?」
「うん、スーパーはコンビニより一割ぐらい安かったし、特に食品目当てなら迷わずだったな」
理津子曰くスーパーは同じ商品でもコンビニより一割程度安いという。
割引セールとかをしていない商品でもコンビニより一割ぐらい安く売っている事が多いと。
それもありお菓子やカップ麺などを買いに行くときはスーパーに行く事が多かったとか。
「コンビニは確かに便利なんだけど、値段はどうしてもね」
「こっちの世界は24時間営業のお店はないデスからね」
「ファミレスなんかも昔は朝の5時まで営業してるとかあったんだよね」
「そういうのもなくなっていったのデスか?」
「なくなっていったね、あたしがこっちに来てから感染症が流行りだしたらしいし」
コンビニは今でも24時間営業の日本。
その一方でファミレスなどの深夜営業は今や珍しくなった。
遅くても深夜の24時ぐらいには閉まるのである。
「でもコンビニがなくても死にはしないけど、なんとなく恋しいんだよね」
「そういうのはあるものなのデスね」
「コンビニって値段は割高だけど、期間限定のアイスとかは頻繁に見るからねぇ」
「期間限定の食べ物デスか、それを目当てに行く事も多いのデスか?」
「うん、お菓子にアイスにカップ麺に飲み物、期間限定の食べ物はコンビニなんだよ」
理津子曰くコンビニは期間限定の食べ物がとにかく多いという。
だからこそ期間限定の食べ物に弱い身としては、よくコンビニに行っていたという。
それも含めてコンビニはスーパーに比べると誘惑が強いらしい。
「コンビニは誘惑が強いんだよねぇ、期間限定の食べ物や飲み物が多すぎるんだよ」
「日本という国はそんなに期間限定の食べ物があるのデスか?」
「うん、ほぼ毎月どころか毎週に近いレベルで期間限定味の食べ物が販売されるよ」
「そんなに期間限定の食べ物が出せるというのは凄いデスね」
「期間限定もあれば、特定の季節に毎年必ず出る限定味とかもあるしね」
期間限定の食べ物は完全な期間限定と、毎年同じ時期に出る季節限定がある。
期間限定は棚からなくなり次第終了が基本の売り方だ。
季節限定は決まった季節にその季節の期間のみ続けて販売している事が多い。
「季節限定だと月見の食べ物とか、果物の味のものなんかが多いかな」
「期間限定は完全な限定品という事デスか」
「うん、期間限定はお店の棚からなくなったら終わりって感じの売り方だね」
「なるほど、でもそんな頻繁に期間限定の食べ物が出るなんて凄いデスね」
「日本って定番の味が弱いイメージなんだよね、期間限定が多すぎるせいで」
日本は期間限定が頻繁に出るせいで定番の味が弱いイメージでもある。
その一方で定番の味というのはそれだけ多くの客に支持された味でもある。
期間限定は定着する事なく、それっきりで消えていく事も多いのだから。
「定番の味が弱い、期間限定が多すぎるのも考えものだよね」
「定番の味はそれだけ多くの人に支持されたからこそ定番になったのデスけどね」
「それはそうなんだよね、定番の味はそれだけ信用があるとも言えるし」
「しかしコンビニは期間限定味の食べ物が多いせいで、誘惑も多いという事デスか」
「あたし自身期間限定の誘惑に弱いんだよね、まあ値段なら圧倒的スーパーなんだけど」
理津子自身も期間限定の誘惑に弱いという。
それもありコンビニは頻繁に覗く事になっている。
それでもスーパーの安さは確実に理津子の考えを変えつつあるが。
「さて、そろそろ帰ろうか」
「ハイ、帝様も待たせるわけにもいかないデスしね」
「それじゃまたね」
そうしてそれぞれ帰路につく。
異世界にはコンビニがないが特に困る事もない。
その一方で日本のスーパーの安さも知っている。
スーパーマーケットは異世界ではライフラインらしい。




